深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

ブックレビュー『ラヴクラフトの遺産』

ラヴクラフトに影響を受けた英米の作家によるオマージュ・アンソロジー、 ワインバーグ&グリーンバーグ=編『ラヴクラフトの遺産』(創元推理文庫)読了。 ラヴクラフトの遺産 (創元推理文庫) (創元推理文庫 F ラ 1-11) 作者:F.ポール ウィルスン,ブライア…

ブックレビュー『結婚式のメンバー』

『心は孤独な狩人(The Heart is a Lonely Hunter,1940)』に続いて カーソン・マッカラーズ『結婚式のメンバー(The Member of the Wedding,1946)』 を読了。 結婚式のメンバー (新潮文庫) 作者:カーソン・マッカラーズ 新潮社 Amazon 結婚式のメンバー (1…

ブックレビュー『心は孤独な狩人』

カーソン・マッカラーズ『心は孤独な狩人』(The Heart Is a Lonely Hunter,1940) 読了。 キリのいいところで休止して別の本を先に読む(3冊!)という暴挙に出たので 年を跨いでしまった……。 心は孤独な狩人(新潮文庫) 作者:カーソン・マッカラーズ 新…

ブックレビュー『シェイクスピアの記憶』

J.L.ボルヘス『シェイクスピアの記憶』(岩波文庫)読了。 収録作の三編は『バベルの図書館22 パラケルススの薔薇』(国書刊行会)で 既読だったが、本邦初訳の表題作のために購入・読了。 シェイクスピアの記憶 (岩波文庫 赤792-10) 作者:ホルヘ・ルイス・…

ブックレビュー『恐怖の正体――トラウマ・恐怖症からホラーまで』

昔は春日ファンを自称していたのですが、めっきりご無沙汰で。 『しつこさの精神病理』(2010年)辺りから、ちょっと説教臭くなってきたぞ ……と思うようになったせいか。 しつこさの精神病理 江戸の仇をアラスカで討つ人 (角川oneテーマ21) 作者:春日 武彦 K…

ブックレビュー『殺人者たちの「罪」と「罰」~イギリスにおける人殺しと裁判の歴史』

英国の事務弁護士ケイト・モーガン初の著書、草思社: 『殺人者たちの「罪」と「罰」~イギリスにおける人殺しと裁判の歴史』読了。 原題はシンプルに MURDER:THE BIOGRAPHY 。 かの地における古来から現代までの正しい〈裁き〉を巡る考察。 殺人者たちの「…

ブックレビュー『アメリカン・サイコ』の周辺。

ミカコの思い出。 かつて勤務した女だらけのオフィスに在籍していた大学生アルバイト、ミカコの話。 もっとも、私の方が後から入ったので、 年下の彼女にいろいろ教わる立場だったのだが。 ある日、ミカコが言った。 「『アメリカン・サイコ』読んだ???」…

ブックレビュー『ファイト・クラブ』

映画は未見。 ワタクシあるあるですけど、 これも有名過ぎるので観ていないにもかかわらず様々な媒体で情報を得て つい観た気になってしまっていた作品の一つ。 ファイト・クラブ [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray] ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社…

ブックレビュー『破船』

吉村昭『破船』読了。 購入したのは新潮文庫2022年5月(改版)35刷。 この時点で既にうっすらネタバレ臭が……と言いつつ載せてしまう(笑)。 ひと月ほど前、どこかで絶賛レビューを読み、興味を持ったので購入。 しかし……そのレビューを最後まで読まなけれ…

ブックレビュー『クトゥルー怪異録』

うろ覚えですが、多分 懐かしの大好きなドラマ『インスマスを覆う影』を久しぶりに視聴した後、 この本の存在を知って中古で購入したのではなかったかと。 クトゥルー怪異録 (学研M文庫) 作者:秀行, 菊地,史郎, 佐野,彬光, 高木,純一, 友成,千昭, 小中,正紀,…

ブックレビュー『ギリシャSF傑作選~ノヴァ・ヘラス』

順序が逆になりましたが、 『ギリシャ・ミステリ傑作選~無益な殺人未遂への想像上の反響』に続いて 『ギリシャSF傑作選~ノヴァ・ヘラス』読了。 fukagawa-natsumi.hatenablog.com ギリシャ・ミステリ傑作選 無益な殺人未遂への想像上の反響 (竹書房文庫 ぽ…

ブックレビュー『ギリシャ・ミステリ傑作選~無益な殺人未遂への想像上の反響』

三年前に竹書房のSFアンソロジー『シオンズ・フィクション』を読みまして。 シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選 (竹書房文庫) 竹書房 Amazon booklog.jp そのギリシャ版とも呼ぶべき『ノヴァ・ヘラス』が出るよ! とアナウンスされていたのでボー…

ブックレビュー『英国古典推理小説集』

英国最初期の推理小説群から、 その形式が洗練されていく過程を浮かび上がらせようというアンソロジー 岩波文庫『英国古典推理小説集』読了。 英国古典推理小説集 (岩波文庫) 岩波書店 Amazon 全収録作について基本的にネタバレなしでザックリと。 ■チャール…

ブックレビュー『マッカラーズ短篇集』

アメリカ、ジョージア州出身の作家 カーソン・マッカラーズ(Carson McCullers/本名 Lula Carson Smith 1917-1967)の 中短編小説集『マッカラーズ短篇集』(ちくま文庫)読了。 旧・白水uブックス『悲しき酒場の唄』収録作&新訳4編の全8編。 マッカラ…

ブックレビュー『サラゴサ手稿』

ポーランドの大貴族ヤン・ポトツキ(1761-1815)がフランス語で執筆した幻想長編。 著者がサラゴサ包囲戦(1808年)にフランス軍将校として参戦した折、 人家に残された手稿を手に入れ、 スペイン人大尉に仏訳口述してもらって書き取った――という設定で、 ス…

ブックレビュー『壊れやすいもの』

今頃ですが、深夜、ホラー映画について情報収集していて、 たまたま行き当たった本を購入し、一ヶ月以上もかかってようやく読了。 ニール・ゲイマンの掌短編(+詩)集『壊れやすいもの』。 壊れやすいもの 作者:ニール・ゲイマン 角川書店(角川グループパブ…

ブックレビュー『死体解剖有資格者』

英国の法人類学者・解剖学者、スー・ブラック博士の回顧録 『死体解剖有資格者』(草思社)読了。 原題は ALL THAT REMAINS だが、 日本語読者の好奇心をそそる若干いかがわしい邦題となっている(そこがnice)。 終始ウィットとユーモアに満ちた筆致の大著…

ブックレビュー『肉体の悪魔』『ドルジェル伯の舞踏会』

三年半ほど前、 高校生のときに古書店で古い文庫を買って積んだまま読まずに 引っ越し処分していたことを思い出し、反省しつつ光文社古典新訳文庫を購入。 早熟・夭折の天才と言われるレーモン・ラディゲの(短めの)長編小説2冊。 肉体の悪魔 (光文社古典…

ブックレビュー『チリの地震』

ドイツの小説家・劇作家ハインリヒ・フォン・クライスト(1777-1811)の 掌短編小説6編+エッセイ2編を収録した作品集『チリの地震』を読了。 チリの地震---クライスト短篇集 (KAWADEルネサンス/河出文庫) 作者:H・V・クライスト 河出書房新社 Amazon チ…

ブックレビュー『狩場の悲劇』

ロシアの大・劇作家、アントン・チェーホフ(1860-1904)が残した 唯一の長編ミステリ小説『狩場の悲劇』(1884年)―― Драма На Охоте(The Hunting Ground Tragedy)読了。 ja.wikipedia.org 狩場の悲劇 (中公文庫 チ 3-3) 作者:チェーホフ 中央公論新社 Am…

ブックレビュー『ガルシア=マルケス中短篇傑作選』

河出文庫『ガルシア=マルケス中短篇傑作選』読了。 ガルシア=マルケス中短篇傑作選 (河出文庫 マ 11-1) 作者:ガブリエル・ガルシア=マルケス 河出書房新社 Amazon ノーベル文学賞作家ガブリエル・ガルシア=マルケスの 1960年代~1980年代初頭にかけて発表…

ブックレビュー『サイコ』

(えー、毎度お馴染み、古い絶版本の話題でございます……) fukagawa-natsumi.hatenablog.com 映画を観てからの原作本購入、読了。 ロバート・ブロック『サイコ』(PSYCHO,1959)の巻。 サイコ (創元推理文庫) 作者:ロバート ブロック 東京創元社 Amazon サイ…

ブックレビュー『感染症としての文学と哲学』

文芸批評家・福嶋亮大=著『感染症としての文学と哲学』(光文社新書) 読了。 感染症としての文学と哲学 (光文社新書) 作者:福嶋 亮大 光文社 Amazon ja.wikipedia.org 先日読んだ19世紀吸血鬼小説アンソロジー『吸血鬼ラスヴァン』解説で 言及されていたの…

ブックレビュー『吸血鬼ラスヴァン』

ジョン・ポリドリ「吸血鬼」の新訳目当てで購入したアンソロジー 『吸血鬼ラスヴァン』(東京創元社)を読了。 吸血鬼ラスヴァン: 英米古典吸血鬼小説傑作集 作者:G・G・バイロン,J・W・ポリドリ 東京創元社 Amazon 吸血鬼小説の鼻祖とされるブラム・ストー…

ブックレビュー『チャイルド44』

トム・ロブ・スミス『チャイルド44』上下巻を今頃読了。 チャイルド44 上巻 (新潮文庫) 作者:トム・ロブ スミス 新潮社 Amazon チャイルド44 下巻 (新潮文庫) 作者:トム・ロブ スミス 新潮社 Amazon 横に並べると、こうなるのだった(ちょっとズレた)。 『…

ブックレビュー『チベット幻想奇譚』

twitterで情報が流れてきて興味を持ったので購入、読了。 チベット幻想奇譚 作者:星泉,三浦順子,海老原志穂 春陽堂書店 Amazon 現代チベットの作家の掌短編集で、幻想的な作風に的を絞ったもの。 原著はチベット語または中国語で書かれた作品、全13編。 諸外…

ブックレビュー『テュルリュパン~ある運命の話』

20世紀前半にウィーンで活躍したユダヤ系作家 レオ・ペルッツ(1882-1957)の(わりと短い)長編小説 『テュルリュパン~ある運命の話』読了。 テュルリュパン ――ある運命の話 (ちくま文庫) 作者:レオ・ペルッツ 筑摩書房 Amazon 舞台は17世紀のフランス、目…

ブックレビュー『阿片常用者の告白』

トマス・ド・クインシー『阿片常用者の告白』読了。 阿片常用者の告白 (岩波文庫) 作者:ド・クインシー 岩波書店 Amazon 先日の『夜の来訪者』同様、レスコフ『真珠の首飾り』にて 既刊案内を目にし、そういえば読んでいなかったなぁ……と思って購入。 2017年…

ブックレビュー『J.G.バラード短編全集』④「下り坂カーレースにみたてたジョン・フィッツジェラルド・ケネディ暗殺事件」

アンソロジー『疫病短編小説集』を読み、 疫病短編小説集 (915) (平凡社ライブラリー き 15-1) 作者:R.キプリング,K.A.ポーター 平凡社 Amazon 「集中ケアユニット」に衝撃を受けて、 長年何となく難解そうだからと手を出しかねていた J.G.バラードの短編全…

ブックレビュー『愛はさだめ、さだめは死』

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『愛はさだめ、さだめは死』読了。 愛はさだめ、さだめは死 (ハヤカワ文庫SF) 作者:ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 早川書房 Amazon 今頃古い本を買ったのは、とり・みき大先生の『SF大将』のせいだった。 booklog.j…