深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

ブックレビュー『蟇の血』

近藤ようこ による田中貢太郎「蟇の血」コミカライズを初めて読んだ。

 

 

恥ずかしながら長らくこの本の存在を知らず、

たまたまバッタリ出会って購入したという感じだが、原作は随分前に読んでいた。

怪談を蒐集し、怪奇小説を物した田中貢太郎の短編。

 

www.aozora.gr.jp

 

短くて素っ気ないが故に一層不気味な印象を残す、奇妙な作品。

それが近藤さんの独特の筆致で、

より妖美で奇怪な絵物語として新たな命を吹き込まれたかのよう。

序盤、主人公・三島譲(みしま・じょう)が同棲することになった不憫な若い女との

馴れ初めが、原作より丁寧に描かれている気がします。

 

しかし、見応えはありますが、本当に何だかわからない変な話です。

昔(大正時代)の都市伝説とでも言えばいいでしょうかね。

身許が不確かな美しい女と暮らすことになったエリート候補の青年が

先輩の家から帰る途中、駅への道順を訊ねてきた女性と同道することになり、

あれよあれよという間に不条理な展開に。

 

この奇妙な小説を知ったのは蜂須敦『怪奇譚』。

 

 

猟奇的な殺人事件や怪奇小説を巡る考察集。

語り口がどことなく馴れ馴れしい感じがして、

それが「狭い部屋で百物語でもしましょうか」的な雰囲気を醸しているのが、

テーマに相応しく、程よい不気味さ加減。

 

ja.wikipedia.org

 

……と、脱線しましたが、

原作⇒コミック版の順で読むと、より味わい深いかもしれません。

 

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