買って手放して買い直し、
何度も読んでいる愛読書の一つ『倉橋由美子の怪奇掌篇』を、またしても。
同内容・別タイトルで出直しも。
- ヴァンピールの会
- 革命
- 首の飛ぶ女
- 事故
- 獣の夢
- 幽霊屋敷
- アポロンの首
- 発狂
- オーグル国渡航記
- 鬼女の面
- 聖家族
- 生還
- 交換
- 瓶の中の恋人たち
- 月の都
- カニバリスト夫妻
- 夕顔
- 無鬼論
- カボチャ奇譚
- イフリートの復讐
ヴァンピールの会
湘南の海を見下ろす高台にある木原氏のレストランで
定期的に会合を開くグループがあった。
彼女らは珍しいワインを持ち込んでパーティを催しているのだったが……。
※オチまで込みで素晴らしい怪奇幻想小説! 絶品です!!
革命
幼少期から昆虫や甲殻類に生理的嫌悪感を催していた大蔵省勤務の小田氏は
自身の体内で交わされる何ものかの会話に耳を傾け、
蟹が革命を目指していることを察する。
首の飛ぶ女
私の父の旧友K氏は終戦によって大陸から引き揚げる際、
一人の少女を連れ帰ったが、
その子は夜になると頭だけが胴体から離れて飛び回る飛頭蛮だったという――。
事故
小学生の山口勉くんは入浴中に眠ってしまい、ハッと気づくと……。
獣の夢
夢の中で実在しない故郷を訪れた男は自宅へ帰ったが……。
幽霊屋敷
若隠居状態の木原氏【*】は娘の旧友・麻衣子と再会し、古い屋敷へ導かれた。
そこで様々な風雅で臈たけた人々と交歓したのだが……。
【*】「ヴァンピールの会」のレストランオーナーとは別人らしい。
アポロンの首
秋の夕方、音大生の私は構内の茂みに青白く光るものを見出した。
それはギリシャ神話風美少年と呼びたくなるような生首だった。
最初は気味悪く思った私だったが、翌日の早朝に持ち帰り、
白磁の水盤に据えて飼育することにした――。
※後の『ポポイ』(1987年)の発想源となったか。
発狂
長い眠りから覚めたゼウスやヘーラーたちは異変を察した――。
オーグル国渡航記
ジョナサン・ツウィストが60歳手前で出版した『カニバー旅行記』には検閲が入り、
内容の一部が削除されたとの話だが、その部分が発見されたという。
英国滞在中の大学教授K氏が友人に送った問題の原稿のコピーとは……。
※ジョナサン・スウィフト『ガリバー旅行記』のパロディ。
鬼女の面
子供の頃、自宅の蔵で発見した禍々しい鬼女の面を大切にしている私。
被ると取れなくなりそうな気がして顔に着けることは出来なかった。
長じて婚約に漕ぎ着けた私は……。
聖家族
二卵性双生児の姉弟が両親の異常さに気付いた。
要は夫婦の営みを垣間見てしまったわけだが、ところでこの姉弟は……。
生還
死んだ気がしないまま冥府へ赴き、
まだ寿命が残っているのに間違って来てしまったことを知った私は
葬儀中の自宅へ戻って……。
交換
美男を自負する私が仕事で出会った世にも醜い男性。
仮にその人を能面に準えて悪尉氏と呼ぶことにした私だったが、すぐに存在を失念。
二年後、相手から連絡があって……。
瓶の中の恋人たち
旅の終わりに心中するつもりだったカップルは浜辺で奇妙な物を見つけた――。
月の都
私は某大学で中国史を教える呉氏に導かれて月へ行った。
銀髪の呉氏は後漢の生まれで道士もしくは仙人である――。
カニバリスト夫妻
ぼくはテレビの深夜番組『タブーに挑戦! おもろい夫婦 ハチャメチャ夫婦』
制作担当者。
コメンテーターを務める人類学者の伝手(つて)で
自称カニバリストのK氏夫妻が出演することになった。
彼らは常軌を逸した美男美女で、美食について上品に語り、
番組は妙に高尚な雰囲気を帯びて、放映後の評判も上々だったが……。
夕顔
医師である私は旧友の松平君と再会し、料亭で酒を酌み交わしたのだが、
彼は生霊に悩まされていると告白した。
妻も愛人もいる身で第三の女性と一夏のアヴァンチュールを楽しもうとした松平君を
脅かしたのは……。
無鬼論
他聞を憚る、いかがわしい会合を定期的に開催する秘密クラブ。
八月の例会は林間にある会長の別荘で開かれ、十組の夫婦が集まった。
中には初参加のカップルも。
いつもと違う趣向で、暗闇の中で会話し、そのまま夜の営みへ。
ところが……。
※タイトルは『捜神記』中のエピソード。
カボチャ奇譚
カボチャと綽名された元宰相ボーブラ氏は辞任後、
六十代で突然死してしまったのだが……。
イフリートの復讐
柏木君はアンケート調査のため、豪邸と豪邸の間の長い私道を歩いて洋館を見つけ、
そこにいた若い女性の裸を偶然見てしまった上、
彼女=美耶に誘われるがまま関係を持った。
美耶は麻仁氏の愛人で、軟禁状態で囲われる身。
柏木君は麻仁氏に呼びつけられ――。
※『アラビアン・ナイト』をベースにした恐ろしい話。
うーん、面白い。
教養に毒を混ぜるという高等技術よ……。