深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

ブックレビュー『チャールズ・デクスター・ウォード事件』

読みやすい南條竹則先生の新訳クトゥルー神話シリーズその4

ラヴクラフト『チャールズ・デクスター・ウォード事件』(新潮文庫)読了。

 

 

もう新潮社の本は買わないと決めていたのですがね💢チッ

 

 

壁の中の鼠

The Rats in the Walls (1924)

創元推理文庫ラヴクラフト全集1』で既読(大西尹明=訳「壁のなかの鼠」)。

デラポーア氏は1923年7月16日、

先祖が所有していたイングランドのイグザム修道院に移り住んだ。

第一次世界大戦で愛息を亡くした彼はそこで余生を送ろうと考えたのだった。

しばらくして、彼は悪夢に魘されたり、

壁の内側に走り回る鼠の気配を察したりした上、

愛猫 黒すけ が落ち着きをなくしたことに気づき、

異変の原因を探ろうと邸内を探検して、地下室の下に更なる地下室を発見した。

息子の友人ノリス大尉や考古学者らと共に探索に乗り出したデラポーア氏は……。

 

極限の恐怖はしばしば慈悲深いやり方で記憶を麻痺させるからだ。(p.29)

 

 

潜み棲む恐怖

The Lurking Fear (1923)

創元推理文庫ラヴクラフト全集3』で既読(大瀧啓裕=訳)。

語り手〈私〉は正体不明の怪物が出現したと聞いて、

テンペスト山の山頂の謎めいた廃墟マーテンス邸へ向かった。

オッドアイだったという住人のマーテンス一族はどこへ消えたのか。

その後、周辺でおぞましい大量殺戮事件が起き、

周囲の助力を得て真相を突き止めようとする〈私〉だったが……。

な、なんとルドガー・ハウアー主演で映画化されていた!

 

レッド・フックの怪

The Horror at Red Hook (1927)

創元推理文庫ラヴクラフト全集5』で

既読(大瀧啓裕=訳「レッド・フックの恐怖」)。

ニューヨークの貧民街レッド・フックに不法移民が押し寄せている一因が

ロバート・スイダムにあると睨んだ警察は、マローン刑事を捜査に向かわせた――。

ラヴクラフトの人種的偏見・差別意識が反映された内容に否定的な評価が多かった由。

そういえばコミカライズ版も読んでいたことを思い出した。

booklog.jp

 

彼方より

From Beyond (1934)

創元推理文庫ラヴクラフト全集4』で既読(大瀧啓裕=訳)。

語り手〈私〉は親友クロフォード・ティリンガストの変貌に驚く。

何事かに没頭する彼は碌に食事も取らず、窶れ果てていたのだ。

その研究とは……。

訳者解説によると執筆されたのは1920年代だったとか。

 

戸口にいたもの

The Thing on the Doorstep (1937)

創元推理文庫ラヴクラフト全集3』で

既読(大瀧啓裕=訳「戸口にあらわれたもの」)。

〈私〉=ダニエル・アプトンが少年時代からの親友だった

エドワード・ピックマン・ダービーを射殺したのは何故か。

訳者解説にもあるとおり、

「時間からの影」(南條訳版としては『狂気の山脈にて』収録)同様、

意識の転移=人格の乗っ取りがテーマの作品。

これも2023年に Suitable Flesh のタイトルで映画化されていた!

 

チャールズ・デクスター・ウォード事件

The Case of Charles Dexter Ward (1941)

創元推理文庫ラヴクラフト全集2』で

既読(宇野利泰=訳「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」)。

幼少期から一種の好古家で、

古い屋敷を古物で満たしていたチャールズ・デクスター・ウォード青年は、

奇行が度を超して父の手配で精神病院に入院させられたが、脱走した。

彼の内面がいつ頃から狂気に満たされたのかは

精神科医たちの間で見解が分かれたものの、

1919年8月に見つかった資料から、彼の破滅の原因が垣間見えてきた――。

チャールズの父の友人ウィレット医師が探偵役として謎を解く倒叙ミステリ風ホラー。

 

うーん、お腹いっぱいだよ疲れたよぅ……(そういう気分にさせられる作品群なのサ)