深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

ブックレビュー『パラドックス・メン』

おかしな言い方かもしれないが、ハリウッド製SF映画のノベライズ本のような印象。
つまり、派手で、様々な要素が入り乱れていて、キャラクターが魅力的なのだ。
帯の煽り文句から、どんなワケのわからない変態的な内容なのか……
と、少々腰が引けていたのだが、

読み始めたら割にテンポよくページを捲ることが出来た。
敵との闘いは通常、レイピアを用いた決闘(duel)というのがシブい。

 

時は2177年。
東西冷戦の緊張状態の中、アメリカ合衆国を盟主とする西側の連合が結成された際、
ラテン諸国が表看板となる皇族を立てようと提案し、

現在のアメリカ帝国元首は老女帝フアナ・マリア。

記憶を失った状態で助け出された男は

アラール=「翼のある」の意=という名を与えられ、
奴隷解放を目指す地下組織〈盗賊〉のメンバーとなった。
何度も死の危険に直面しては自身の特異能力で、

あるいは周囲の助けによって窮地を脱するアラールは、
拷問を受けても苦痛を力に変えて事態を打開。
彼は海に不時着した宇宙船から脱出した折、航宙日誌を携えていたが、
記されていたのは当の宇宙船《トインビー22》建造前の日付だった――。

 

といったストーリーで、

諸々の謎が解かれて「ああ、やっぱりね」というラストだが、
昔の小説ではあるけれども、古臭さは感じなかった。
ピルトダウン人【※】への言及があって、

捏造の発覚が1949~1953年だそうなので、
作者は紛いものと承知でわざと作品に織り込んだのだろうか。

 

【※】https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%80%E3%82%A6%E3%83%B3%E4%BA%BA

 

 

パラドックス・メン (竹書房文庫)

パラドックス・メン (竹書房文庫)