深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

ブックレビュー『結婚式のメンバー』

『心は孤独な狩人(The Heart is a Lonely Hunter,1940)』に続いて

カーソン・マッカラーズ『結婚式のメンバー(The Member of the Wedding,1946)』

を読了。

 

fukagawa-natsumi.hatenablog.com

 

アメリカ南部の田舎町で生まれ育った12歳の少女フランキーこと

フランセス・ジャスミン・アダムズは、母亡き後、父と暮らし、

家政婦ベレニス・セイディー・ブラウンの世話を受け、

近所に住む従弟ジョン・ヘンリー・ウェストと遊ぶのが常だったが、いつも退屈し、

環境に倦み、思春期を迎えた自身の肉体と精神を持て余していた。

そんな中、兄ジャーヴィスの結婚が決まった。

彼は新妻ジャニスとウィンターヒルという町で生活する由。

そこで、フランキーは結婚式を機に

兄夫婦と共にウィンターヒルへ脱出しようと目論んだのだが……。

 

自らにとって正当なあるべき場所エスケープしようと足掻き、

もがく少女の得手勝手なドタバタ。

 

それから先のことは、まるで悪夢の中の芝居のようだった。観客席にいた頭のおかしい女の子が急に舞台に飛び出してきて、台本にない役を自分で勝手にこしらえて演じたようなものだ。(p.289)

 

このフレーズが状況を簡潔に言い表しているな。

ああ、やっぱりね、といったところ。

なので、ここに辿り着くまでのあれこれに迂遠な印象を受けてしまった。

少女の惑乱を描くのが目的なのだから、ワチャワチャしていて当然なのだけど、

少しクドかったかな。

 

ともあれ、端で見ている側にとってはバカみたいなエピソードの連続なのだが、

当人は至って真剣なのだった。

そんな風に環境や変化の途上にある自分自身に違和感を覚えることなく

大人に成りおおせた者は幸いである。

(でも、そういう人って大概、薄味でつまんないヤツだよな……)

 

そうそう、本作も映画化されていたのですね。

日本では未公開なのかな?

 

 

そして、またまた繰り返しになりますが、

『黄金の眼に映るもの』の新訳を是非お願いしたいのだった。

 

 

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