オーストラリア産の低予算ホラー映画、撮影がコロナ禍で大変だったという
『悪魔と夜ふかし(Late Night with the Devil)』を劇場で鑑賞。
1977 年、ハロウィンの夜。テレビ番組「ナイト・オウルズ」の司会者ジャック・デルロイは生放送でのオカルト・ライブショーで人気低迷を挽回しようとしていた。霊聴、ポルターガイスト、悪魔祓い......怪しげな超常現象が次々とスタジオで披露され、視聴率は過去最高を記録。しかし番組がクライマックスを迎えたとき、思いもよらぬ惨劇が巻き起こる――。
……というのが公式サイトその他で提供されている概要。
本作はいわゆるファウンド・フッテージで、
深夜の生放送テレビ番組の1977年10月31日放送分の全貌を記録したフィルムを
開示するという設定。
フィルムの内容にはオンエアされた映像+
舞台袖のドタバタや放送されなかった(出来なかった)部分も含まれており、
それらを紹介するナレーター(声の出演:マイケル・アイアンサイド)が
序盤に補足情報を提供してくれている、といった格好の映画になっています。
ともかく、生放送の番組だったからこそ
一部始終あますことなくカメラを止めずに収録しきっていた、という設定の妙!
ところで、夜更かしする人を表す英語は night owl ――フクロウなんですね。
日本語だと夜鷹だな(違う意味もあるけど……)などと思いつつ、
1970年代の雰囲気を再現したファッションや音楽、
画面の色使いなどに感心して見入ってしまいました。
---------- ここから若干ネタバレするので例によって白文字反転 ----------
悪魔教団の集団自殺から奇跡的に生き延びて救出された
悪魔憑き少女のリリーというキャラクターが登場しますが、一方で、
主人公の司会者ジャック・デルロイもまた、
何やらいかがわしげなソサエティの一員らしかった――と
ナレーションで説明されています。
その時代の文化人にとっては決して珍しいことではなかったけれど、と。
ジャックはどうやら出世や人気の維持のため、
そして、自分の番組の高視聴率をキープするために悪魔に魂を売っていた模様。
癌で余命いくばくもない愛妻を懸命に支えるポーズを取りながら、
彼女を生贄にしたらしく、
そうした内情を少女リリーの口を借りた悪魔に暴露されそうになって
取り乱すのでした。
催眠術が解けて我に返ったジャックと、そのときのスタジオのありさまは、
もう放送が終了した後で、往時の視聴者の目には触れなかったのでしょう。
---------- 白文字反転 ここまで ----------
生放送ゆえに出演者もスタッフも著しい緊張を強いられる上、
今夜のハロウィン特番はオカルト特集だから尚更だなぁ、
それでもってやっぱり観覧者にウケるか、視聴率がどうなるか気になるよなぁ、
あと、コスプレしてやって来た客の中に凄く嫌な雰囲気のヤツがいるなぁ、
等々の考えで頭がいっぱいになっている司会者ジャック・デルロイ……なのだけど、
主演のデヴィッド・ダストマルチャンによって、
人には言えない秘密、ある種の疚しさを胸に秘めた男の佇まいが
見事に表現されていて素晴らしかった。
そもそもヒトに勧めにくいジャンル・ストーリーだが、私は絶対的に支持する!!