カクヨムでの連載が終わりました。
『ディアーリオ』完結です。
事の起こりは昨年10月、
fukagawa-natsumi.hatenablog.com
手紙の次は日記じゃないかと思ったのです。
日記体小説を書いてみよう、と。
「さえずり」(『フラゴナールの娘』同時収録)の番外編にすれば、
基本設定等は既に出来上がっているので、
何とかなるんじゃないかと安易に考えて。
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400字×30日分で12000字という目算でした。
しかし、一日一話書けば30日、二話なら15日で脱稿だ!
……なんて、見積もりが甘かった。
実際には長さはまちまちになるし、
一話出来たら力尽きて、その日はもう何も書けないといった始末。
ダラダラと足掛け四ヶ月も要してしまったのでした。
長さはトータルで29500字ほど(400字詰め原稿用紙73枚半)。
カクヨム連載初日が2/20(土)で、以後、上手い具合に
第30話まで――日付はともかく――現実の発表日と
小説内の曜日を合致させられた点は、よかったと思っています。
読む人に漠然とした座り心地の悪さのようなものを感じてもらえれば……と。
日記体小説に取り組もうと思い立ったとき、念頭にあったのは、
モーパッサン「オルラ(Le Horla)」でした。
最初から最後まで日付とそれに対応する所感が綴られる形式で、
ふと芽生えた不安が徐々に膨らんで書き手(語り手)を圧迫していく
ストーリーになっています。
途中で誰かの日記が開陳される、あるいは、
日記の後に紹介者のコメントが付されるタイプの小説は多々あると思いますが
――ジュリアン・グラック『陰欝な美青年』とか、
シルビナ・オカンポ「ポルフィリア・ベルナルの日記」とか、
コルタサル「遙かな女」(別題「あっちの方では」)だとか――
全編日記のみという作品は、さほど多くないのではないかと。
ただ、私が書くなら、やはり信頼できない語り手を採用するぞ!
とは、当初から考えていました。
誰かに内心を吐露したいと思いながら、
意図的に大切な事柄を伏せたり誤魔化したりする主人公。
スタージョン『きみの血を』のジョージ・スミス(仮名)のように。
もちろんそんな立派な小説が書けるわけではありませんから、
タイトルを挙げるのも不遜としか言いようがないですけれども、
好きなんだもの、許して卓袱台(笑)。
舞台を「さえずり」と同時期・同じ場所に設定したことで、
必然的に脇役として藁科みどりと草壁美桜子が動員されました。
どちらも気に入っているキャラクターで、
今後も折に触れて使い回すでしょうから、
見かけたら「ああ、アレか」と思ってください。
さて、連載終了前にKAC2021の四つ目のお題が《ホラー or ミステリー》
ということで、
大急ぎで書いたのが「桃仁」ですが、
ここでは寄宿舎を出たOGを語り手に採用し、
『ディアーリオ』にチラッと名前が現れる人物を登場させました。
結果、副産物からのフィードバックといった形で、
『ディアーリオ』最終話のスタンバイ済の下書きに急遽、
加筆することになりました。
オチは変更していませんが。
是非、両方お読みの上、「ふむふむ」と頷いていただきたいところ。
で、結局これは何なのかというと、
脳内の自己イメージと現実の鏡像が一致していない女の子の物語。
後者を受け入れたくないがため、最後は鏡を覗くことを拒絶するのです。
一応《9月5日(水)》において、
> これといった特徴のない、ありきたりな顔
と、謙虚な感想を述べてはいますが。
もっとも、ポワントが出来るとしたらバレエ上級者で、
それならば相応の体型をしているはずでしょうけれど、
何しろ信頼できない語り手の言うことですからね(笑)。
【余談】
上級者同士が切磋琢磨しているのなら、トウシューズに画鋲が!
なんて、あり得ないよねぇ……。
ともあれ、まるで伴走してくれるかのように、
一話ずつ更新するごとに読み進めてくださった方々には、
その他の読者様への感謝をグッと煮詰めたコンフィチュール状のお礼を
述べたい所存です。
ゲェッ!
とか言わないで受け取ってくださいましな、ほれほれ(←コラコラ)📦✨
そんなこんなで、ご愛読ありがとうございました。
まだの方はこれからゆっくりお楽しみください。
2021/03/23 深川夏眠 拝