深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

ダークサイドミステリー『怖いウワサの新時代“ネット怪談”誕生秘話〜杉沢村伝説・くねくね・きさらぎ駅〜』

えっと、今回もタイトル長いっす(笑)。

BS-NHK『ダークサイドミステリー』最新回を録画視聴――で、メモなぞ。

 

www.nhk.jp

 

インターネット怪談とは?

――2000年代初めにネットで拡散された奇妙な物語の数々。

中でも特に息の長い3つのお題について。

それらは、いつ、どうやって生まれたか。

正体不明の存在をリアルに再構成した、とは……。

 

 

杉沢村伝説

1999年頃から噂が流れ始めた青森県の幻の村?

住民である青年が村人を惨殺して本人も自殺した後、村の名前が抹消された??

ディテールがまことしやかに語られるも、現場がどこだったのかは不明のまま。

踏み込めば怪異に襲われるらしいが、探そうとしても見つからない???

 

ja.wikipedia.org

 

噂の母体は1997年に紙媒体で世間話を捉え直したものだったという(@弘前大学)。

そこから伝聞に伝聞が重なり、様々な尾鰭が付いて広まったと考えられるが、

このローカルな物語がネット怪談の魁となったのは、

テレビ番組で取り上げられたためだったけれども、

結論が出なかったので伝説として語り継がれ、

2ちゃんねるで大ブレイクするに至った由。

 

ja.wikipedia.org

 

見知らぬ人たちと共通の話題で盛り上がるには格好のネタだった、というワケか。

現在では最早ピンと来ないレベルのワクワク感があった模様。

匿名掲示板なので話者が誰であるかわからないため、

噂話性〉が担保されたこともユーザーにとって魅力的だったらしい。

 

……と、極めて他人事っぽく書いているのは、

私が2ちゃんねらではなかったからです。

もちろん、2ちゃんねるもテレビで取り上げられた杉沢村についても

情報としては当時から知っていましたヨ。

 

ともあれ、その頃が考察文化の黎明期だったのですね。

インターネットが一般に盛んに利用されるようになった結果、

フォークロアの伝達は地縁・血縁を超えて情報縁へ移行したのだ、と。

言うなればネットロア(インターネットフォークロアの意)爆誕――。

 

くねくね

紙の元ネタがあった杉沢村と違って、くねくねは100%ネットで生まれ育った噂。

個人ホームページに掲載された怪談が、後日2ちゃんねるに転載(コピペ)されて

爆発的に広まったとか。

その正体不明のものに名前を付した創作が誕生し、

本来は白い服の人だったはずのオブジェクトが、人のような白い物体に変化した。

そこに舞台となった土地の秘密らしき何かが加味されて、恐怖感を増大させた――。

 

ja.wikipedia.org

 

元は知人から聞いた話という体裁の伝聞であり創作だったはずが、

いつしか語り手自身の体験談の形に置き換わっていった物語。

考察という名の牽強付会と言うべきか、もっともらしい名付けが行われ、

それの存在感が高まっていったのだった。

短いストーリーであるが故に、

そこにはインターネット怪談のエッセンスが凝縮されている。

田舎での出来事という実話性、また、

筋書きに聴き手の解釈と二次創作の余地があって改変可能であることも

人気を支えていたか。

とはいえ、解釈が理解や安心感に結び付いていかないところが怖さの秘訣で……。

ともあれ、匿名掲示板という文字文化だったからこその迫真性があって、

書き込まれた内容が真実でなかったとしても

民俗学っぽさを醸し出したところがミソだったのであり、

辺境には奇妙な風習もあるのだろう――といった

ユーザーの共通認識がベースとなっていた。

ネットロアは民俗学を装いたがる(しかし、もちろん本物の民俗学とは別物)。

 

きさらぎ駅

怪談とは過去の物語であり、語り手がオチまで話せるものなのだが、

これは世にも珍しい実況怪談だった――。

 

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発端は2004年1月8日の深夜だったが、

2ヶ月前からガラケーでのweb接続が定額化されたことが

このネット怪談の生成に大きく寄与したと考えられている。

しかしながら、当時は画像の貼付や動画は利用できず、

語り手(スレ主)と閲読者たちのやり取りは文字のみで行われた。

ネットの向こうに大勢の味方・支援者がいるにもかかわらず、

語り手が恐怖に追い込まれる展開で、

通信が途切れてしまうという秀逸なエンディングを迎える、

匿名掲示板が生み出したライヴ感溢れる奇跡のリアルタイム怪談。

 

 

もしかしたら話者が死んでしまうかもしれないという異様なユニークさがあり、

怖い話がコミュニケーションスタイルの変化と共に移り変わることを示した一編。

閲読者は助言は可能でも実際に手を貸すことはできない、

そのもどかしさが一層、読んでいる自分も

いつかそちら側へ引き込まれるかもしれないという恐怖感を煽った。

 

結び

識者曰く、動画配信が当たり前になったので、

今後はネット上では長文の怖い話は淘汰され、

物語性の高さ・完成度より断片的なインパクトが重視されるようになるのでは――。

ネット怪談もTikTok仕様になっていく、ということでしょうかね。