深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

ブックレビュー『12人の蒐集家/ティーショップ』

twitter……じゃなかった、X(あーしょーもな💧)で相互フォローの方が

レビューを書かれていたので関心を持って古書購入、読了。

セルビア(旧ユーゴスラヴィア生まれ)の作家ゾラン・ジヴコヴィッチ

短編集『12人の蒐集家/ティーショップ』。

前者のイメージカラーが紫で後者が緑(お茶の色)であるのを踏まえてか、

とてもお洒落な装丁(by 柳川貴代さん)。

 

 

 

12人の蒐集家

日々

わたしが訪れたケーキ店の中は様々な濃淡の紫一色だった。

メニューには奇妙なネーミングのスイーツばかり。

そこに載っていないパティシエの特別なお勧めは〈詰めこみモンキー〉。

代価は現金でなく「客の過去の日々」で、

それがパティシエの特別なコレクションに加わるという――。

ロハスカは初めて自力で爪を切るようになって以来、それを保存し続けて来た。

二十代の初めになって自立してから

特製のシガレットケースを誂えて貸金庫を借りたのだが……。

サイン

シグニチャーのコレクターだという老人は、

元から有名な人のサインを集めているわけではなかった――。

写真

セルフポートレートをコレクションするパリヴェクが56歳の誕生日を迎えて――。

深夜に未知の人物から電話。

「あなたの夢をコレクションに加えたいから売ってくれ」と。

だが、矢継ぎ早に繰り出される質問に答えていくと――。

ことば

言葉を蒐集するプルシャルは詩集を買い集め、

格別美しいセンテンスをノートに書き写していった。

彼はよりよい言葉を求めて全16巻の辞書を購入し……。

小説

〈わたし〉が原稿を書き終えたとき、パソコンに不具合が生じ、

画面の色が紫がかってしまった。

そして、何者かが感想を述べ始めた。

※物語のウロボロスが形成されるメタフィクション

切り抜き

郵便局長だったポスピハルは定年退職後、新聞の切り抜き蒐集に熱中し、

紫色のクリアファイルに収めるようになった。

だが、「1255億年後には銀河が消滅する」という記事を読んで衝撃を受け――。

病を得、余命幾許もないと思われる医師の病室に深夜の訪問者。

紫色のロングコートを纏った珍客は「死の蒐集家」と名乗り……。

Eメール

国立公文書館を退職したパヴェクは旧式のコンピュータを譲り受けたものの、

マシントラブルを恐れて本体とモニタを紫色のフランネルで覆ってしまった。

だが、インターネットの利便性を喧伝する記事を目にして――。

希望

誘拐された〈ぼく〉に被せられていた紙袋が取り外されると、

そこは紫色のカーテンが引かれた書斎だった。

誘拐犯は六十代と思しい細身の男で、極めて丁重に話しかけてきた。

「きみがすべての希望を放棄すれば解放する、わたしは希望の蒐集家だ」と。

コレクションズ

各種の〈コレクション〉を蒐集する富豪ポコルニーは、空間の限界を悟り……。

 

ティーショップ

グレタは駅で乗り継ぎまでの時間を潰そうと、

スーツケースを手荷物預かり所に置いてティーショップに入った。

風変りなメニューに目を白黒させて選んだのは〈物語のお茶〉。

すると……。

 

衝撃を受けたのは巻頭「日々」くらいで、他はオチが想定の範囲内だった。

フワフワした事象の陳列ケースといった趣で、

珍奇かもしれないが、心に刺さる強度はなかった。

期待値が高過ぎたかな……。

たまに貰い物の紅茶が香りはよいが淹れてみると味が薄くてガッカリ

てなことがあるけれど、そんな気分を味わったのだった (´・ω・`)