近藤ようこ による田中貢太郎「蟇の血」コミカライズを初めて読んだ。
恥ずかしながら長らくこの本の存在を知らず、
たまたまバッタリ出会って購入したという感じだが、原作は随分前に読んでいた。
短くて素っ気ないが故に一層不気味な印象を残す、奇妙な作品。
それが近藤さんの独特の筆致で、
より妖美で奇怪な絵物語として新たな命を吹き込まれたかのよう。
序盤、主人公・三島譲(みしま・じょう)が同棲することになった不憫な若い女との
馴れ初めが、原作より丁寧に描かれている気がします。
しかし、見応えはありますが、本当に何だかわからない変な話です。
昔(大正時代)の都市伝説とでも言えばいいでしょうかね。
身許が不確かな美しい女と暮らすことになったエリート候補の青年が
先輩の家から帰る途中、駅への道順を訊ねてきた女性と同道することになり、
あれよあれよという間に不条理な展開に。
この奇妙な小説を知ったのは蜂須敦『怪奇譚』。
猟奇的な殺人事件や怪奇小説を巡る考察集。
語り口がどことなく馴れ馴れしい感じがして、
それが「狭い部屋で百物語でもしましょうか」的な雰囲気を醸しているのが、
テーマに相応しく、程よい不気味さ加減。
……と、脱線しましたが、
原作⇒コミック版の順で読むと、より味わい深いかもしれません。