名探偵・由利麟太郎シリーズに一区切りとなりますか、
『花髑髏』読了。
「白蠟変化」
タイトルの読みは「びゃくろうへんげ」。
1936年『講談雑誌』連載。
男女の愛憎入り乱れる中を飄々と飛び回る怪人・白蠟三郎。
悪人だが意外にしおらしいところもある(笑)し、
妙な哲学を持ってもいて、
愛する人の冤罪を晴らそうと必死になっていた女性をいじらしく思ってか、
妙な気の回し方をする、という……。
一人二役や悪漢の跳梁ぶりは非現実的だが、
エログロナンセンス活劇として愉快に読めてしまった。
が、最後の由利先生と俊助の溜め息がほろ苦い。
「焙烙の刑」
1937年『サンデー毎日』掲載。
タイトルは、中国古代・殷の紂王が行った火炙りの刑のこと。
俳優・桑野貝三は画家・瀬川直人と結婚した又従妹の葭枝から相談を受け、
奇妙な事件に巻き込まれた――。
桑野が賢明にも、それを友人・三津木俊助に打ち明けたことで
由利麟太郎が担ぎ出され、事件は解決するが、
年の離れた妻の日記を読んで嫉妬に狂った夫が
手の込んだ策を弄するところが奇怪、気色悪い。
本当に気持ち悪い(←しつこいが)、キモさでは三編中№1。
「花髑髏」
1937年『富士』掲載。
精神科医・日下瑛造が殺害され、養女・瑠璃子は負傷。
瑛造の息子・瑛一、日下家の書生・宮園魁太、
瑛造の友人・湯浅博士に疑いの目が向けられ……。
ドラマを先に観てしまったが、充分に楽しめた……というか、やはり別物である。
バス停の名前に変更されていた「二本榎」が
本当に二本の木だったところで、ちょっと笑ってしまった。