深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

ブックレビュー『壊れやすいもの』

今頃ですが、深夜、ホラー映画について情報収集していて、

たまたま行き当たった本を購入し、一ヶ月以上もかかってようやく読了。

ニール・ゲイマンの掌短編(+詩)集『壊れやすいもの』。

 

 

【収録作】*は詩。

 翠色[エメラルド]の習作(A Study in Emerald)

 妖精のリール(The Fairy Reel)*

 十月の集まり(October in the Chair)

 秘密の部屋(The Hidden Chamber)*

 顔なき奴隷の禁断の花嫁が、恐ろしい欲望の夜の秘密の館で

 (Forbidden Brides of the Faceless Slaves in the Secret House of the Night of

  Dread Desire)

 モリー・レーンの燧石(The Flints of Memory Lane)

 閉店時間(Closing Time)

 森人ウードゥになる(Going Wodwo)*

 苦いコーヒー(Bitter Grounds)

 他人(Other People)

 形見と宝(Keepsakes and Treasures)

 よい子にはごほうびを(Good Boys Deserve Favors)

 ミス・フィンチ失踪事件の真相

 (The Facts in the Case of the Departure of Miss Finch

 ストレンジ・リトル・ガールズ(Strange Little Girls)

 ハーレクインのヴァレンタイン(Harlequin Valentine)

 [ロック]と鍵[ロック](Locks)

 スーザンの問題(The Problem of Susan)

 指示(Instructions)*

 どんな気持ちかわかる?(How Do You Think It Feels?)

 おれの人生(My Life)

 ヴァンパイア・タロットの十五枚の絵入りカード

 (Fifteen Painted Cards Postcards from a Vampire Tarot)

 食う者、食わせる者(Feeders and Eaters)

 疾病考案者性咽喉炎(Diseasemaker's Croup)

 最後に(In the End)

 ゴリアテ(Goliath)

 オクラホマ州タルサとケンタッキー州ルイヴルのあいだのどこかで、

  グレイハウンド・バスに置き忘れられた靴箱の中の、日記の数ページ

 (Pages from a Journal Found in a Shoebox Left in a Greyhound Bus

  Somewhere between Tulsa, Oklahoma and Louisville Kentucky)

 パーティで女の子に話しかけるには(How to Talk to Girls at Parties)

 円盤がきた日(The day the Saucers Came)*

 サンバードSunbird

 アラディン創造(Inventing Aladdin)*

 谷間の王者――『アメリカン・ゴッズ』後日譚(The Monarch of the Glen)

 

 

うーん。

かなりの苦行でした。

途中で投げ出さなかった自分を褒めてあげたい。

ネットを見回すと概ね好意的な評価が並んでいるので鼻白む。

味は悪くないがぬるいお茶(スープでもよい)のような……。

これほどときめかない読書体験も珍しい。

面白くないわけではないのに「おっ」とか「ひゃっ」とか、

刮目したり背筋が冷たくなったり胸が痛くなったり全然しない、という。

相性の問題ですかねぇ。

時々出会ってしまうんですよね、つまらなくはないが好きではない、

としか言いようがない本(作品)に。

 

さて、disってばかりでもナンなんで(笑)

そんな中でも結構イイじゃん、と思った作品についてだけ触れておきます。

 

■ 翠色の習作

 アフガン戦争から帰還した語り手〈わたし〉は頭脳明晰な〈わが友〉を得て

 ベイカー街で同居し始めた。

 あるとき警察から殺人事件の捜査協力を依頼され、現場へ赴くと、

 そこには緑色の液体にまみれた惨殺体が……。

 ※シャーロック・ホームズ×クトゥルー神話

  「緋色の研究」と「ボヘミアの醜聞」が合わさった話だと思って読み進めると、

  最後に意表を突くオチが(笑)。

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■ 形見と宝

 若く多情な母に生み落とされ、孤児院で育った〈おれ〉は、

 世界で最も裕福な十人の一人だが、その事実が伏せられ、誰にも知られていない

 裏社会の超大物ミスター・アリスに見込まれて彼の下で働き始めた。

 彼は《シャヒナイ族の宝》を手に入れようとしていた……。

 ※〈宝〉を巡るやり取りと、その正体が明かされる条はボルヘス風で魅力的だが、

  シリーズの他の作品に繋がるとかで、オチのない一編(残念)。

 

パーティで女の子に話しかけるには

 語り手〈ぼく〉ことヘンリー(ニックネームは「エン」)の少年時代の記憶。

 三十年前、悪友ヴィクと共にパーティに参加すべく出かけ、

 今夜こそ女の子と楽しく過ごそうと思っていたのだが、

 どうやら訪れるべき家を間違えた様子。

 そこには留学生らしき同じ年頃の女子が集まって

 音楽に身を委ねつつ談笑していた、が……。

 ※異性への興味は尽きないけれど不器用な少年が、

  ようやくチャンスを掴んだかと思ったものの、そこにいたのは……

  というエピソードを断定的過ぎない語り方で綴った佳品。

  何かがおかしい、それが何かわかったようでいて確証はないことと、

  奥手だった少年時代の甘酸っぱい記憶のハーモニー。

  他の収録作に比べて断然、好感度大。

 

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