深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

ブックレビュー『一角獣・多角獣』

SFアンソロジー『猫は宇宙で丸くなる』の解説で、
選に漏れた一編としてスタージョン「ふわふわちゃん」が
挙がっていたので、また手に取った。

 

一角獣・多角獣 (異色作家短篇集)

一角獣・多角獣 (異色作家短篇集)

 

 

七年ぶりの再読、但し、

二編は『海を失った男』収録の新訳で読んだので、三回目。

 

海を失った男 (河出文庫)

海を失った男 (河出文庫)

 

 

少し・不思議(SF)で不気味な短編集、全10編。

 

 一角獣の泉(The Silken-Swift)
 熊人形(The Professor's Teddy-Bear)
 ビアンカの手(Bianca's Hands)
 孤独の円盤(A Saucer of Loneliness)
 めぐりあい(It Wasn't Syzygy)
 ふわふわちゃん(Fluffy)
 反対側のセックス(The Sex Opposite)
 死ね,名演奏家,死ね(Die,Maestro,Die!)
 監房ともだち(Cellmate)
 考え方(A Way of Thinking)

 

以下、今回特に心に引っ掛かった作品について。

 

ビアンカの手
 若島正による新訳を『海を失った男』(河出文庫)で
 読んだので、これで三度目のチャレンジ。
 食料品店で働く青年ランの前に現れた客、少女ビアンカとその母。
 ビアンカの世にも美しい両手に魅せられたランは、
 母娘の家の下宿人となり、
 誰にも心を開かないビアンカの外見にも内面にもまったく無頓着なまま、
 ただ彼女の愛すべき両手だけを鑑賞しようとする。
 一種のフェティシズムが招いた悲劇。

 

■ふわふわちゃん
 ベネデット未亡人の愛猫、
 牡の白猫「ふわふわちゃん」は人間の言葉を理解し、話し、

 とんでもない行動に。
 主人公(語り手)に好意を示す者、逆に悪意を以て向かって来る者、

 いずれにしろ、彼の鏡像のような存在である……
 といった構図の短編が多くないだろうか、
 スタージョン作品には――と、再読して感じた。
 何となくわかるんだよなぁ、寂しがり屋の人間嫌い(笑)。

 

■反対側のセックス
 男女二人の他殺体が法医学者の許に担ぎ込まれたが、それは……。
 医師とスクープを追う女性記者の歯痒い距離感が何ともカワイイ。
 二人の前に現れた地球外生命体は恋のキューピッドだったのかも。
 タイトルの"opposite"は「反対側」というより「向こう側」のニュアンスで、
 地球上の「それ」とは異なる形式を指しているのかもしれない。

 

ところで、この本、絶版になって中古価格が高騰しているようですね。

私は初版を定価で買いましたけどね、フフフ……。