NHK-BS ダークサイドミステリー
《“恐怖”はあなたの中にいる エドガー・アラン・ポー 幻想と闇の案内人》
一日遅れて録画視聴。
ミステリの祖にして狂気と恐怖の完成形を提示した天才、
闇のレジェンドの、
ミステリ、怪奇、SF……と、ジャンルを跨いだ恐怖の仕組みを繙く企画。
読みやすいのに難解、シンプルにもかかわらず矛盾を孕む作品に
仕掛けられた罠――。
かのドストエフスキー曰く、ポーは
「人間の魂のあり方を驚くべき正確さで物語る」
番組では「恐怖はあなたの中に!」というコンセプトで、
人間心理の捻じれ、不可解さを描いた作品をピックアップ。
ポーは読者の興を削がぬよう、1~2時間で読めそうな短編を多く書き、
また、読者に与える効果を意識して、
それに合ったエピソードや叙述法を工夫して印象の統一を図ったという。
■ 告げ口心臓(The Tell-Tale Heart, 1843)
寄り添う老人を慕いながら、何故か同時に激しく憎悪する男。
本人にさえ判然しない殺人の動機。
作者はそれを語らず想像させて
読者を語り手の狂気に引き摺り込んでいく。
語り手は被害者である老人の眼を恐れたと述べるが、
それは得体の知れない自身の内面への恐怖だったのでは……(eye = I)。
閉鎖空間における加害者視点の恐怖譚には
語り手の認知の歪みが横たわっている(現実と主観のズレ)。
ところで、今頃気づいたが、
原稿の上がりを待っていたが結局書けなかったと言われ、
許可を得て乱歩名義で発表した「あ・てる・てえる・ふいるむ」の、
これがタイトルの元ネタだったのか!
同作は後妻に対して秘密を抱えているらしい夫の話で、
『山名耕作の不思議な生活』に収録されている。
■ 壜のなかの手記(Ms. Found in a Bottle, 1833)
地球空洞説を採用した、
『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』の
祖型のような短編。
■ ウィリアム・ウィルソン(William Wilson, 1839)
解釈の多義性を内包するドッペルゲンガー奇譚。
読む人によって捉え方が異なるが故に、
物語は幾度も検証され、永遠に生き続ける。
■ 黒猫(The Black Cat,1843)
人は自分の中の制御できない衝動といかに向き合うべきか。
あまのじゃくの精神を描いた逸品。
作中人物は概ね弱い人間であり、
ポーはそんな人に寄り添う救済の手を差し伸べるかのように
恐怖小説を書き続け、客死した――。
といったまとめ方だった(かな?)。
100分de名著『エドガー・アラン・ポー スペシャル』の
二番煎じ感は否めず……。
fukagawa-natsumi.hatenablog.com