映画は未見。
ワタクシあるあるですけど、
これも有名過ぎるので観ていないにもかかわらず様々な媒体で情報を得て
つい観た気になってしまっていた作品の一つ。
で、今般、取りあえず原作を読んでみました。
今頃ではありますが。
自動車事故の調査員である〈ぼく〉は飛行機で各地を飛び回っていたが、
不眠症になり、安らぎを求めて様々な会合へ。
病を装って各種互助グループのミーティングに参加していると、
同じ穴のムジナである女性、マーラ・シンガーと方々で顔を突き合わす羽目になり、
鬱陶しいので互いにいくつかの場を譲り合うことで合意。
〈ぼく〉が夜勤の映写技師 兼 ホテル宴会場のウエイター、タイラー・ダーデンと
知り合った後、帰宅しようとすると、コンドミニアムでは事故が起き、
部屋と家具が吹っ飛ばされていた。
タイラーは〈ぼく〉に居候になってもいいと許可してくれた。
但し、「おれを力いっぱい殴ってくれ」と条件を付けて……。
勉強して職に就き、真面目に働いていても、
どうでもいい物を買い集めることくらいしか気休めが見つからない、あるいは、
消費社会の中で搾取される一方ではないかと感じる男たちが
真の生き甲斐を獲得しようとする物語――なのだが、
という一文に鼻白んでしまったんですよねー。
ある意味、カースト最上位であるキミたちが、それ以上何を求めようというのかね、
といったところ。
男子がワチャワチャするストーリーは基本、大好物のはずだけど、
これはちょっといただけない。
友情が煮詰まっちゃう話とは違いますからね、
寄り集まって誰の拳――というか、むしろ●●●(←自主規制による伏せ字)――が
最強かを競い合おうってんですから。
ただ、稼いでも買っても集めても一向に満たされないという心情には、
例えば(主人公は女性だが)いくつかの岡崎京子作品と通じ合うものがあって、
原著の出版が1997年だから、
前年に事故で重傷を負った岡崎さんはこの本を読んでいないかもしれないが、
もし読んでいたらどう感じただろうか、また、彼女が本作をコミカライズしたら、
どんな仕上がりになったろうか……などと勝手に夢想するのだった。
後は……何ですかねぇ、私は親から子への躾と称する暴力には大反対ですけれども、
幼少年期に親父にシバカレて――肉体のリアルな痛みとは何じゃいな?――
を前以て体感出来ていたなら、〈ぼく〉たちは
こんなことは仕出かさなかったのではないか、という気も。
父ちゃんに(割と理不尽に)シバカレる~母ちゃんにいい子いい子してもらう、
までが1セッションなのかもね。
男たちだけの集団が男たちの尊厳のためにアレしてコレして……は、
(フィクションだから)まあいいとして、
最後に支えてくれる女をちゃんと用意してあるところが……何かヤダ(笑)。
映画版の方が余計なことを考えず、エンタメとして楽しめそうな気がするわ。