深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

ズーラシアへ行きました。

昨日のことですが、すっっごく久しぶりに

よこはま動物園ズーラシアへ行ってきました。

 

県外の方はご存じないかもしれませんが、

広い園内を歩いて回る楽しい施設です。

森林浴の気分を味わえます。

アルコール以外の飲み物なら持ち込みは禁止されていないので、

ペットボトルやマグボトルで飲料水を持参して、

チビチビ水分を取りながら、ゆっくり歩くのがお勧め。

忘れてしまったら、入園後すぐに自販機で何か買いましょう、

特に夏場は。

大人が2~3人連れでのたのた歩いて正門に戻るまで4時間くらい、

といったところでしょうかね。

園内バスでの遊覧も可(乗ったことはないけれど)。

 

インドゾウ。

マレーバク

スマトラトラは壁際で昼寝中だった。

インドライオンに睨まれた。

横向きで寝るユーラシアカワウソかわゆす💕

何故か棒立ちフンボルトペンギン団。

ホッキョクグマの雄姿。

東北の兎……ではなく、東北野兎(トウホクノウサギ)。

pz-garden.stardust31.com

 セスジキノボリカンガルー二態。

 誤解を招く言い方だけど、

 どう見てもおいしそう……(菓子パンっぽい色合いというか)。

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ツシマヤマネコ

ハンサム眉毛オカピ

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あられもない姿態のチンパン小僧。

おわかりいただけるだろうか……。

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独立独歩ミーアキャット。

キリンの高さを実感。

ピグミーゴートたんのお尻。

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メンテナンス等の都合でニホンザルを見られなかったのは残念でしたが、

大変楽しゅうございました。

また、いつか。

 

ブックレビュー『阿呆船』

今頃ですが(この切り出し方、多いな、我ながら💧)

買いそびれていた漫画をようやく入手できたのです。

気づいたときには中古価格が高騰していた絶版本を、

先日運よく然程でもない値段でゲットしました(1985年第3刷)。

1970年代末~1980年代初めに雑誌に掲載された

SF短編+SFではない作品、全5編収録の『阿呆船』。

軽く調べてみたところ、表題作は

復刊ドットコムから出た全集には入っていない(?)ようだったので。

 

 

阿呆船(あほうせん):1980年 別冊奇想天外1月号

 タイトルは、多種多様な愚か者どもが

 一隻の船に乗り込んで《阿呆国ナラゴニア》を目指すという筋立ての、

 15世紀ドイツの諷刺文学より。

 四百年前、地球社会に見切りをつけた〈ネハン主義者〉が

 仲間と共に宇宙船ミレニアム号に乗り、

 移住先を求めて旅立ったというのだが、

 小型艇でミレニアム号に辿り着いた歌手アルレキオと

 若き地球連合の総長マルコルフが目にしたものは――。

 発表時期が前後に入り組んでしまうが、

 カーゴ・カルトの話を盛り込んだ諸星大二郎『マッドメン』やら、

 ヒトのヒト型から外れていく進化のありようを描いた

 『未来歳時記・バイオの黙示録』などを連想してしまった。

 でもって、ミレニアム号の中が

 どことなく一にして全状態めいているところなぞは

 「生物都市」「貞操号の遭難」(いずれも『失楽園』収録)を

 連想させるよなぁ……。

 

馬祀祭:1982年 グレープフルーツ第3号

 タイトルはインドの馬祠(めし)

 =諸国を征服した王が権力を誇示するために行う祭で、

 この作品は叙事詩ラーマーヤナ』に描出される

 王子誕生祈願の祭をモチーフとしている。

 舞台は「阿呆船」の時間軸上にあると思われるが、

 物語に直接の繋がりはない。

 

大混沌期を生きのび、かつ、地球にとどまることを選択した人間は

百十億を数えた。

彼らは自然発生的な一万二千の自治都市に別れ、

北京に地球連合政府を置いて穏やかで良識的な、至福千年期を宣言した。

 

 と、冒頭(扉絵の前ページ=p.40)にあり。

 違法薬物の売買など、

 危ない橋を渡って金を稼ぐ青年ローアン・ユイの目的は、

 役人を買収して

 〈九十年祭〉の万華市市長主催の前夜祭に潜り込むことだった。

 市長は若く聡明な美女ルワナ・エラス。

 彼女に傅く側近たちは九十年祭の折に地球連合からの独立を宣言するよう

 進言していたが、

 神権を授かる儀式〈馬祀祭(アシュバメーダ)〉を執り行うため、

 生贄として馬が必要だという話になる。

 だが、市長の同族で最側近である学者セト・ホウリ師は

 「と認められる代替物が手に入ればよい」と告げる。

 ローアンの熱情は瞬時にルワナに伝わり、

 彼女もまた彼に一目惚れした格好になったが、セトによって引き離され……。

 ローアンが有名人であるルワナをアイドルを奉るように慕う気持ちはわかる。

 しかし、アイドル側が

 一人のファンから「ずっと好きだった」と面前で告白されたからとて、

 その気持ちを受け容れることがあり得るだろうか……というのが

 最大の疑問点。

 そこら辺を超越した運命の恋だというなら、

 何かしらエクスキューズが必要であろうと思いつつ、ページを繰って……

 

天界の城:1983年 SFマガジン10・11・12月号

 「馬祀祭」後日譚。

 非合法な手段でクローン再生されたルワナ・エラスは

 〈九十年祭〉で倒れる前のユニセックスな美しさを失い、

 生々しい大人の女として蘇った。

 国王となったローアン・ユイは彼女の帰還を喜んだが、

 暗君としてデタラメ三昧の日々を送っていた彼の容貌は、

 めっきり荒んでしまっていた。

 二人は晴れて夫婦になれるはずだったのだが、セックスの相性が芳しくなく、

 傷ついたルワナを慰めようとしたセトは

 長年押さえつけてきた感情の箍が外れてしまい、

 以後、ローアンの目を盗んで愛欲に溺れる始末……。

 ってそういう意味だったのか――と、納得しつつ何となく悲しくなった。

 早い話が当て馬だったんすね、身も蓋もありゃしないけど。

 ローアンの情熱も献身も、

 ルワナとセトをくっつける接着剤にしかならなかったし、

 おまけに彼自身、人相も人格もすっかり変わって醜くなってしまって。

 「馬祀祭」冒頭、颯爽と登場したローアンは、

 宿命を打ち破るエネルギーに満ちたトリックスターの風貌、

 っぽかったんだけどなぁ……。

 

天使の繭:1979年 ペーパームーン/少女漫画・夏の夜の夢

 天才ダンサー、ポーフィラト・フラズウェルを診察する

 精神科医ジェームズ・コンラッハだったが……。

 ちょっと岡田史子「太陽と骸骨のような少年」を思い出した。

 筋書きが似ているわけではないが。

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青い犬:1977年 別冊少女コミック増刊

 駆け落ちしたジェイル・デ・サントの遺児、双子の兄弟マヌエルとルイ。

 どちらかが伯父の遺した〈北の荘園〉を相続できるのだが、

 決めるのは二人の従兄に当たる現・当主のステファン。

 マヌエルとルイは従妹(ステファンの妹)ダフネを巡り、決闘を――。

 SFではなくヨーロッパ(の、どこか)が舞台のミステリ。

 こういう作品を描いていらしたのですね、知らなかった。

 ぶっちゃけ、自分にとっては今回一番のヒットというか。

 読めてよかったわ(しみじみ)。

 p.179 のコマ割り、言わばネタばらしの瞬間の

 キャラクターの表情の見せ方が最高(マンガならではのテクニック)!

 復刊ドットコム『金星樹』に収録されているので、

 興味をお持ちになられた方は是非。

 

全体的に頭脳派の抒情詩人の業(わざ)といった印象を受けますね。

詩的なのだけど、緻密に計算し尽くされているというか。

甘ったるくないし。

 

ちなみに、中古品を探したい人はこちらを選択するのもアリではなかろうか。

収録作は「阿呆船」「馬祀祭」「天界の城」「羅陵王」「やどり木」。

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後日、他の作品集についても駄弁を弄するやもしれません。

 

ブックレビュー『アウトサイダー』

南條竹則先生による新訳ラヴクラフトシリーズの3冊目

アウトサイダー』読了。

 

 

最も好きな作品は既刊に収録されているので、もう買わなくてもいいか、

創元推理文庫でほぼ既読なのだし……と思ったものの、

毒を食らわば皿まで――と考え直して購入、読了。

 

最初に出た『インスマスの影』だけ何故か背表紙が白。

 

アウトサイダーThe Outsider,1926)

 朽ちかけた古城をさまよう語り手〈私〉には家族や養育者の記憶がなく、

 ただ自分自身の現在があるのみ。

 〈私〉は朦朧とさまよい出て、宴の気配に引き寄せられたが……。

 創元推理文庫ラヴクラフト全集3で既読だが、

 読みやすい新訳のお陰で語り手の孤独と絶望がヒシヒシ伝わってきた。

 

無名都市(The Nameless City,1921)

 語り手〈私〉はアラビアの砂漠で遺跡に足を踏み入れ、

 壁画に魅入られたが、そこには奇妙な痕跡も。

 そもそも、何故この通廊は這って進まねばならないほど天井が低いのか。

 創元推理文庫ラヴクラフト全集3で既読。

 (どうやって手記を残すことが出来たのかという謎が残るが……)

 

 

ヒュプノス(Hypnos,1923)

 タイトルはギリシャ神話の眠りの神。

 彫刻家である語り手〈私〉は駅で倒れていた美丈夫を助け、自宅に招いた。

 二人は麻薬に耽溺し、夢を見、別の世界を目指したが、

 実生活においては窮乏し、衰弱し、どんどん老けていった。

 人の領分を超えようとした男に邪神が罰を与えた――と捉え得る話だが、

 どこまでが小説内現実であり、また、どこからが妄想なのか判然しない物語。

 

 

セレファイス(Celephaïs,1922)

 都会の喧騒に倦んだ孤独な青年の、夢の世界への没入。

 しかし、美しい都の端にはインスマウスの崖が……。

 創元推理文庫ラヴクラフト全集6で既読。

 

 

アザトホート(Azathoth,1938)

 原文約500語の断章、執筆は1922年。

 タイトルはクトルゥフ神話に登場する(架空の)神性を指す名称。

 結実しなかった長編の構想メモ?

 とはいえ、幻想的な散文詩として玄妙な味わいがある。

 

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ポラリスPolaris,1920)

 北極星を巡る強迫観念と夢の世界。

 

ウルタルの猫(The Cats of Ulthar,1920)

 ウルタルという名の町で頭のおかしい夫婦が

 敷地に入った猫を捕らえては殺していたが、遂に悪行の報いを受けた。

 創元推理文庫ラヴクラフト全集6で既読。

 

べつの神々(The Other Gods,1933)

 「ウルタルの猫」に登場した宿屋の幼い息子アタルが成長した姿で、

 賢人バルザイと共に神々の姿を見ようと登攀する。

 行ってはいけない場所だと言われたら

 尚更覗いてみたくなるのが人の性(さが)。

 創元推理文庫ラヴクラフト全集6収録「蕃神」を既読。


恐ろしき老人(The Terrible Old Man,1921)

 周囲に不気味がられる謎めいた裕福な老人宅に押し入って

 金品を奪おうと考えた三人組だったが……。

 返り討ちに遭う強盗三人組が

 名前からして非アングロサクソン系移民と知れるため、

 作者の人種差別意識が批判されているという。

 

霧の高みの奇妙な家(The Strange High House in the Mist,1931)

 恐ろしき老人、再登場。

 付近の住民に恐れられる、絶壁の上に建つ奇妙な家と、そこで暮らす老人。

 妻子と共に引っ越してきた哲学者トマス・オルニーは好奇心に駆られ、

 崖を攀じ登って老人と対面したが――。

 

銀の鍵(The Silver Key,1929)

 夢想に取り憑かれたランドルフ・カーターは

 五十代になってから自らの家系に伝わる「鍵」の存在に思い至り、

 それを探し出して廃墟となった屋敷を訪れた。

 読者が「あれ?」とページを捲る手を止める瞬間が訪れるのだが、

 何事もなかったかのように、シレッと話が続くところがいい。

 創元推理文庫ラヴクラフト全集6で既読。

 

名状しがたいもの(The Unnamable,1925)

 友人ジョエル・マントンと墓地で語らうランドルフ・カーター。

 彼の書いた小説を巡り、恐怖と想像力について、

 あるいは科学的に説明のつかない奇怪な事象について意見を交わし、

 この場所がまさに件の小説の舞台なのだと告げた途端、

 二人は意識を失うほどの衝撃を受けた――。

 創元推理文庫ラヴクラフト全集6で既読。

 

家の中の絵(The Picture in the House,1921)

 1896年11月、〈私〉は系図学の資料を求めて自転車で旅をしていて、

 雨宿りのために廃屋と思われる屋敷に入り込んだ。

 が、実は住人が二階で昼寝をしており、気配を察して下りてきたので、

 〈私〉は無断で立ち入った非礼を詫びた。

 家の主は珍客に気を悪くした風もなく、強い訛りのある話し方で、

 テーブルに置いた稀覯本について語り始めた――。

 創元推理文庫ラヴクラフト全集3で既読。

 品川亮監督による『H.P.ラヴクラフトのダニッチ・ホラーその他の物語』に、

 この作品の立体造形アニメーションも収録されている。


忌まれた家(The Shunned House,1928)

 ロードアイランド州プロヴィデンス

 かつてエドガー・アラン・ポーの散歩コースに位置していたと思われる

 一角に建つ、とある家。

 居住者がことごとく不幸に見舞われ、

 怪死したとの記録を繙いた語り手〈私〉は

 叔父ホイップル博士と共に調査に乗り込んだが……。

 歴史上の記録を脚色して盛り込んだという怪異譚。

 異常事態を吸血鬼の仕業かと推理するところが面白い。

 

魔女屋敷で見た夢(The Dream in the Witch House,1933)

 大学生ウォルター・ギルマンは〈魔女屋敷〉と綽名される、

 呪われていると評判の屋根裏部屋を借りて住むことになった。

 以後、彼は強迫観念に駆られ、夢遊病の発作を起こし……。

 創元推理文庫ラヴクラフト全集5で既読。

 ナサニエル・ホーソ-ンの未完作『セプティミウス・フェルトン』の

 影響下にあるとの研究あり。

 

 

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( ˘ω˘ ) .。oO(霞を鱈腹食らって胃が膨らんだ気分を味わっているゾ……)

 

ちばひさと四番勝負!【後編】

古いマンガ一人思い出し祭前編はこちら。

fukagawa-natsumi.hatenablog.com

長いので二部構成、後編です。

 

 

『うさぎは眠っている』1987年12月刊(東京三世社

『うさぎは眠っている』カバー。クリムトの「接吻」ですよね。

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カバー折り返しに概要が綴られており、

それによると驚くことに描き下ろし長編作品。

 

前半、舞台は恐らく1970年代半ば頃のアメリカ、ボストン。

シングルマザーのアマンダ・ギャラガーは

女手一つで一卵性双生児の息子たち、レオンとラドクリフを育てているが、

元々裕福な家の出なので生活に苦労はしていない。

彼女は敬虔なクリスチャンなのだが、子供たちに信仰を強制し、

過剰なまでに清廉であれと要求するなど、行き過ぎた面があった。

バスケットボール部のエースで斜に構えた長男レオンは

母の度が過ぎるところを嫌っていたけれども、

素直でおとなしい次男ラドクリフは常に期待に応えようとしていた。

しかし、同級生で才色兼備なベル・オコーナーと相思相愛になり、

こっそり(図書館などで)清純なデートを楽しむようになった。

レオンはラドクリフを羨みつつ応援していたのだが……。

 

金髪の双子美少年と

宗教に強いこだわりを持つ支配欲・束縛傾向の強い母親――という設定で

秋里和国「オリジナル・シン」を思い出した。

(1985年刊行『デッド・エンド』収録。表題作の前日譚)

途中で、あたかも“第一部・完”といった調子で話が一旦途切れ、

十年余り(?)が経過し、

流れが変わったことで終盤グダグダになりはしまいかと

勝手にハラハラしながら読み進めたが(失礼!)

レオンはいろいろなものを失ってしまったけれど、友情や希望は残った――

といった感じの、意外にもきれいなエンディング。

短めの映画を鑑賞したような気分を味わった。

 

 

『秋の蝶』1989年9月刊(小学館PFコミックス)

短編集『秋の蝶』カバー全容。

 「ジャングル」(プチフラワー 1986年9月号掲載)

  女子高生・遠野七里(しちり)は繰り返し同じ夢を見、

  目覚める前に恐怖を覚えていた。

  夢の中はジャングルで、走った先に穴があり、

  十二年前に亡くなった妹・一里(いちり)が

  そこから這い上がろうとするらしいのだが……。

  酸性雨の脅威が深刻化するというマクロな話と

  遠野家の私的な問題が交錯し、更に、

  謎めいた新体操美女転入生の奇行が空気をザワつかせる。

  32ページの読み切りなのだが、前後編の前編といった印象を受ける。

  つまり、広げられた風呂敷が畳まれていないということ(笑)。

  それにしても、主が農学博士という遠野家、

  チラッと出てくる外観がメッチャ豪邸っぽいんですけど。

  奥さん(七里の母)がヘルパーさん等に頼らず

  一人で家事をこなしているとしたら驚異的。

『秋の蝶』p.7「ジャングル」冒頭、主人公の家(ほえー💧)。

 「水迷宮(すいめいきゅう)」(プチフラワー 1989年9月号掲載)

  鳴神楼の仲居である堀 鹿の子は旧家の一人息子の世話係に指名され、

  篠田家へ。

  本人は奉公に上がる心積もりだったが、

  行ってみれば上げ膳据え膳の食客扱い。

  だが、庭の池には魔が潜み、

  男は皆、呪われて非業の死を遂げると伝わり……。

  一種の変身譚。

  浮き世で器用に立ち回れない者が水に潜るのか。

  どことなく泉鏡花作品に似た趣き。

 「歌」(プチフラワー 1988年2月号掲載)

  ユダヤ人の少年ハンス・キュルテンはナチスの収容所へ送られながら、

  類まれな美声のお陰でミュラー少佐に気に入られたが……。

 「秋の蝶」(プチフラワー 1988年12月号掲載)

  広大な敷地を持つ大地主の御曹司である清顕(きよあき)少年は、

  離れでひっそり暮らす桜子叔母を慕っていた。

  洗礼名ヴェロニカと名乗る不思議な美少女との出会い、

  また、桜子叔母に恋人が出来たことを知った衝撃を経て、

  少年は自身の秘密に辿り着いた……。

  舞台装置はまったく違うが、

  萩尾望都(原作=今里孝子)「マリーン」(『半神』収録)を連想した。

 「グリーン メッセージ」(プチフラワー 1984年12月号掲載)※既述

 フォロー・ミー(プチフラワー 1984年7月号掲載)

  アルジェリアからやって来た転入生サリナ・ネフェールに

  振り回されるクラス一同。

  サリナは委員長・雀部紀子(すずべ・のりこ)にファティールと

  呼びかけ……。

  時空も性別も超越した運命の恋――といった話なのだが、

  ゴメン、ググッて出て来たファティールってば!(おいしそう!!)

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といった次第で、充分お腹いっぱいなのですが、

もっと食べたい気分になってしまう不思議。

絵柄にせよ扱われるテーマにせよ、読み手を選ぶ傾向が強そうだけれども、

私の好みには合っています。

そうそう、

作者自身が『林檎料理』の《作品後記》(p.137)で述べていたとおり、

 

これらの作品は地に足がついてしまえばそれで終わりの、

はかない白昼夢のようなもの。

けれども、それ以上でもそれ以下でもないこれらの存在を、

私は私なりに愛して守ってゆきたいと思っています。

 

そういうことでいいのだと思います(無性に共感してしまう……)。

 

  

ちばひさと四番勝負!【前編】

古いマンガ一人思い出し祭を経て、

未読作が気になったので絶版につき中古品を探すという、

ワタクシあるあるの巻。

今回はちばひさと

検索してもまとまったデータが出てこないので、

手持ちの書籍に記された情報を信じるしかない――ということで、

ずっと実家で寝かせておいて、ある日ふと思い返し、

母に宅配便で送ってもらった『林檎料理』所収の《愛をこめてQ&A》及び

《ちばひさと全調書》を確認。

それによると、著者は1958年生まれの女性で、

アシスタントや同人誌活動などを経てメジャーデビューし、

1980年代に何冊か単行本が出ていた模様。

他にもイラストの仕事などがあった様子。

せっかくですから、今般購入の3冊と併せてこの『林檎料理』も紹介します。

刊行が古い順に。

長くなるので前後編に分けます。

 

 

『林檎料理』1984年9月刊(東京三世社)。

短編集『林檎料理』カバー。

カバー折り返しに著者ポートレート(撮影者=名香智子!)。見返しに直筆サイン。

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口絵としてイラスト3点(3ページ)、1ページ漫画「アンドロイド」、

絵物語「伝説」(4ページ)――ここまでは目次に記載されていない。

『林檎料理』目次。

 「グリーンメッセージ」1984小学館プチフラワー12月号掲載と後に判明)

  核戦争後の世界を生き延びた人々は、

  ヒトとイヌやネコなどの動物との混合体になったが、やがて……

  というSF学園恋愛もの。

 「花ざかりの午後」(初出不明)

  不老不死の吸血鬼である〈伯爵〉が

  長い旅の道ずれにした孤児の少年フィリーには

  幽霊を引き寄せる能力があった。

  ちなみに口絵の「伝説」は少し成長した(?)フィリーのある日の出来事。

 「林檎料理」(初出不明)

  タイトルは大手拓次の詩に由来(引用あり)。

  アルジェリア動乱を盛り込んだ悲恋もの。

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 「黒の神話」(初出不明)

  両親の不仲、満員電車での通学、受験問題、等々で悶々とする

  男子高校生・園田圭一は、

  車内で見かける他校の美少年に心を奪われ……。

  これが一番刺さる、かなぁ。

  圭一にとって現実逃避のためのアイドル、アイコンは誰でもよく、

  たまたま可愛い女の子が目につけば、そちらに惹かれたのではないかと。

  ただ、彼はトーマス・マンヴェニスに死す』なぞを

  耽読していたので(映画も観たかしらん)

  和製タジオのような七瀬くんに心を奪われてしまったのでしょう。

  後から考えると山岸涼子ハーピー(『天人唐草』収録)と

  構造が似ているな。

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 「鈴蘭」(初出不明)

  立派な庭のある借家で一人暮らしをする童話作家・伊藤まり は、

  ある日無断で入り込んで来た美少年・柚木由宇(小学6年)から

  鈴蘭の香りを嗅ぎ取り……。

 「果樹園」(初出不明)

  エドガー・コーダー公爵の婚約者となったシーラ・ローレンス姫は、

  彼の下劣な所業を噂に聞いて真偽を確かめるべく

  従者と共に城へ乗り込んだが、そこで目にしたのは――。

  淫靡。

  果実をたわわに実らせるには

  土に養分をたっぷり与える必要があるのです。

 「花子さんの日」(初出不明)

  母に厭世的な愚痴を聞かせ続けた女子高生・花子さんは、ある日……。

 

 巻末の解説は歌手・大野方栄による。

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素材が美しく盛り合わされたサラダボウルのような本。

年を取って自分の理解力が追いついたのか、

昔より今の方が味わい深く面白く受け止められている気がする一冊。

 

 

『妖生伝説〈ラ・ヴァモント〉』1986年12月刊(東京三世社)。

連作短編集『妖生伝説』カバー。あの方によく似ておいでだ……。

カバー折り返しに愛猫様!?(きゃわわわ🐾)

美しい目次。

 「妖生伝説」

  不老不死の吸血鬼(見た目は青年と中年の間くらい)

  アルベール・アルトマン伯爵は孤児院を脱走した少年フィリーと

  少女ファデットを不本意ながら屋敷に居候させることに。

  だが、フィリーの特異能力が発現してしまい……。

  早い話がパイロキネシスだったのだが、1982年に日本語版が出た

  スティーヴン・キングファイアスターター』の影響か。

  ともあれ、伯爵とフィリーは意気投合し、長旅に出るのだった。

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 「聖餐」

  冬のパリに滞在する伯爵とフィリー。

  奇怪な連続殺人事件が発生するが伯爵は身に覚えがないと言う……。

  このエピソードの最後に、ようやく伯爵はフィリーの血を吸った模様。

 「詩神(ミューズ)のいる街」

  画家ルイ・クロードは既婚者だがモデルの美女カトリーヌに夢中。

  しかし、彼女の正体は……。

  フィリーはクロード夫妻に名を訊かれて「フィリップス=アルトマン」

  と答えたので、表向きは伯爵の養子という体裁か。

 すべてをあなたに

  道に迷った少女アンリエットを止むを得ず屋敷に連れ帰ったフィリー。

  だが、その日は一族が集まってフィリーを正式に仲間と認めるための

  儀式が行われる予定で……。

  そこへ客の一人として現れるカトリーヌ。

  フィリーとはパリでの出会い以来だが、伯爵とは何と二百年ぶりの再会!

  イベントの様子は萩尾望都ポーの一族』「メリーベルと銀のばら」で

  描かれた情景に似ているが、お歴々の雑多さは、むしろ

  レイ・ブラッドベリ「集会」(『10月はたそがれの国』収録)を思わせる。

  ※萩尾望都によるコミカライズあり。

 「聖家族」

  船旅に出た伯爵、フィリー、カトリーヌ。

  カトリーヌの過去と伯爵のとんでもない特異体質が明かされる。

  伯爵とカトリーヌのファースト・コンタクトが

  チグリスとユーフラテスの岸辺だったというコマで、

  申し訳ないが、ちょっと笑ってしまった。

  ネタ元は萩尾望都銀の三角』であろう。

  それとも、この作品にインスパイアされたというZABADAKの同名曲か。

booklog.jp

youtu.be

 「やさしい鳥」

  フィリーが孤児院に入るまでの経緯。

  超能力の目覚め、そして、憐れな毒母との別離。

 

『林檎料理』収録「花ざかりの午後」(&「伝説」)の前日譚集として

後から制作されたらしいが、各編の初出その他は不明。

表紙はフィリーのはずだけれども、

『林檎料理』の《愛をこめてQ&A》《ちばひさと全調書》で

回答していらしたとおり、当時お好きだったという

マイケル・ジャクソン味(み)が濃厚ですね(笑)。

問題は副題。

手持ちの辞書その他をチェックしても綴りと意味が判明しません。

きっと妖魔・魔性、あるいは人外といった意味なのでしょうけれど、

ご存じの方がいらしたらお教えください。

後述『うさぎは眠っている』巻末の既刊案内。画は「花ざかりの午後」より。

それはさておき、

旅に出て出会いと別れを重ね、その人たちが幸福に年老いればいいと願う……

といった結構がズバリ、どツボ(笑)。

しかも、無闇に悲壮感を弄ばないと言うか、

倒錯しているが明るいとでも言うべきか、

何だかんだでハッピーエンドっぽいところにも好感が持てる。

 

【後半戦に続く】

 

プチtweetまとめ。

またモニョモニョッとツイートしてしまったので

ここに纏めておきます。

岩波書店ブックレット『図書』を愛読しておりまして、

今頃ですが最新号にようやく目を通し終わり。

 

www.amazon.co.jp

 

あれ、もしかして8月号はもう売り切れなのかな??

 

それはともかく、斎藤真理子さんの連載『本の栞にぶら下がる』

「編み物に向く読書」を読了。

いつも楽しく拝読しているが、今回は特に面白かった!

編み物をしながら読むのに最適な本とは(エエッ)??

曰く、

 

「編み本」の第一条件は、

「食」と「衣」に関する惚れ惚れするような描写があることだ。

 

編み本というのは編み物の最中に読むための本ですね。

我が家では睡眠導入本をおねむ本と呼んでいますが(笑)。

それ以外には……うーん、私は本を読むときは精々お茶を飲みながら程度で、

全然難しいことは出来ないけれども、

書物の中には惚れ惚れするような「食」や「衣」があってほしいと思うので

引用されていた作品の文章にシビレました。

そのうちアタックしてみよう。

 

脳が舌なめずりするのを感じる。

登場するアイテムの一つ一つが魅力的に感じられるのは、

文章全体がよほど入念に練られているからだろう。

 

ここもブンブン頷きながら読んでしまった。

そうそう、つい脳が舌なめずりしてしまうような物語を

たくさん読みたいのだ。

編み物はしないけれどね(笑)。

 

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お知らせ。

ホームページ(本家)の改築すべき部分を長らく放置していたことに

つい先ほど思い至りまして💧

大急ぎで直しました。

どこをどう……とは、敢えて言いません、お察しください💧💧

これをもって残暑お見舞いに代えさせていただきます。

失礼いたしました。

 

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海はいいよねぇ……。