深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

ブックレビュー『ロリータ』

学生時代、大久保康雄・訳を読んだ際は普段読書ペースが異様に遅いというのに、 ほぼ一気読みくらいの勢いで、面白かった~! と声に出したほどだった。 で、昨年ふと思い立って、この新訳版を購入。 しばし寝かせ、手に取ったところ……むむむむむ。 ロリータ…

ブックレビュー『怪談の真髄~ラフカディオ・ハーンを読みなおす』

精神科医で甲殻類恐怖症の春日武彦先生が ラフカディオ・ハーンを再読して作品の概要と所感とその他、 思い起こされることを綴った書評・文学研究エッセイ集 『怪談の真髄~ラフカディオ・ハーンを読みなおす』(筑摩書房)を読了。 怪談の真髄 ――ラフカディ…

ブックレビュー『ディフェンス』

買ってから二年近く寝かせてしまったナボコフ『ディフェンス』を読了。 ディフェンス (河出文庫) 作者:ウラジーミル・ナボコフ 河出書房新社 Amazon ナボコフ・コレクション ルージン・ディフェンス 密偵 作者:ウラジーミル・ナボコフ 新潮社 Amazon 通称ル…

ブックレビュー『夢の通い路』

旧かな遣いで書かれた倉橋由美子『夢の通ひ路』の文庫版、 現代かな遣いに改められた『夢の通い路』を読了。 夢の通い路 (講談社文庫 く 5-2) 作者:倉橋 由美子 講談社 Amazon 夢の通ひ路 作者:倉橋 由美子 講談社 Amazon 才色兼備の人妻、出版社社長でもあ…

ブックレビュー『ポポイ』

どうやら一番最初に接したらしい倉橋由美子作品、 何度も読んでいる『ポポイ』を、また改めて。 旧かな遣い表記が奇天烈さに拍車をかける、前世紀末における近未来SF中編。 ポポイ 作者:倉橋 由美子 ベネッセコーポレーション Amazon ポポイ(新潮文庫) 作…

ブックレビュー『シュンポシオン』

倉橋由美子の長編『シュンポシオン』を何度目かの読了。 以前は特にメモも取らずにパラパラ読んでいたので 記憶違いが多かったことに気づいて愕然。 シュンポシオン (新潮文庫 く 4-12) 作者:倉橋 由美子 新潮社 Amazon シュンポシオン(新潮文庫) 作者:倉…

ブックレビュー『人魚紀聞』

戦後、吉行淳之介らと同人誌を作って執筆活動に勤しんだものの、 家業の繁忙や自身の専門分野の研究などのため寡作だった椿實(1925-2002)の 主な作品をまとめた『人魚紀聞 椿實幻想短篇選』(中公文庫)を読了。 奇想あり、戦後風俗の活写あり。 人魚紀聞 …

ブックレビュー『自滅帳』

精神科医による書評と随想のミクスチャー。 あとがき「おわりに」にもあるとおり、 既刊『無意味なものと不気味なもの』のエッセンスを引き継いでいるが、 今回のテーマは〈自滅〉。 自滅帳 作者:春日武彦 晶文社 Amazon 自滅帳 作者:春日武彦 晶文社 Amazon…

ブックレビュー『倉橋由美子の怪奇掌篇』

買って手放して買い直し、 何度も読んでいる愛読書の一つ『倉橋由美子の怪奇掌篇』を、またしても。 倉橋由美子の怪奇掌篇 (新潮文庫 く 4-11) 作者:倉橋 由美子 新潮社 Amazon 倉橋由美子の怪奇掌篇(新潮文庫) 作者:倉橋 由美子 新潮社 Amazon 同内容・別…

ブックレビュー『聖少女』

倉橋由美子『聖少女』を何度目かの通読。 何回読んだかは忘れたが、毎度新しい発見・気づきがあるのが嬉しい。 聖少女 (新潮文庫) 作者:由美子, 倉橋 新潮社 Amazon 新潮現代文学〈69〉倉橋由美子 (1979年)聖少女 夢の浮橋 パルタイ 婚約 白い髪の童女 Amazo…

ブックレビュー『反悲劇』

2009年に一度読んだ倉橋由美子『反悲劇』を再読。 ギリシャ悲劇をベースにした幻想不条理短編集。 反悲劇 (新潮文庫 草 113-8) 作者:倉橋 由美子 新潮社 Amazon 反悲劇 (講談社文芸文庫) 作者:倉橋由美子 講談社 Amazon 向日葵の家 酔郷にて 白い髪の童女 河…

ブックレビュー『悪い夏』

九年ほど前に古本を買って一度読んだ倉橋由美子短編集『悪い夏』を再読。 悪い夏 (角川文庫) 作者:倉橋 由美子 Amazon 愛の陰画 蠍たち パッション 死んだ眼 夏の終り 犬と少年 悪い夏 愛の陰画 学生運動に身を投じるぼくだったが、組織は内部崩壊の兆しを見…

ブックレビュー『チャールズ・デクスター・ウォード事件』

読みやすい南條竹則先生の新訳クトゥルー神話シリーズその4 ラヴクラフト『チャールズ・デクスター・ウォード事件』(新潮文庫)読了。 チャールズ・デクスター・ウォード事件 (新潮文庫 ラ 19-4) 作者:H・P・ラヴクラフト 新潮社 Amazon チャールズ・デ…

ブックレビュー『楽園への疾走』

J.G.バラード『楽園への疾走(Rushing to Paradise,1994)』読了。 タヒチの南東600マイルに浮かぶサン・エスプリ島に棲息するアホウドリ及び、 その他の動植物を保護することを訴え、 核実験を行おうとするフランス軍に敵対的行動を繰り広げる 英国人の中年…

ブックレビュー『復讐 三島由紀夫×ミステリ』

河出文庫『復讐 三島由紀夫×ミステリ』を購入、読了。 以前読んだ「博覧会」「朝の純愛」を再読したくなり、 両方収録されている本を探して、これに行き着いたので。 復讐 三島由紀夫×ミステリ (河出文庫) 作者:三島由紀夫 河出書房新社 Amazon 微妙にネタバ…

ブックレビュー『殉教』

三島由紀夫『殉教』を十年ぶりくらいに再読。 前回の記録が雑過ぎたので、今回は少し細かく綴ってみます。 よって、一部ネタバレ気味ですが、ご容赦を。 殉教 (新潮文庫) 作者:由紀夫, 三島 新潮社 Amazon 軽王子と衣通姫 第一部 第二部 殉教 獅子《エウリピ…

ブックレビュー『近代能楽集』

三島由紀夫『近代能楽集』読了。 本当はもう新潮社の本は買いたくないのですがね (などと言いつつ次もまた……ぐぬぬ) 近代能楽集 (新潮文庫) 作者:由紀夫, 三島 新潮社 Amazon 近代能楽集 (英文版) - Five modern Noh Plays 作者:三島由 紀夫 Tuttle Publis…

ブックレビュー『12人の蒐集家/ティーショップ』

twitter……じゃなかった、X(あーしょーもな)で相互フォローの方が レビューを書かれていたので関心を持って古書購入、読了。 セルビア(旧ユーゴスラヴィア生まれ)の作家ゾラン・ジヴコヴィッチの 短編集『12人の蒐集家/ティーショップ』。 前者のイメー…

ブックレビュー『J.G.バラード短編全集』⑤「近未来の神話」

J.G.バラード短編全集、全5巻の掉尾。 ④読了から随分、間が空いてしまったけれど……。 J・G・バラード短編全集5 近未来の神話 作者:J・G・バラード 東京創元社 Amazon ⑤は1977年から1996年の間に発表された24編。 巻末にウィリアム・ギブスンによるJ.G.B.頌…

ブックレビュー『我が見る魔もの』

平凡社ライブラリー、東雅夫=編、文豪怪異小品集シリーズ第13弾、 『我が見る魔もの』を読了。 稲垣足穂の著作から「幽霊」「おばけ」「怪異」に彩られた作品を集めた一冊。 我が見る魔もの: 稲垣足穂怪異小品集 (971;971) (平凡社ライブラリー 971) 作者:…

ブックレビュー『モロッコ幻想物語』

映画『シェルタリング・スカイ』の原作小説が有名なアメリカの作家 ポール・ボウルズが妻と共にモロッコのタンジールに移住してから、 親しくなった現地の――作家ではない――青年たちに、 思いつくまま物語を口述させ、 それを聞き書き(あるいは録音して後か…

ブックレビュー『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』

ゴールデンウィークを延長してくれるよう、 何故エヴァンズに頼まなかったのか……? なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか? (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 78) 作者:アガサ クリスティー 早川書房 Amazon なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか? (ハヤカワ文…

ブックレビュー『ユニヴァーサル野球協会』

今頃ですが、ロバート・クーヴァー『ユニヴァーサル野球協会』 The Universal Baseball Association, Inc.,J.Henry Waugh,Prop.(1968) を読了。 ユニヴァーサル野球協会 (白水Uブックス) 作者:ロバート クーヴァー 白水社 Amazon ユニヴァーサル野球協会 (…

ブックレビュー『母娘短編小説集』

19世紀末から20世紀末にかけてアメリカの女性の作家によって書かれた、 母と娘の関係に焦点を当てた 短編小説のアンソロジー『母娘(ははむすめ)短編小説集』(平凡社ライブラリー) を読了。 全9編中6編が南部出身作家の作品で、 いわゆるディープサウス…

ブックレビュー『ラヴクラフトの遺産』

ラヴクラフトに影響を受けた英米の作家によるオマージュ・アンソロジー、 ワインバーグ&グリーンバーグ=編『ラヴクラフトの遺産』(創元推理文庫)読了。 ラヴクラフトの遺産 (創元推理文庫) (創元推理文庫 F ラ 1-11) 作者:F.ポール ウィルスン,ブライア…

ブックレビュー『結婚式のメンバー』

『心は孤独な狩人(The Heart is a Lonely Hunter,1940)』に続いて カーソン・マッカラーズ『結婚式のメンバー(The Member of the Wedding,1946)』 を読了。 結婚式のメンバー (新潮文庫) 作者:カーソン・マッカラーズ 新潮社 Amazon 結婚式のメンバー (1…

ブックレビュー『心は孤独な狩人』

カーソン・マッカラーズ『心は孤独な狩人』(The Heart Is a Lonely Hunter,1940) 読了。 キリのいいところで休止して別の本を先に読む(3冊!)という暴挙に出たので 年を跨いでしまった……。 心は孤独な狩人(新潮文庫) 作者:カーソン・マッカラーズ 新…

ブックレビュー『シェイクスピアの記憶』

J.L.ボルヘス『シェイクスピアの記憶』(岩波文庫)読了。 収録作の三編は『バベルの図書館22 パラケルススの薔薇』(国書刊行会)で 既読だったが、本邦初訳の表題作のために購入・読了。 シェイクスピアの記憶 (岩波文庫 赤792-10) 作者:ホルヘ・ルイス・…

ブックレビュー『恐怖の正体――トラウマ・恐怖症からホラーまで』

昔は春日ファンを自称していたのですが、めっきりご無沙汰で。 『しつこさの精神病理』(2010年)辺りから、ちょっと説教臭くなってきたぞ ……と思うようになったせいか。 しつこさの精神病理 江戸の仇をアラスカで討つ人 (角川oneテーマ21) 作者:春日 武彦 K…

ブックレビュー『殺人者たちの「罪」と「罰」~イギリスにおける人殺しと裁判の歴史』

英国の事務弁護士ケイト・モーガン初の著書、草思社: 『殺人者たちの「罪」と「罰」~イギリスにおける人殺しと裁判の歴史』読了。 原題はシンプルに MURDER:THE BIOGRAPHY 。 かの地における古来から現代までの正しい〈裁き〉を巡る考察。 殺人者たちの「…