深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

ブックレビュー『切り裂き魔の森』

タイトルに惹かれて――しかし、絶版につき古書購入、読了、 マーガレット・トレイシー『切り裂き魔の森』。 アンドリュー&ローレンス・クラヴァン兄弟の共作で女性のペンネーム。 切り裂き魔の森 (角川文庫) 作者:マーガレット トレイシー メディア: 文庫 大…

ブックレビュー『夢奇譚』

キューブリック繋がりでシュニッツラー『夢奇譚』読了。 あ、映画はまだ観ていません。 アイズ ワイド シャット [DVD] 発売日: 2010/04/21 メディア: DVD 19世紀ウィーンのブルジョワの倦怠。 夢奇譚 (文春文庫) 作者:アルトゥル・シュニッツラー メディア: …

ブックレビュー『シークレット・エージェント』

結構好きです光文社古典新訳文庫。 今回は去年初版を買って寝かせていたコンラッド『シークレット・エージェント』。 長かった……。 シークレット・エージェント (光文社古典新訳文庫) 作者:コンラッド,ジョゼフ 発売日: 2019/06/10 メディア: 文庫 ロンドン…

ブックレビュー『ウイスキー奇譚集』

下戸のくせに何故かタイトルに惹かれて古本を購入、 読了した『ウイスキー奇譚集』。 Amazonでの表記が「ウィスキー奇譚集」になっているが「ウイスキー」が正しい。 ウィスキー奇譚集 作者:ジャン レイ メディア: 単行本 ベルギーのフラマン語圏出身で、 フ…

ブックレビュー『オーランドー』

ヴァージニア・ウルフの長編『オーランドー』読了。 オーランドー (ちくま文庫) 作者:ヴァージニア ウルフ 発売日: 1998/10/01 メディア: 文庫 エリザベス一世の寵愛を受ける美少年オーランドーの恋愛遍歴。 ロシア貴族の娘との戯れと駆け落ち未遂、延いては…

「中井英夫スペシャル」

長らくAmazonにデータがなく、ブクログに登録できなかった 別冊幻想文学『中井英夫スペシャル』(1993年刊)のⅡだけが いつの間にか登録可になっていた(喜)! 中井英夫スペシャルⅡ 虚無へ捧ぐる (別冊 幻想文学) メディア: 雑誌 Ⅰのサブタイトルは「反世界…

ブックレビュー『鉄の門』

マーガレット・ミラー『鉄の門』新訳を読了。 鉄の門 (創元推理文庫) 作者:マーガレット・ミラー 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2020/02/13 メディア: 文庫 古いミステリの新訳が出て、解説を春日武彦先生が書かれたという情報が流れてきたので、興味…

ブックレビュー『至福千年』

購入から六年近く寝かせてしまった石川淳『至福千年』をようやく読了。 至福千年 (岩波文庫 緑 94-2) 作者:石川 淳 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1983/08/16 メディア: 文庫 幕末の江戸で世直しを目論む隠れキリシタン千年会の首魁・加茂内記は 部下を…

ブックレビュー『びっくり箱殺人事件』

横溝正史『びっくり箱殺人事件』(角川文庫)読了。 びっくり箱殺人事件 「金田一耕助」シリーズ (角川文庫) 作者:横溝 正史 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2012/10/16 メディア: Kindle版 長めの表題作と、文庫の帳尻合わせとして(?)併載された短編…

ブックレビュー『貸しボート十三号』

名探偵・金田一耕助の推理が冴える中編3編。BS-NHKのドラマ「貸しボート十三号」(池松壮亮主演)を観て購入したのは昔の角川文庫(古書)。 横溝正史『貸しボート十三号』書影 現行のkindle版の表紙はこんな感じ(いずれも杉本一文画伯による)。 貸しボー…

積ん読『びっくり箱殺人事件』

今日買った古書。 横溝正史『びっくり箱殺人事件』。 びっくり箱殺人事件 「金田一耕助」シリーズ (角川文庫) 作者:横溝 正史 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2012/10/16 メディア: Kindle版 表紙画は現行のkindle版と同じで、杉本一文画伯。 折り返しの…

ブックレビュー『完全な真空』

文庫化されて飛びついた、架空の本の書評群という体裁のメタフィクション短編集『完全な真空』(1971年)。 完全な真空 (河出文庫) 作者:スタニスワフ・レム 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2020/01/07 メディア: 文庫 順序が逆で、 後から刊行され…

積ん読『貸しボート十三号』

今日買った古書。 横溝正史『貸しボート十三号』。 『貸しボート十三号』書影 カバー画は杉本一文画伯。 折り返しの煽り文句はこんな感じ。 『貸しボート十三号』カバー見返し うわ、『犬神家の一族』映画公開前だったのか……(唖然)。 ところで、角川文庫の…

ブックレビュー『月の部屋で会いましょう』

アンソロジー『猫は宇宙で丸くなる』解説で、選に漏れた一編として、レイ・ヴクサヴィッチ「キャッチ」が挙げられていたので、興味を持って購入、読了。 猫SF傑作選 猫は宇宙で丸くなる (竹書房文庫) 作者:シオドア・スタージョン,フリッツ・ライバー,他 出…

ブックレビュー『ラテンアメリカ民話集』

三原幸久=編『ラテンアメリカ民話集』(岩波文庫)読了。 ラテンアメリカ民話集 (岩波文庫) 作者: 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/12/15 メディア: 文庫 ラテンアメリカの民話のうち、日本の昔話とも関係があると見なされるものをメインに集められ…

2019年の10冊

カクヨムの自主企画に乗っかって、 ブクログレビューをまとめる形で「2019年の10冊」について綴りました。 ■書評集「2019年の10冊」 対象は、先にTwitterにタイトルと書影だけ挙げた10冊。 2019年の10冊*書影 今年もなかなかいい出会いがあったと申せましょ…

ブックレビュー『暗黒怪奇短篇集』

澁澤龍彦が翻訳したフランスの小説集、全6編収録。タイトルは仰々しく重苦しいが、中身は意外に肩の力を抜いて楽しめる軽さ(巻頭作以外)。恐怖より黒い笑いの比重が高い。 澁澤龍彦訳 暗黒怪奇短篇集 (河出文庫) 作者: 出版社/メーカー: 河出書房新社 発…

ブックレビュー『三面鏡の恐怖』

https://fukagawa-natsumi.hatenablog.com/entry/2019/11/26/165839 ↓ 読了しました。 三面鏡の恐怖 (KAWADEノスタルジック 探偵・怪奇・幻想シリーズ) 作者:木々高太郎 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2018/03/03 メディア: 文庫 第二次世界大戦後…

ブックレビュー『ノディエ幻想短篇集』

復刊の告知に胸躍らせ、出るや否や購入したというのに、 それから一年以上も寝かせてしまったノディエ短編集を、ようやく読了。 ノディエ幻想短篇集 (岩波文庫) 作者: シャルルノディエ,篠田知和基 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1990/03/16 メディア: …

木々高太郎『三面鏡の恐怖』

あ、まだ読んでいません、今日買っただけです、今頃ですが。 木々高太郎『三面鏡の恐怖』。 三面鏡の恐怖 (KAWADEノスタルジック 探偵・怪奇・幻想シリーズ) 作者: 木々高太郎 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2018/03/03 メディア: 文庫 この商品を…

ブックレビュー『プラネタリウム』

フランスの小説家、劇作家で、ヌーヴォー・ロマンの代表格の一人だった ナタリー・サロート(1900-1999)の長編小説『プラネタリウム』を 二週間かかってようやく読了。 ナタリー・サロート『プラネタリウム』書影 ヌーヴォー・ロマン(アンチロマン)とは、…

ブックレビュー『香水――ある人殺しの物語』

ドイツ人がドイツ語で描き出した18世紀のフランスが舞台の奇想天外な物語。雅やかなタイトルだが、中身は相当にエグい(いい意味で)。 ある人殺しの物語 香水 (文春文庫) 作者: パトリックジュースキント,Patrick S¨uskind,池内紀 出版社/メーカー: 文藝春…

ブックレビュー『蠅』

早川書房の異色作家短篇集ラインナップを見ていて、まだ買えるだろうかと探ってみたら新品で手に入った、ジョルジュ・ランジュラン(1908-1972)『蠅』。名前からしてフランス人だと思っていたが、バイリンガルで、フランス語で小説を書いたイギリス人だった…

ブックレビュー『一角獣・多角獣』

SFアンソロジー『猫は宇宙で丸くなる』の解説で、選に漏れた一編としてスタージョン「ふわふわちゃん」が挙がっていたので、また手に取った。 一角獣・多角獣 (異色作家短篇集) 作者: シオドアスタージョン,Theodore Sturgeon,小笠原豊樹 出版社/メーカー: …

ブックレビュー『猫は宇宙で丸くなる』

猫が活躍するSF中短編小説アンソロジー。地上編◆5作+宇宙編★5作。 猫SF傑作選 猫は宇宙で丸くなる (竹書房文庫) 作者: シオドア・スタージョン,フリッツ・ライバー,他,中村融,旭ハジメ 出版社/メーカー: 竹書房 発売日: 2017/08/31 メディア: 文庫 この商…

ブックレビュー『時の娘』

読みかけのメモをTwitterに投稿したので、 猫SF傑作選 猫は宇宙で丸くなる (竹書房文庫) 作者: シオドア・スタージョン,フリッツ・ライバー,他,中村融,旭ハジメ 出版社/メーカー: 竹書房 発売日: 2017/08/31 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (6件) を見…

ブックレビュー『きみの血を』+α。

小泉喜美子『血の季節』の話をしたら、これにも触れねばならない。 シオドア・スタージョン『きみの血を』。 きみの血を (ハヤカワ文庫NV) 作者: シオドアスタージョン,Theodore Sturgeon,山本光伸 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2003/01 メディア: 文…

ブックレビュー『血の季節』

モーリス・ポンス『マドモワゼルB』の話題を出したら、 その根っこの話もしないわけにはいかない。 この作者とタイトルを知ったのは、 小泉喜美子『血の季節』のあとがきで、だった。 血の季節 (文春文庫) 作者: 小泉喜美子 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売…

ブックレビュー『マドモワゼルB』

オークションで価格が高騰したままのマンガの話をしたので、流れで、 やっぱり高くなっているが割と安価で切り抜けた本について、もう一題。 モーリス・ポンス『マドモワゼルB』。 モーリス・ポンス『マドモワゼルB』書影 マドモワゼルB (1976年) (Hayakaw…

ブックレビュー『パラドックス・メン』

おかしな言い方かもしれないが、ハリウッド製SF映画のノベライズ本のような印象。つまり、派手で、様々な要素が入り乱れていて、キャラクターが魅力的なのだ。帯の煽り文句から、どんなワケのわからない変態的な内容なのか……と、少々腰が引けていたのだが、 …