(短めの)長編「真珠郎」(1936~1937年)と短編「孔雀屏風」(1940年)の
二編を収録した文庫の改版(2019年5月)を読了。
旧版で2~3度読んだが、もう一度。
2020年にドラマ『探偵・由利麟太郎』がツボッて
関連本を買うついでに入手し、積んでおいたもの。
「真珠郎」は《由利麟太郎》シリーズに属するが、
由利先生は後半まで登場しないし、相棒・三津木俊助も出て来ない。
しかし、ムズムズするくらい好き過ぎるので、
グダグダ感さえも許せちゃう(笑)。
同じ大学に勤務するが分野も違い、
さして親しくはない乙骨三四郎から帰り道に声を掛けられ、
避暑地で共に夏を過ごすことになった椎名耕助。
二人は長野県N湖畔の、かつては遊郭で春興楼と呼ばれた鵜藤邸に投宿し、
主の姪である美女・由美の世話を受けるうち、
蔵に何者かが軟禁されているのではないかと察し……。
聡明で穏やかな大学講師が猟奇的な事件の目撃者になってしまう。
実直かつ一途である故に、
明晰な頭脳を持ちながら犯人の目眩ましに翻弄される悲劇。
謎めく美貌の殺人鬼のイメージと、それを憎みつつ、
どこか憧れに近い気持ちで見つめてしまう、
ごく普通のいい人――というコントラストがかなりツボ
……って、旧レビューと同じ文言しか出てこない(汗)。
だが、構わない(笑)。
多分これから先も折に触れて読み返す (`・ω・´) キリッ✨
殿堂入り愛読書なのだッ!
終盤の椎名の必死さが憐れで愛おしい。
併録「孔雀屏風」(1940年)は二つに裂かれた屏風を巡る奇縁の物語。
ところで、拙作『サンギーヌ』執筆時、最も影響を受けていたのは、
もしかしたら『真珠郎』だったのではないかと、
脱稿後かなり時間が経ってからですが、思い当たりました。
主人公が罪を憎んで犯人を憎みきれない気持ちになるところだとか。
※私家版『サンギーヌ』は架空ストアさんでは売り切れましたが、
居留守文庫さんにはまだ在庫がございます。
大阪にお住まいの方、阿倍野近辺へお出掛けになる方は
お店でお手に取ってご覧くださいませ。