深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

読書

ブックレビュー『蒼い迷宮』

原題は Freezing Point 。デンマークの作家アーナス・ボーデルセンのディストピアSF小説、但し、英語版からの重訳。1970年代前半に透視された、近未来の医療と人間の生き方について。 蒼い迷宮 (角川文庫) 作者:アーナス ボーデルセン メディア: 文庫 Amazon…

ブックレビュー『すべては消えゆく』

アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ(1909-1991)最晩年の掌・短・中編をピックアップした新訳版『すべては消えゆく』を読了。 すべては消えゆく マンディアルグ最後の傑作集 (光文社古典新訳文庫 Aマ 5-1) 作者:マンディアルグ 発売日: 2020/04/14 メ…

ブックレビュー『去勢』

イギリスの作家・評論家、 キングズリー・エイミス(Kingsley Amis)の改変世界SF小説 『去勢』を読了。 著者名は日本語の表記のブレによっていくつかのカタカナ表記があるが、 本書ではキングズリイ・エイミス。 1976年発表、原題は Alteration(変更,改変…

ブックレビュー『吸血鬼に手を出すな』

1942年ロサンジェルス、私立探偵トビー・ピータースは気味の悪い悪戯に悩まされる吸血鬼俳優ベラ・ルゴシのボディガードになったが……。 吸血鬼に手を出すな (文春文庫) 作者:ステュアート カミンスキー メディア: 文庫 冴えない中年探偵の活躍を描くシリーズ…

岩波書店『図書』2020年4月号をパラパラ読む。

岩波書店『図書』2020年4月号をそろりそろり(笑)。 図書 2020年 04 月号 [雑誌] 発売日: 2020/03/27 メディア: 雑誌 俳人・長谷川櫂氏の連載『隣は何をする人ぞ』が今回も面白い。 第7回「誰も自分の死を知らない」。 > 法律や宗教などの抽象的な用語も…

ブックレビュー『切り裂き魔の森』

タイトルに惹かれて――しかし、絶版につき古書購入、読了、 マーガレット・トレイシー『切り裂き魔の森』。 アンドリュー&ローレンス・クラヴァン兄弟の共作で女性のペンネーム。 切り裂き魔の森 (角川文庫) 作者:マーガレット トレイシー メディア: 文庫 大…

ブックレビュー『夢奇譚』

キューブリック繋がりでシュニッツラー『夢奇譚』読了。 あ、映画はまだ観ていません。 アイズ ワイド シャット [DVD] 発売日: 2010/04/21 メディア: DVD 19世紀ウィーンのブルジョワの倦怠。 夢奇譚 (文春文庫) 作者:アルトゥル・シュニッツラー メディア: …

ブックレビュー『シークレット・エージェント』

結構好きです光文社古典新訳文庫。 今回は去年初版を買って寝かせていたコンラッド『シークレット・エージェント』。 長かった……。 シークレット・エージェント (光文社古典新訳文庫) 作者:コンラッド,ジョゼフ 発売日: 2019/06/10 メディア: 文庫 ロンドン…

岩波書店『図書』2020年3月号をパラパラ読む。

岩波書店『図書』2020年3月号をそろりそろり(笑)。 図書 2020年 03 月号 [雑誌] 発売日: 2020/02/25 メディア: 雑誌 俳人・長谷川櫂氏の連載『隣は何をする人ぞ』第6回「三十分の死」を読了。 夏目漱石が明治43(1910)年に胃潰瘍で入院し、 その後、伊…

ブックレビュー『ウイスキー奇譚集』

下戸のくせに何故かタイトルに惹かれて古本を購入、 読了した『ウイスキー奇譚集』。 Amazonでの表記が「ウィスキー奇譚集」になっているが「ウイスキー」が正しい。 ウィスキー奇譚集 作者:ジャン レイ メディア: 単行本 ベルギーのフラマン語圏出身で、 フ…

ブックレビュー『オーランドー』

ヴァージニア・ウルフの長編『オーランドー』読了。 オーランドー (ちくま文庫) 作者:ヴァージニア ウルフ 発売日: 1998/10/01 メディア: 文庫 エリザベス一世の寵愛を受ける美少年オーランドーの恋愛遍歴。 ロシア貴族の娘との戯れと駆け落ち未遂、延いては…

「中井英夫スペシャル」

長らくAmazonにデータがなく、ブクログに登録できなかった 別冊幻想文学『中井英夫スペシャル』(1993年刊)のⅡだけが いつの間にか登録可になっていた(喜)! 中井英夫スペシャルⅡ 虚無へ捧ぐる (別冊 幻想文学) メディア: 雑誌 Ⅰのサブタイトルは「反世界…

ブックレビュー『鉄の門』

マーガレット・ミラー『鉄の門』新訳を読了。 鉄の門 (創元推理文庫) 作者:マーガレット・ミラー 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2020/02/13 メディア: 文庫 古いミステリの新訳が出て、解説を春日武彦先生が書かれたという情報が流れてきたので、興味…

ブックレビュー『至福千年』

購入から六年近く寝かせてしまった石川淳『至福千年』をようやく読了。 至福千年 (岩波文庫 緑 94-2) 作者:石川 淳 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1983/08/16 メディア: 文庫 幕末の江戸で世直しを目論む隠れキリシタン千年会の首魁・加茂内記は 部下を…

ブックレビュー『びっくり箱殺人事件』

横溝正史『びっくり箱殺人事件』(角川文庫)読了。 びっくり箱殺人事件 「金田一耕助」シリーズ (角川文庫) 作者:横溝 正史 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2012/10/16 メディア: Kindle版 長めの表題作と、文庫の帳尻合わせとして(?)併載された短編…

ブックレビュー『貸しボート十三号』

名探偵・金田一耕助の推理が冴える中編3編。BS-NHKのドラマ「貸しボート十三号」(池松壮亮主演)を観て購入したのは昔の角川文庫(古書)。 横溝正史『貸しボート十三号』書影 現行のkindle版の表紙はこんな感じ(いずれも杉本一文画伯による)。 貸しボー…

積ん読『びっくり箱殺人事件』

今日買った古書。 横溝正史『びっくり箱殺人事件』。 びっくり箱殺人事件 「金田一耕助」シリーズ (角川文庫) 作者:横溝 正史 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2012/10/16 メディア: Kindle版 表紙画は現行のkindle版と同じで、杉本一文画伯。 折り返しの…

ブックレビュー『完全な真空』

文庫化されて飛びついた、架空の本の書評群という体裁のメタフィクション短編集『完全な真空』(1971年)。 完全な真空 (河出文庫) 作者:スタニスワフ・レム 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2020/01/07 メディア: 文庫 順序が逆で、 後から刊行され…

積ん読『貸しボート十三号』

今日買った古書。 横溝正史『貸しボート十三号』。 『貸しボート十三号』書影 カバー画は杉本一文画伯。 折り返しの煽り文句はこんな感じ。 『貸しボート十三号』カバー見返し うわ、『犬神家の一族』映画公開前だったのか……(唖然)。 ところで、角川文庫の…

ブックレビュー『月の部屋で会いましょう』

アンソロジー『猫は宇宙で丸くなる』解説で、選に漏れた一編として、レイ・ヴクサヴィッチ「キャッチ」が挙げられていたので、興味を持って購入、読了。 猫SF傑作選 猫は宇宙で丸くなる (竹書房文庫) 作者:シオドア・スタージョン,フリッツ・ライバー,他 出…

ブックレビュー『ラテンアメリカ民話集』

三原幸久=編『ラテンアメリカ民話集』(岩波文庫)読了。 ラテンアメリカ民話集 (岩波文庫) 作者: 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/12/15 メディア: 文庫 ラテンアメリカの民話のうち、日本の昔話とも関係があると見なされるものをメインに集められ…

2019年の10冊

カクヨムの自主企画に乗っかって、 ブクログレビューをまとめる形で「2019年の10冊」について綴りました。 ■書評集「2019年の10冊」 対象は、先にTwitterにタイトルと書影だけ挙げた10冊。 2019年の10冊*書影 今年もなかなかいい出会いがあったと申せましょ…

ブックレビュー『暗黒怪奇短篇集』

澁澤龍彦が翻訳したフランスの小説集、全6編収録。タイトルは仰々しく重苦しいが、中身は意外に肩の力を抜いて楽しめる軽さ(巻頭作以外)。恐怖より黒い笑いの比重が高い。 澁澤龍彦訳 暗黒怪奇短篇集 (河出文庫) 作者: 出版社/メーカー: 河出書房新社 発…

ブックレビュー『三面鏡の恐怖』

https://fukagawa-natsumi.hatenablog.com/entry/2019/11/26/165839 ↓ 読了しました。 三面鏡の恐怖 (KAWADEノスタルジック 探偵・怪奇・幻想シリーズ) 作者:木々高太郎 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2018/03/03 メディア: 文庫 第二次世界大戦後…

ブックレビュー『ノディエ幻想短篇集』

復刊の告知に胸躍らせ、出るや否や購入したというのに、 それから一年以上も寝かせてしまったノディエ短編集を、ようやく読了。 ノディエ幻想短篇集 (岩波文庫) 作者: シャルルノディエ,篠田知和基 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1990/03/16 メディア: …

木々高太郎『三面鏡の恐怖』

あ、まだ読んでいません、今日買っただけです、今頃ですが。 木々高太郎『三面鏡の恐怖』。 三面鏡の恐怖 (KAWADEノスタルジック 探偵・怪奇・幻想シリーズ) 作者: 木々高太郎 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2018/03/03 メディア: 文庫 この商品を…

ブックレビュー『プラネタリウム』

フランスの小説家、劇作家で、ヌーヴォー・ロマンの代表格の一人だった ナタリー・サロート(1900-1999)の長編小説『プラネタリウム』を 二週間かかってようやく読了。 ナタリー・サロート『プラネタリウム』書影 ヌーヴォー・ロマン(アンチロマン)とは、…

ブックレビュー『香水――ある人殺しの物語』

ドイツ人がドイツ語で描き出した18世紀のフランスが舞台の奇想天外な物語。雅やかなタイトルだが、中身は相当にエグい(いい意味で)。 ある人殺しの物語 香水 (文春文庫) 作者: パトリックジュースキント,Patrick S¨uskind,池内紀 出版社/メーカー: 文藝春…

ブックレビュー『一角獣・多角獣』

SFアンソロジー『猫は宇宙で丸くなる』の解説で、選に漏れた一編としてスタージョン「ふわふわちゃん」が挙がっていたので、また手に取った。 一角獣・多角獣 (異色作家短篇集) 作者: シオドアスタージョン,Theodore Sturgeon,小笠原豊樹 出版社/メーカー: …

ブックレビュー『猫は宇宙で丸くなる』

猫が活躍するSF中短編小説アンソロジー。地上編◆5作+宇宙編★5作。 猫SF傑作選 猫は宇宙で丸くなる (竹書房文庫) 作者: シオドア・スタージョン,フリッツ・ライバー,他,中村融,旭ハジメ 出版社/メーカー: 竹書房 発売日: 2017/08/31 メディア: 文庫 この商…