深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

とり・みき三番勝負!

『J・G・バラード短編全集③「終着の浜辺」』収録

「溺れた巨人」に感銘を受け、

これを読んだ他の人たちはどんな感想を持ったのか知りたくて、

少し探ってみたところ……

とり・みき先生がパロディ漫画を描かれていたのを知り、

それが紹介されているブログで、もう出オチ状態だったのだけど、

いや、やはりちゃんと読まずばいられまい!

というワケで収録本を購入、読了。

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古典的名作SFのパロディ漫画集。

概要を把握している作品がほんの少ししかないにもかかわらず、

終始笑いっぱなし。

ソラリスを学校のプールに見立てた「ソラリスの陽のもとに」と

瞬間芸(失礼!)「溺れた巨人」が個人的双璧。

 

でもって、『SF大将』をいかに入手するか攻略中に

別のタイトルも気になって、更に2冊購入。

『犬家の一族』収録作は

 ①「冷たい女」
 ②「Memories Of You~あなたの想い出」
 ③「黄金三角を持つ男」
 ④「犬家の一族」
 ⑤「クレープを二度食えば」
 ⑥「あしたのために」

で、①~③はシリーズ物。

四十年以上前から食糧統制が敷かれた世界で、

それ以前に製造・保存された冷凍食品の売買・喫食を

取り締まる農水省冷食捜査官》の事件簿。

③、ゴールデントライアングルの正体がわかった瞬間、

噴き出しそうになった。

④は、おっちょこちょいな怪人2001面相 vs

猫田一金五郎(アシスタントは小咄少年)――って、

横溝ちゃうやんけ(笑)。

⑤は進研ゼミ『中3チャレンジ』(!)で連載されたという、

清々しいタイムトラベル恋愛青春もの。

⑥は自伝にフィクションを盛ったと思しい教訓マンガ。

 

最後の一冊は打って変わってシリアス系。

購入したのは、ちくま文庫版。

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ほとんど黒ベタの塗り潰しもスクリーントーン貼りもない、

偏執的カケアミ地獄の様相。

しかし、それがストーリーを薄めずに

マイルドに表現することに貢献していて見事。

だが、お馴染みのポップな画風とは

同じ作者が描いたとは思えないほど懸け離れていて面食らった。

収録作は
 ①山の音
 ②カットバック
 ③羽根の塔
 ④憑かれた男
 ⑤砂浜のメリークリスマス

で、①は諸星大二郎チックな民俗学ホラー。

帰省したまま連絡を絶った恋人に会うため、

九州の山間の僻地「裔村」を訪れた男が見たものは――というストーリー。

架空の地名は末裔の「裔」の字だがルビがなく、

何と読ませるのか不明。

恐らく読者が勝手に決めていいのだろう。

「すえ」がしっくり来る気もするが、

私は渡辺温のせいで脳内で「ちすじ」と変換していた(笑)。

dictionary.goo.ne.jp

②③⑤は叙情的SF短編。

④は妻に惚れ込み過ぎて常軌を逸した男と刑事の対決。

捜査にやって来た刑事を迎える容疑者宅の扉が

「いらっしゃい…坊や…」と言って開くコマ(p.204)、

その玄関のビジュアルが女性器を表現しているのが

エグイけれど象徴的で、上手い演出だなと感心。

山上龍彦(たつひこ)の解説付きでお得感満載。

堪能しました!

 

ja.wikipedia.org

 

プリニウス』も読もうかしらん……。