深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

ブックレビュー『蒼い迷宮』

原題は Freezing Point 。
デンマークの作家アーナス・ボーデルセンのディストピアSF小説
但し、英語版からの重訳。
1970年代前半に透視された、近未来の医療と人間の生き方について。

 

 

Amazonでは現時点で表紙画像が表示されないので書影を貼っておきます。

 

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『蒼い迷宮』書影

 

作家にアイディアを提供し、アドバイスする編集者ブルーノ32歳は、

腫瘍の切除手術を受けたが、担当のアカーマン医師から癌だと宣告され、

根治のためにコールドスリープで時間を稼ぐのはどうかと提案された。

ブルーノはパーティで知り合ったバレリーナのジェニーと関係を深めたが、

冷凍睡眠を受け入れることになるとは打ち明けられなかった。

目覚めたときは1995年、病気は治っていたが、

臓器の移植など、望まない処置まで施されていた――。

 

同作家の叙述トリックミステリ『殺人にいたる病』を先に読んでいたので、

主人公が小説のアイディアを捻り出しては弄んでいるせいもあって、

こちらもそういう展開になるのか、どこで騙されるだろうかと期待していたのだが、

特に何も起きなかったので却ってビックリした(笑)!

 

 

パーツの交換や薬剤の投与で、肉体を若い状態に保つのは可能でも、
脳だけは取り換えが利かず、
外見が若者のままでもどんどん耄碌していくという、さもありなん……な物語。
現実の2022年は作者が昔、想像したほど無味乾燥な世の中ではないだろうけれど、
別の様々な問題が山積しているのは間違いなさそうだ。