深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

ブックレビュー『三面鏡の恐怖』

https://fukagawa-natsumi.hatenablog.com/entry/2019/11/26/165839

 ↓

読了しました。

三面鏡の恐怖 (KAWADEノスタルジック 探偵・怪奇・幻想シリーズ)
 

 

第二次世界大戦後の東京。
電球会社社長の真山十吉は、妻の死後、
その母・妹と共に暮らしていたが、ある日、結婚前の恋人で、
昔の友人である弁護士・平原勝之助の妻となり、
亡くなった尾崎嘉代子の、妹である伊都子が訪ねてくる。
彼女は死んだ嘉代子に瓜二つだった。
両親が多額の遺産を残したので、有り余る金と時間を提供し、
十吉の事業に協力したいと言う伊都子。
彼女の思惑は……。

 

といった序盤。
で、各登場人物のモノローグや、各自視点での叙述が入り乱れるので、
小説としては非常に読みづらい。
現代だったら編集者にガツッと説教されそうな書きっぷり(笑)。
そして、全体の三分の二くらいで
ようやく殺人事件が発生し、探偵が登場する(ううむ)。

 

そんなワケで、楽しめたとは言い難いのだが、
女性キャラクターが活き活きとヘタレ男どもを押しのけて、
言いたい放題、やりたい放題……といった演出は、なかなか快い。
創元推理文庫全集収録作も、結構、
作者の女性に対する優しい眼差しというか、頑張る女を応援するぜ!
みたいな空気に満ちているのだけれども、戦後に執筆されたこの作品にも、

これからは女性が活躍する時代――との想いが込められていたのかもしれない。

 

ちなみに、刊行後間もなく映画化されていたそうなので、
機会があったら鑑賞したい。
グダグダ、グネグネした地の文を略した映像版の方が、

ずっと面白そうな気がする。