話題の映画『怪物』を公開翌日に鑑賞。
湖畔の町で、夫亡き後、女手一つで小学五年生の息子を育てる母。
繁華街では放火なのか、火災が発生。
息子は次第に奇妙なことを口走るようになり、行動にも不審な点が。
ケガを負って帰った息子が担任の先生に殴られたと告げたため、
母は事実を確認すべく学校に乗り込んだ。
ところが――。
大切な我が子を傷つけられた母が、
事なかれ主義で暖簾に腕押しといった調子の校長・教員たちと対峙するが、
担任は形ばかりの謝罪を繰り返すだけで埒が明かない。
何度学校に足を運んでも事態が進展せず、苛立つ母だったが……
といった具合にカフカ的状況が描写され、
観客は心の中で医師に診断書を貰って弁護士に相談しろ!
と母を応援していたのだけれども、根拠の不確かな噂だの悪意だのが、
放り込まれた石によって湖に波紋が広がるように伝播していき、
遂にはどうにもならない居心地の悪さ、自分も事件の共犯者だったかのような、
きまり悪さに苛まれてしまうのだった。
ネタバレになるといけないので、細かいことは書けませんけれども。
何気なく発された風な、ちょっとしたセリフが、
後で振り返ると重大な意味を持っていた――と思える箇所が多々。
後半、息子の不可解な言動の真の意味が種明かしのように開陳され、
呆気に取られているうち、パズルのピースが嵌って一枚の絵が完成し、
彼らの世界に引き込まれます。
自由を得るためには、こんなにも傷つき、
他者をも傷つけなければならないのか……と、胸を締め付けられる少年らの美しさ。
ジョバンニとカムパネルラの愛の逃避行は、果たして夢か現実か――。
音楽は坂本キョージュでした、合掌 (-人-) 。