深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

ブックレビュー『血の季節』

モーリス・ポンス『マドモワゼルB』の話題を出したら、

その根っこの話もしないわけにはいかない。

この作者とタイトルを知ったのは、

小泉喜美子『血の季節』のあとがきで、だった。

 

血の季節 (文春文庫)

血の季節 (文春文庫)

 

 

当時、小泉さんが「好きな吸血鬼小説」として挙げていた中の一冊が

マドモワゼルB』だったので、読んでみたいと思いつつ、

リアルタイムでは入手できず、

ずっと後になって購入したときの感慨ときたら(溜め息)。

 

で、肝心な『血の季節』については、

よろしければこちらをご参照ください。

 

 2016年にリニューアル版が出ましたが、そちらは未チェック。

 

血の季節 (宝島社文庫)

血の季節 (宝島社文庫)

 

 

元の文春文庫版 p.256 の いかつい誤植(笑)が訂正されたかどうか、

気になってはいるのですが。

ただ、これ、表紙のゴシックな雰囲気から

重厚なミステリだと思って手にしてガッカリしたという人の声を聞きました。

……うん、オリジナル版の装幀の方がよかった気がする。

だって、ミステリに偽装された幻想小説ですもん。

だから好きなんですけどね、私は。

ブックレビュー『マドモワゼルB』

オークションで価格が高騰したままのマンガの話をしたので、流れで、

やっぱり高くなっているが割と安価で切り抜けた本について、もう一題。

 

モーリス・ポンス『マドモワゼルB』。

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モーリス・ポンス『マドモワゼルB』書影
マドモワゼルB (1976年) (Hayakawa novels)

マドモワゼルB (1976年) (Hayakawa novels)

 

 

在庫ありますという古書店さんに注文して取り寄せたとき、

1500円+送料だったのですが、その後しばらくして

Amazonマケプレで平均5000円くらいにまで値がつり上がり、

ゲッ、あのとき買っておいてよかった……と、胸を撫で下ろしたものでした。

元々の発行部数が少なかったのなら致し方ないですが、

今も高いですねぇ。

 

長くなったので、内容が気になる方はこちらをご参照ください。

ブックレビュー:ささやななえ『獄門島』

ブクログのレビューにコメントをいただいたので、こちらにも写しを。

 

昔、親戚の家で読んだことを十年くらい前(?)にふと思い出し、

どうしても欲しくなってネットオークションで競り落として入手した

ささやななえ(現・ささやななえこ)版『獄門島』。

 

 

太平洋戦争中、徴兵され、探偵業を休止した金田一耕助
終戦後、戦地から復員。
病没した戦友の遺言を執行するため、書状を携え、

彼の出身地である孤島、獄門島へ。
友人の鬼頭千万太は「自分が生きて帰らねば三人の妹たちが殺される」
と繰り返していた……。

 

私が買ったときは数人が競り合って、2500円(+送料)くらいで

落札した記憶が。

今、ヤフオクに出品されているものは値下げ価格で5000円!

どしぇーーー!!

 

これからどこかで買いたいという人が

なるべく良心的な価格で購入できますように……(-人-)南無。

物語への希求に年齢は関係ない。

「若者の映画館離れ」は本当か? をザッと読みまして。

 

料金設定等、策を講じて映画館に若者を呼び込もうという考えには大いに賛成。

“金銭的に余裕がある=財布の紐が緩い” 年齢層が、

昔と今では違っているのだから、それに合わせた対応を取ってもいいのでは。

 

 

ただ、

 

 > 「物語」というものは、基本的には20代前半までの人のためにこそある

 

にも概ね頷ける……が、

 

 > 40代、50代と年を重ねるごとに、

 > 多くの人はフィクションへの興味が薄れていきます

 

という決めつけには承服しかねる。

そこは人それぞれで、年を取ってフィクションへの興味を持たなくなる人は

そもそも若い頃から「物語」へののめり込み具合が浅かったのでは?

と思う。

私は子供の頃からずっと、かなりの年齢(詳細は黙秘ww)になった今でも

「物語」への関心が強く、

可能な限り小説や映画の世界に分け入りたい気持ちが強い。

そのために、なるべく心身ともに健康でいたいし、

「いざ!」というとき、心おきなく浸れるように、

やりたいわけではないが必ずやらなければならない雑事を

日々粛々とこなしているわけですよ。

 

よって結論はタイトルのごとし。

重箱の隅を楊枝でほじくる ような駄文で申し訳ない。

ブックレビュー『pink』

何十回目――というのはさすがに大袈裟?――かの読了につき、

岡崎京子『pink』について、ブクログレビューから転記。

 

  *

 

 長年愛読してきたオリジナル版のページが経年劣化で剥落したので

 新装版を購入(2015年第3刷)。
 旧版のカバーイラストは口絵に採用されていた。
 あとがきは旧版のままで追加・変更なし。
 個人的にずっと気になっていた「セリフが絵と逆」と思われる
 フキダシの中身(p.98「めざましかけてぇ」←→「お洋服選んでぇー」)
 も修正されていなかったけど、まあいいか(笑)。


 今の若者の感覚からは結構ズレていると思うけど、
 稼ぎまくって使いまくれ、みたいな時代があったわけで、
 当時の東京の若いOLの欲望と消費の物語。
 しかし、ヒロインは、ある出来事がきっかけで
 お金で買える幸福に飽きてしまうのだけど、
 その暮らしから脱却するにも取りあえず先立つものが必要だ、
 って話になってくるところがシビア。
 ともかくも、あれこれいろいろ欲しかったら
 それらが充分買えるだけバキバキ働かねばならず、
 バキバキ働くのが嫌だったら
 少ししかお金がなくても成り立つ生活を模索しなければならないのです。

 

pink

pink

 

 

  *

 

これがヒトに勧められて一番最初に読んだ岡崎作品だったんだなぁ。

最初のうちは当然のようにユミちゃんに肩入れしていたわけだけど、

時間が経つにつれて

継母(そういえば名前は何ていうんだ?)=次女ケイコの母の気持ちも

わからなくないかもしれないなぁ……と感じるようになっていったのが

ちょっとした恐怖。

継母はユミちゃんの若さと無鉄砲さに嫉妬しているよね。

 

で、その感覚は別の何かに似ているぞ――という牽強付会

私の感想文の基本ですので悪しからず(笑)。

 

アレだよ、アレ!

楳図かずお御大の名作『洗礼』だよ!!

昔は「さくら可愛い~~」だったのが、

だんだん、母・松子の気持ちが理解できるモードに入っていったワケです。

トホホ。

 

 

もっとも、私は実際の生活では今時のお嬢さんたちに嫉妬していないし、

若さを羨んでもいませんが。

むしろ「ストレスが多くて大変そうだなぁ、労ってあげたいなぁ」くらいの

ぬる~い眼差しを向けておりますです。

ブックレビュー『パラドックス・メン』補遺。

ブックレビュー『パラドックス・メン』

書き忘れたこと。

 

言いがかりとか、単なる偶然とか、よくあるパターンなのでは?

とツッコまれそうだが、

読んでいて、この感じはアレだ、全体のノリがアレに似ているんだ!

アレって……えーっと(汗)……と考えて思い出した。

 

去年読んだレオ・ペルッツ『どこに転がっていくの、林檎ちゃん』

 

SFだけあって『パラドックス・メン』の方が当然スケールが大きく、

移動距離(時間も!)が長いのだけど、主人公は30歳前後、

誰が見ても美男――ではないかもしれないが、味のある風貌、

次から次へとトラブルが起き、困難に巻き込まれ、

それでも本人の胆力と周りの援助で関門を突破し、

すごろくの次のコマに進むような展開が。

一難去ってまた一難去ってまた一難――というストーリー、

ある役職の人物が「実は私は○○だったのだ」と正体を明かす流れ、

そして、拍子抜けするようなオチも(笑)。

 

あー、スッキリした。

 

どこに転がっていくの、林檎ちゃん (ちくま文庫)

どこに転がっていくの、林檎ちゃん (ちくま文庫)

 

 

パラドックス・メン (竹書房文庫)

パラドックス・メン (竹書房文庫)

 

 

ブックレビュー『パラドックス・メン』

おかしな言い方かもしれないが、ハリウッド製SF映画のノベライズ本のような印象。
つまり、派手で、様々な要素が入り乱れていて、キャラクターが魅力的なのだ。
帯の煽り文句から、どんなワケのわからない変態的な内容なのか……
と、少々腰が引けていたのだが、

読み始めたら割にテンポよくページを捲ることが出来た。
敵との闘いは通常、レイピアを用いた決闘(duel)というのがシブい。

 

時は2177年。
東西冷戦の緊張状態の中、アメリカ合衆国を盟主とする西側の連合が結成された際、
ラテン諸国が表看板となる皇族を立てようと提案し、

現在のアメリカ帝国元首は老女帝フアナ・マリア。

記憶を失った状態で助け出された男は

アラール=「翼のある」の意=という名を与えられ、
奴隷解放を目指す地下組織〈盗賊〉のメンバーとなった。
何度も死の危険に直面しては自身の特異能力で、

あるいは周囲の助けによって窮地を脱するアラールは、
拷問を受けても苦痛を力に変えて事態を打開。
彼は海に不時着した宇宙船から脱出した折、航宙日誌を携えていたが、
記されていたのは当の宇宙船《トインビー22》建造前の日付だった――。

 

といったストーリーで、

諸々の謎が解かれて「ああ、やっぱりね」というラストだが、
昔の小説ではあるけれども、古臭さは感じなかった。
ピルトダウン人【※】への言及があって、

捏造の発覚が1949~1953年だそうなので、
作者は紛いものと承知でわざと作品に織り込んだのだろうか。

 

【※】https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%80%E3%82%A6%E3%83%B3%E4%BA%BA

 

 

パラドックス・メン (竹書房文庫)

パラドックス・メン (竹書房文庫)