恥ずかしながら実は観ていなかった有名な映画の話(が多いかも、このブログ)。
先日BS松竹東急でオンエアされた黒沢清監督『CURE』の巻。
興味を持ってもなかなかアクセス出来ない……てなことはよくあるもので。
ようやくお初御目文字。
残忍な複数の殺人事件を追う刑事は、鍵を握る元医学生の青年と対峙するが……。
催眠暗示によって殺人を犯させることは可能か否か――という話は、
以前何かでチラッと読んだ記憶があります。
自殺や他殺といった、人命に関わる指示を与えても、
自動的に無効化されるらしいとの説があるとか。
本作の中でも、その話題が出て来るのですが、
もし、暗示にかけられた人間に倫理観が欠如していて、
そもそも他害行為を悪事と認識していなかったら、どうなるだろうか……。
で、普段は普通の常識的な社会人として暮らしている教師や医師、警官 etc. が、
心の奥に封じている苛立ちや憎しみを解放させられてしまい、
突拍子もないことを仕出かす羽目になった、と。
そこでタイトルの意味がわかってゾッとしちゃうんだなぁ。
あなたが常識的な社会人を演じていることの方が不自然なのだから、
本来の自己を解き放って楽になりなさい、
というのが黒幕(殺人教唆犯)の言い分だったワケで。
主人公・高部賢一刑事が通うクリーニング店で、
居合わせた他の男性客が品出しを待っている間に独り言ダダ漏れ状態で
小声でブツブツ何者かを悪罵していたのだけれど、
「お待たせしました~」と呼びかけられるや、ごく普通の明るい表情で
「あ、どうも~」なんつって帰っていく場面が象徴的。
簡単に取り込まれてしまうんだろうなと思わされる。
冒頭、高部刑事の妻・文江がカウンセリングを受ける場面で音読している本は
多分これ。
ところが、後日、この本を知らないと言う文江。
不可解なり。
まあ、彼女は心を病んでいて、言動が普通な日もあれば調子はずれな日もある、
といった風に描写されているので、既読/未読は特に問題ではなさそう。
私も読んでいませんが(笑)男女の関係・距離感などを
ペローの童話『青ひげ』の読解から探っていこう――といった内容らしいです。
なるほど……ある意味、出オチだったのですねぇ。
最後は悪意や狂気が静かに伝染・拡散していくかのような描写で、
こういうオチは好きだけど、
高部刑事、食欲が戻ってよかったのか、どうなのか……(笑)。
一番気味が悪かったのは、黒幕(殺人教唆犯)が綴っていた論文。
大学名が印刷された横書きの原稿用紙に文章が手書きされているのだが、
その癖字が……もう本当にクセが凄い(笑)!
眺めていると頭がクラクラしてくる!!
と言いつつ、あれがフォントになったらオモロイなー、などと思ってしまった。
※Wikipediaにはオチまでガッツリ書いてあるので、未見の方はご注意ください。