横溝正史『びっくり箱殺人事件』(角川文庫)読了。
長めの表題作と、文庫の帳尻合わせとして(?)併載された短編、全2編。
表題作は、丸の内の中規模劇場で軽演劇を披露する梟座に
突如発生した怪事件の話。
新作「パンドーラの匣」公演七日目、
暗い楽屋で演者や脚本家たちが次々と何者かに殴られたが、
一同は釈然としないままメイクを直して開幕、すると、序盤で、
主演女優が開くはずの箱に相手役の男優が触れたと見るや、
バネの付いたナイフが飛び出し、胸に刺さった……。
座長が元・活動弁士という設定だからか、どうなのか、
地の文が独特の語り口調で、
残忍な殺人事件を扱っているにもかかわらず、緊迫感がない(笑)。
解説によれば、執筆は1948年で雑誌連載だったそうだが、
シリアスの極み「本陣殺人事件」や「獄門島」の直後の作だというから
尚更驚いてしまう。
一番「騙された~」と思ったのは、
てっきり粗忽者だが好青年の野崎記者が探偵役を務めるのかと思いきや、
謎を解いたのが深山座長だったこと。
短編「蜃気楼島の情熱」は安定の金田一耕助モノ。
金田一がパトロンの一人である、瀬戸内で果樹園を営む久保銀造と共に
旅館でのんびりしていると、事件の報せが……。
タイトルは久保の友人・志賀泰三の、
理想の屋敷と、そこでの若く美しい妻との幸福な生活に対する
狂おしいまでの執念を指す。
殺人の手口を喝破するヒントを金田一に与えた、
送迎船を操る美少年(?)佐川春雄くんがかわゆい。
