Roadstead からリリースされた黒沢清監督の短編映画『Chime』を購入、
鑑賞しました。
一つのコンテンツを対価を払って購入し、
所定のページにアクセスして何度も鑑賞できる仕組みなのですが、
リリース本数には上限があります。
そして、販売期間終了後、
購入者がリセールやレンタルを行うことも可能――と。
昨年末に初めて作品情報に接して以来、楽しみに待っておりました。
蓋を開けてみるとなかなかのお値段だったので軽くのけ反りましたが(笑)
まあ、いいか、と。
肝心の内容ですが……これは……45分という短さなので、
説明≒ネタバレだよなぁ、と開示に躊躇。
でも、私なりに感想というか印象を書き留めておきたいので、
ちょいと駄文をば。
まっさらな状態で(自腹を切って)楽しみたいんじゃあ! という方は、
お読みにならないでください。
一応、例によって白文字表示にしておきますので、ドラッグ反転でどうぞ。
---------- 映画『Chime』の感想(?) ----------
料理教室の講師・松岡のレッスン中、受講者の一人が奇妙な言動を取る。
頭の中でチャイムのような音がする、誰かがメッセージを送ってくる、云々。
松岡は彼を「おかしなヤツだな」といった目で見つつ、特に意見しない。
だが、この日を境に彼も調子を崩し始めた……かに見えるのだが、
どうやら松岡も元々少し標準からはみ出しているらしいことがわかってくる。
松岡は妻子と共に立派な家で暮らし、外では真っ当な社会人なのだが、
相手によっては時折「自分語り」が止まらなくなる。
料理教室の講師という仕事に誇りを持っていると言いつつ、
本心はそうではないのだろうと窺わせるところがあり、
フレンチレストランにシェフとして就職するための面談を受けているときに、
それが一番よく表れる。
採用担当者らは吉岡に「当店にどんなメリットをもたらしてくれるのか」を
彼なりの言葉で語ってほしくて再三促すのだけれども、
吉岡は自身の料理哲学・美学を語るのみ。
遂に呆れられて破談になるのだが、
吉岡は「有意義な会話ができた」と嘯いて更に相手を呆れさせるのだった。
こうした吉岡のズレ、延いては他者に与える微妙な違和感が
周囲に伝播していくかに見えた。
一見ごく普通そうな妻と子(中学生男子)も既に調子が狂っているし。
この「おかしな思考/事象の伝播」は先行作『CURE』と共通する――
との指摘があり、私もそう感じた。
そして、吉岡は自分の周りを違和感の粒子で包み込んで自縄自縛に陥るかのよう。
但し、決定的な破局が訪れるわけではない。
二時間程度の尺であれば、警察の追跡劇になったり、
最初にトリガーを引いた(自殺した)人物の背景が語られていったり
するのだろうけれど、本作では物語が投げ出されて宙ぶらりんで終わる。
そこが却って怖い。
また、料理教室の受講者の一人である若い女性・菱田が、調理について
「理屈で説明してもらわないと理解できない」と呟く場面があるのだが、
そんな人物が何の理由もなく、説明不可能な流れの中で、あたかも
料理人に食材として捌かれる前段階のように殺害されるシーンはシュールで秀逸。
気になったのは二点。
①料理教室のバックヤードに
何故か大人一人を包み込めるシュラフらしきものが置いてあったこと。
なんでやねん(笑)。
②菱田が帰宅しないと親から捜索願が出された後、
料理教室が入っているビルのエントランス前の道路に、轍のような、
何かを高スピードで牽引した風な痕跡が見出される。
しかし、自動車のタイヤ痕とは異なるし、
菱田の遺体は路面を引き摺るように運ばれたわけでもないので、
この演出の意図は何なのだろうかと気になって気持ちが悪い💧
---------- 映画『Chime』の感想(?)ここまで ----------