深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

映画鑑賞記『226』

録画しておいた映画『226』を2月26日に鑑賞。

BS松竹東急さん毎度あり。

 

 

THE FOUR DAYS OF SNOW AND BLOOD という英語のサブタイトルが

内容を見事に凝縮しているし、とてもカッコイイんだけど……うーん……。

 

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豪華キャストだし、映像は美しい、しかし、二時間の映画にしては話がショボい、

といったところ。

素晴らしい素材が集まったのに上手く調理できなかった、みたいな印象。

 

史実がベースなので、下手な嘘を盛り込めないのは理解できるけれども、

他にやりようはなかったのかい、とツッコミたくなるな……。

例えば、冒頭に大きな謎が提示されていて、

終盤で秘密が明かされる段取りになっていれば観客はおおッと、のけ反るワケで。

出オチなんですよね。

四日間に渡ってのクーデター未遂事件を時系列で淡々と描写しているだけだもんな。

 

また、冷酷そうな首謀者たちにも家庭があって、

それぞれが妻子を大切に想っている描写が繰り返されるのだが、

これは制作当時の売れっ子女優さんを嵌め込んで

画面を華やかにしたかっただけだったのかと勘繰りたくなり。

軍隊という究極のホモソーシャル空間の話なのだからして、

蚊帳の外のことには触れなくてもよかったのでは……などと感じた次第。

 

ただ、佐野史郎ファンなら観ておいて損はない、かも。

 

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ブックレビュー『結婚式のメンバー』

『心は孤独な狩人(The Heart is a Lonely Hunter,1940)』に続いて

カーソン・マッカラーズ『結婚式のメンバー(The Member of the Wedding,1946)』

を読了。

 

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アメリカ南部の田舎町で生まれ育った12歳の少女フランキーこと

フランセス・ジャスミン・アダムズは、母亡き後、父と暮らし、

家政婦ベレニス・セイディー・ブラウンの世話を受け、

近所に住む従弟ジョン・ヘンリー・ウェストと遊ぶのが常だったが、いつも退屈し、

環境に倦み、思春期を迎えた自身の肉体と精神を持て余していた。

そんな中、兄ジャーヴィスの結婚が決まった。

彼は新妻ジャニスとウィンターヒルという町で生活する由。

そこで、フランキーは結婚式を機に

兄夫婦と共にウィンターヒルへ脱出しようと目論んだのだが……。

 

自らにとって正当なあるべき場所エスケープしようと足掻き、

もがく少女の得手勝手なドタバタ。

 

それから先のことは、まるで悪夢の中の芝居のようだった。観客席にいた頭のおかしい女の子が急に舞台に飛び出してきて、台本にない役を自分で勝手にこしらえて演じたようなものだ。(p.289)

 

このフレーズが状況を簡潔に言い表しているな。

ああ、やっぱりね、といったところ。

なので、ここに辿り着くまでのあれこれに迂遠な印象を受けてしまった。

少女の惑乱を描くのが目的なのだから、ワチャワチャしていて当然なのだけど、

少しクドかったかな。

 

ともあれ、端で見ている側にとってはバカみたいなエピソードの連続なのだが、

当人は至って真剣なのだった。

そんな風に環境や変化の途上にある自分自身に違和感を覚えることなく

大人に成りおおせた者は幸いである。

(でも、そういう人って大概、薄味でつまんないヤツだよな……)

 

そうそう、本作も映画化されていたのですね。

日本では未公開なのかな?

 

 

そして、またまた繰り返しになりますが、

『黄金の眼に映るもの』の新訳を是非お願いしたいのだった。

 

 

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映画鑑賞記『ドッペルゲンガー』

ノーマークだった『ドッペルゲンガー』を鑑賞@BS松竹東急サンいつもアリガトウ💕

 

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とは言ってみたものの、一見して「何じゃコリャ??」ww

かなり変な映画です。

ホラー×コメディというか。

 

医療機器メーカーの研究員・早崎道夫は

身体が不自由な人のQOLを向上させるための機械を作っているのだが、

成果が上がらず苛立っている。

マシンは車椅子に似た形状で、

着座した人の脳波を読み取って義手となるアームを動かし、

ユーザーの生活をサポートするためのもの。

予算の問題、お披露目のこと――等々に追い詰められ、疲弊する彼の前に、

ある日、ドッペルゲンガーが現れ……。

 

 

ドッペルゲンガーとは、

見てしまったら死期が近いとされる幻覚の一種(自己像幻視)だと

思っていたのですが、この映画での扱いは違っていて、

抑圧された第二の人格の実体化……といった感じ。

 

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苦悩する道夫Aの許を訪れたのは、見た目はまったく同じ道夫B、

但しBは図々しく下世話かつ下品で、

時折、独創的なメロディを口笛で奏でては、

Aを手伝ってやると称して様々な悪事を働くのだった。

同じ頃、道夫Aの助手である女性・高野の友人、永井由佳は、

同居していた弟・隆志aに自殺されてしまったのだが、

その分身である隆志bが出現し……といった次第で、

似た悩みを抱える道夫Aと由佳は親密になっていき、

更に道夫Bが勝手にアシスタントとして雇った青年・君島も絡んで、

スラップスティックの様相に。

 

ここから少し核心(?)に触れるので例によって白文字で。

鑑賞済の方はドラッグ反転でお読みください。

 

* * * * *

 

道夫Bに嫌気が差した道夫Aはマシン製作工房(廃工場のような場所)で

永井由佳と君島の協力を得て道夫Bをボコボコに殴り、

床にあった上げ蓋を開いて道夫Bを放り捨てた。

その後、道夫A・由佳・君島は4WD車にマシンを積んで、

買ってくれるという企業のある新潟を目指した。

しかし、紆余曲折の末、君島は道夫Aを轢いてマシンを強奪。

どれくらい時間が経ったのか、置き去りにされた由佳が途方に暮れていると、

顔に白いサージカルテープを貼った道夫A【*】が別の車で追いつき、

由佳を助手席に乗せて君島を追うことに……と思いきや、

君島に轢かれた道夫Aは恐らくその場で死んでいて、

マシン製作工房で上げ蓋から遺棄された道夫Bが実は生きており、

一同を追ってきたというのが正解ではないかと思われるのです。

【*】は道夫Aではなく道夫Bなのですよね。

何故かというと、新たな車で由佳をピックアップした道夫が、

道夫Bお得意の独特の口笛を披露するから、なのです。

道夫Aと道夫Bはいつも同じファッションなので、第三者には区別がつきません。

【*】が顔のケガをテープで保護しているというのが

小説で言うところの叙述トリックに当たるのかな。

君島に大けがをさせられた道夫Aと見せかけて、

本当はもっとずっと前の時間帯に重傷を負った道夫B再登場だった、と。

由佳は気づいているのか、いないのか、明言されませんが、何となく

同行しているのが道夫Bだと理解していそうだな、という印象を受けました。

また、それが道夫Bだからこそ、

道夫Aが苦労して作ったマシンを崖から落とすといった暴挙に出ることが

可能だったのではないか、と。

 

* * * * *

 

うーん、何と言ったらいいんだろう、

抑圧されていた第二人格が本体とは独立した(本体に生き写しの)肉体を持って、

自らの欲望を現実化していく物語、なのかな。

よくわかんないっす(笑)💧

 

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映画鑑賞記『顔』

阪本順治監督の2000年の映画『顔』を鑑賞。

実際に起きた事件を下敷きにしつつ、ストーリーは完全オリジナル。

去年BS松竹東急でオンエアされたことに気づくのが遅かった……のだけど、

またやってくれたので、今度は忘れず録画しまして。

これもクライムサスペンスかなぁ、どうもこういうのが好きみたいなんだなぁ。

 

 

時は1995年。

主人公・吉村正子は現代のボキャブラリーで言うところの子供部屋おばさん。

家業を手伝っているのでニートではない(正子ver 1.0)。

正子はクリーニング店を切り盛りする母の突然の病死から、

元々折り合いの悪かった派手好きで美しい妹・由香里と言い争いになり、

ものの弾みで殺してしまった(編みかけの赤いマフラーもしくはショールで……)。

長年に渡って蓄積された鬱憤が爆発した結果と見えるが、直接のきっかけは

由香里が無断で正子の愛読書である『カトリーヌの涙』(架空のコミック)に

目を通してdisったことと思われる(多分ね💧)。

正子は近所の人々が母のために包んでくれた香典袋をバッグに詰め込んで

飛び出した――。

 

35歳という年齢の割に世慣れていない正子は理不尽にヒドイ目に遭わされつつ、

逆に親切にしてくれる人たちにも出会って、何となく居場所を得る(正子ver 2.0)。

当然、指名手配されているのだが、

これといった交友関係を持たなかった正子の写真といえば、

母が整理してくれていたアルバムの中に残るものだけ、そして、

彼女は抜け目なく(?)それを持ち出して(極めて無造作に)処分していたので、

警察はクリーニング店周辺の人たちに聞き込みをして作成した似顔絵を

公開することしか出来なかった。

それでも捜査の手が迫る気配を察知すると、正子は逃げ出して身の置き所を変え……。

 

人間関係の構築が不得手な正子は、最初のうち、たまたま接触した人に

普通に謝ったりお礼を言ったりすることもままならないほどだったのだが、

流れ流れて別府のナイトクラブに落ち着くに至って、

愛想よく接客が務まるようになり、アパートを借りて自活し、

商店街で買い物をしては

顔見知りと自然に挨拶を交わすまでになるのだった(正子ver 3.0)。

殺人を犯して逃亡した結果、一人前の大人になることが出来たという、

何とも皮肉な――ブラックジョークのような物語。

ベースになっているのが福田和子事件なので、タイトルのというのが

ひょっとして主人公が途中で整形手術を受けることを指しているのか……

と思いながら観ていたのですけども、違いました。

時間の経過・環境の変化と共に、

正子の表情が活き活きと晴れやかになっていくのですよね。

実に清々しい(いや、犯罪者やねんけど)。

 

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そして、最終盤。

辿り着いた離島の美しい祭の情景が目に沁みまする。

キツネ踊りの子供たちが愛らしく艶めかしい。

 

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オチには途中で見当がつきました(伏線があったので)。

子供の頃に生き別れた父(女を作って出ていったとか何とか……)から

女の子は●●するものではない、女の子は■■がよい、等々と浴びせられた

数多のクソバイスを真に受けて生きてきた正子が呪縛から解き放たれるのですよ。

頑張れ!

と、エールを送りたくなりました(犯罪者ねんけどな……)。

 

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ブックレビュー『心は孤独な狩人』

カーソン・マッカラーズ『心は孤独な狩人』(The Heart Is a Lonely Hunter,1940)

読了。

キリのいいところで休止して別の本を先に読む(3冊!)という暴挙に出たので

年を跨いでしまった……。

 

 

昨年『マッカラーズ短編集』を読んで感銘を受けた後、

この本の文庫版が発売されたので購入したのだった。

 

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1930年代末のアメリカ南部、いわゆるディープサウス中央部の町で繰り広げられる

群像劇。

タイトルはフィオナ・マクラウドの詩『孤独な狩人』の、

わたしの心は孤独な狩人、寂しい丘に狩りをする

という一節に由来するとか(Wikipedia情報)。

 

【主な登場人物】

 ミック・ケリー:下宿屋を営むケリー家の娘。

 バーソロミュー・ブラノン:ケリー家の近くの《ニューヨーク・カフェ》店主。

 ジョン・シンガー:ケリー家の下宿人の一人。聾啞の青年。

 ジェイク・ブラント:遊園地の機械保守を務めるアナーキスト

 ベネディクト・メイディー・コープランド:人々に尊敬される医師だが気難しい。

 

幼い弟たちの面倒を見ながら夜更けにカフェでタバコを買おうとする少女ミックと、

そんな彼女を窘めもせずタバコを売ってしまう店主バーソロミュー。

彼はミックに特別な視線を注いでいる。

だが、そんなことには気づかないミックは

新しい下宿人のシンガーさんに関心を寄せる。

ジョン・シンガーは聾啞者なのだが、手話と読唇術でコミュニケート出来、

必要に応じて筆談も行っていた。

自らは発話せず、黙って周囲の人々の言葉を読み取る、

物腰の柔らかく知的な雰囲気を漂わせるシンガーさんに皆が好意を抱いた。

しかし、彼の心を占めているのは、離れた町の病院に入院中の親友

スピロス・アントナプーロスだけだった……。

 

という具合に誰かが誰かを愛しているのだが、どうにも噛み合わない、

もどかしさに満ち溢れた物悲しいお話。

どんなに親しく、打ち解けたように見えていても、

実は人間は皆それぞれに孤独なのだ――というディスコミュニケーションというか

精神的な断絶の物語。

ピアノを弾きたい、作曲したい、ピアニストになりたい……と、

才能の片鱗を窺わせつつ大きな希望を抱くミックの前に立ちはだかる

家庭の経済問題という一大事。

家計を助けるために働かねばならない、すると、

一人きりで夢想に耽って創作に打ち込むことが出来ない……という事態が

何とも切ない。

そんな彼女の心の支えがシンガーさんだったのだけれども……。

ケリー家に打撃を与えた事件に銃が絡んでいるところが、いかにもアメリカらしい。

(子供の手が届くところに銃器を置いておくなよ大人はよꐦ)

少女が成長して否応なく大人の女性に近づいていく過程には

決まって痛みが伴う、そんなことを思い出させる、

ちょっぴり読むのが辛い、けれども読み切らずにいられない作品。

終盤、仕事帰りに《ニューヨーク・カフェ》で一服するミックは

今後の人生について腹を括ったかのようで、頑張れと声をかけたくなってしまった。

でも、エンディングって第二次世界大戦開戦直前の頃なのよね……。

 

ところで、読んでいて一番「ウッ」と思ったのは、

コープランド医師の娘でケリー家の料理番を務めるポーシャが

ミックに向かって放った言葉。

 

そして本を読めば読むほど、頭を煩わせるものが次々に増えていくんだ。本を読みすぎて、頭の中が悩みでこてこてに膨らんでいくんだ。[p.83]

 

うぁぁゴメンナサイ💧

 

そうそう、映画化されてもいたのですね(タイトルには聞き覚えアリ)。

 

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結構違う話になっちゃってるみたいけど、機会があったら観てみたい。

私の脳内イメージではミックって

このマッカラーズ本人みたいなヘアスタイルなんだけどな(カワイイ)。

 

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で、繰り返しになりますけれども、

『黄金の眼に映るもの』(これも映画化されていた……)の新訳、

出ませんかねぇ……。

 

 

最新ショートショート公開。

2024年の二発目、タイトルは「キンギョソウ」。

 

kakuyomu.jp

 

カクヨム短編賞創作フェス③(最終回)《秘密》参加用の書き下ろし。

 

kakuyomu.jp

 

ショートショートキンギョソウ」イメージ画 by Midjourney有料版

 

時間潰しにやって来た彼氏に幼稚園時代の思い出を語るヒロイン。

金魚とキンギョソウと謎のビニール袋の記憶……。

 

タイトルは金魚に似た花を咲かせるという植物の名前なのですが、

漢字表記「金魚草」でなくカタカナ書きであるところに含みがあるのデス。

おわかりいただきたい(笑)

 

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くるっぷ でも公開しております。

ご笑覧ください。

 

crepu.net

 

最新(超)ショートショート公開。

2024年一発目、タイトルは「垂雪」。

しずりゆき、と読みます。

木の枝などから滑り落ちてくる雪のこと。

 

kakuyomu.jp

kotobank.jp

 

カクヨム短編賞創作フェス①《スタート》参加用の書き下ろし……ですが、

この内容はちょっと無理があるかな💧(苦笑&反省)

 

kakuyomu.jp

 

なんというか、悪い癖で、

多くの参加者がポジティヴで前向きで明るい話を書くだろうと

予測したら逆張りしたくなっちゃうんですよね。

 

ともあれ、ごく短い作品ですので是非ご笑覧ください。

イメージ画像はMidjourney有料版で作成。

 

掌編「垂雪(しずりゆき)」雰囲気画。

 

Romancer『掌編 -Short Short Stories-』にて縦書き版も公開しています。

お手数ですが目次から探してページを開いてください。

 

romancer.voyager.co.jp