深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

ブックレビュー『オーランドー』

ヴァージニア・ウルフの長編『オーランドー』読了。

オーランドー (ちくま文庫)

オーランドー (ちくま文庫)

 

 

エリザベス一世の寵愛を受ける美少年オーランドーの恋愛遍歴。

ロシア貴族の娘との戯れと駆け落ち未遂、延いては失恋。

青年期に入ったオーランドーは交際を避け、詩作に没頭。

だが、作家と交流を持つも期待を裏切られ、

国王に大使として派遣されたしと願い出てコンスタンティノープルに赴任。

そして、謎の昏睡から覚めると「彼」は「彼女」になっていた!

 

オーランドーなる不思議な麗人について綴られた伝記という体裁の歴史小説

1928年出版。
ヴァージニア・ウルフは執筆時、

恋人であった女流詩人ヴィタことヴィクトリア・サックヴィル=ウェストを

モデルにしたと言われ、その息子ナイジェル・ニコルソンは小説『オーランドー』を

「文学界において最も長く魅力的なラブレター」と評したという。


主人公オーランドーが男性としても女性としても自己同一性を保って

人生を謳歌する様は柔軟で美しいけれども、
序盤、少年~青年オーランドーの冒険は楽しかったが、
後半は、いつの間にか300歳を超えた(!)

レディ・オーランドーの意識の流れの叙述がグネグネして読みづらい。
しかし、岩波書店『図書』2020年3月号掲載、

英文学者・赤木昭夫の「漱石全集の読み方」(中)によれば、
ヴァージニア・ウルフは「小説の書き方には絶対はあり得ない」と喝破した由。

うううむ(笑)。


ちなみに、オーランドーが駆け抜ける三世紀半という時間は、

サックヴィル家の歴史を追ったものであり、
性をも乗り超えて様変わりするオーランドーの姿は

同家の重要人物たちのコラージュである、とか。
また、性別の変化とその受容には、

ヴィタが交際相手、あるいは交際のフェーズに応じて、男性の装いをしたり、

女性として振る舞ったりした事実が反映されているらしい。


小説の書き方に「絶対」がないように、

人のあり方・愛し方にも決まりごとは無用――ということなのかもしれない。
何しろ当のヴァージニアもヴィクトリアも、濃厚過ぎる友情に結ばれながら、

それぞれ男性と結婚したのだし。


それにしても「評価は後からついてくる」と言わんばかりの、

いかにも伸び伸びして楽しそうで自由な書きっぷりが清々しい。

 

映画も以前から気にかけているが未見。

 ティルダ様~~~!!!

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