今頃ですが、ロバート・クーヴァー『ユニヴァーサル野球協会』
The Universal Baseball Association, Inc.,J.Henry Waugh,Prop.(1968)
を読了。
神はピザを食い、ビールを飲み、
たまに女とfxxkしてはサイコロを転がして世界を作った。
そこに生まれた人間は、いつしか神の手を離れ……
という寓話。
但し、主人公は会計事務所に勤める中年男性。
三つのサイコロを振って出た目の組み合わせから、自作の設定表を参照し、
試合を展開させるスタイルの野球ゲームに没頭するあまり、
職を失う羽目になるヘンリー・ウォーが、
次第に現実と虚構の境い目を見失っていく物語。
ダンケルマン・ゾーバー・アンド・ジッファーブラット公認税務会計事務所に勤める
ヘンリー・ウォーは、野球ゲームが生き甲斐。
自室に籠ってサイコロを振り、
様々な設定に従って架空のリーグUBA《ユニヴァーサル野球協会》の試合を
展開させるのだった。
ヘンリーにとって面白いのは記録や統計であり、
選手と球団、攻撃と守備、作戦と運などの間のバランスであって、
実際の競技にはほとんど興味がないのだった。
前夜の試合を記録し、
自作のユニヴァーサル野球協会公式記録ブックの内容を更新した
ヘンリーの頭の中では、各球団の選手たちが活き活きと動き回り、会話していた。
たしかに不思議なことだが、ひとりの人間に名前をつけると、それは人格を作ることにもなるのだ。むろん、成長もしよう。しかも、意外な方向に。(p.72~73)
だが、彼自身が設けたゲームのルールに従った結果、悲劇が……。
↓ ここから軽くネタバレ[例によって白文字表記となっております] ↓
訳者あとがきによれば、
作者は創世記に準えて――そのパロディとして本作を執筆した由。
主人公のフルネーム J.Henry Waugh は Jahweh のアナグラムになっている。
旧訳聖書では天地創造は七日間で神が天地を創り、
人間を作った後に休んだのだといい、第1章から第7章がこの七日間に相当し、
最後の第8章は恐らく「人間が神の手を離れて好き勝手に動き出した後」を
描いたものと思われる。
ここで言う人間とはゲームの中の野球選手・監督たち(架空のキャラクター)であり、
神が主人公ヘンリーという意味。
THE 奇想、って感じですかね。
好き嫌いが分かれそう。