深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

ブックレビュー『時の娘』

読みかけのメモをTwitterに投稿したので、

 

 

その流れということで、

ロバート・F・ヤング繋がりで過去のブックレビューを転載。

『時の娘~ロマンティック時間SF傑作選』

 

時の娘 ロマンティック時間SF傑作選 (創元SF文庫)

時の娘 ロマンティック時間SF傑作選 (創元SF文庫)

 

 

タイムトラベルを扱った中短編集で、表題作は有名なミステリ小説とは無関係。
収録9編の初出は1930年代後半から
1970年(を少し過ぎるくらい)までだそうで、
いずれも古きよき強く優しく懐の深いアメリカのイメージが横溢している。
編者のセンスのなせる業とはいえ、
やはり、いい時代だったんだろうなぁ……と、しみじみ。

以下、特にハートを鷲掴みにされた作品について。

 

■ウィリアム・M・リー「チャリティのことづて」
 同じ町に住む現代(1965年)の少年と、265年前(1700年)の少女の心の交流。
 二人は厚い時間の壁に隔てられ、決して触れ合うことはできない。
 ムズムズするほど奥床しくてチャーミングなロマンティックSF!

 

ジャック・フィニイ「台詞指導」
 1960年代、ニューヨークで
 40年前の禁酒法時代の映画を撮影するチームが
 往時のスタイルの大道具・小道具を集めて準備していたら

 時間の捩じれが起きて、40年前のニューヨーカーたちと接触
 その中の一人は……という、
 フィニイらしい、優しさと残酷さが詰まった切ない佳品。
 原題"double take"の意味は
 意外な物事を見過ごし、または聞き流した後で気がついてハッと驚くこと。
 まさにソレ!

 

■ロバート・F・ヤング「時が新しかったころ」
 タイムマシンで白亜紀を調査するカーペンターは、
 誘拐犯の手から逃れた火星人の姉弟マーシーとスキップを助ける。
 長大な距離と時間を超えて成就した純愛に不覚にも落涙(!)。

 

■ロバート・M・グリーン・ジュニア「インキーに詫びる」
 音楽評論家ウォルトンアスター
 少年時代の愛犬インキーの死の真相やその他の真実を知るため、

 過去へ遡ったが……。
 覆面作家(正体不明)の技巧的な一品。