2月に劇場で観たかった『ミッドサマー』、
いつ行こうかまごまごしている間に新型コロナ禍、
あっさり挫折した『ミッドサマー』のDVDが発売されたので、購入、鑑賞。
アリ・アスター監督、フローレンス・ピュー主演、
双極性障害の妹を心配しつつ、自身も精神状態が不安定で服薬中の女子学生ダニー。
ある晩、妹が自殺を図って両親も巻き添えに。
恋人のクリスチャンはダニーに寄り添いながらも彼女を重荷に感じており、
友人三人と共にスウェーデンへの旅行を計画。
しかし、ダニーがそれを知ってしまい、気まずくなった結果、
彼女を同行させることに。
一同はクリスチャンの仲間の一人である留学生ペレの故郷へ。
ヘルシングランドのコミューンでは夏至祭の準備が進んでいた――。
公開当時、観てきた人たちのコメントを
ネタバレしていない範囲で覗いてみたら、
ホラーだけど荘厳、最後は心が洗われる気がした……等々、
なかなか心を擽られましてな。
出来れば亡霊とか怨霊とか悪魔崇拝系秘密結社の類は出て来ないでほしいと
願いつつ、DVD発売日を待っていたのでした。
感想。
西欧キリスト教圏の人たちより、
日本の多数派である無宗教にして何となく自然崇拝やそこから派生した多神教を
刷り込まれている我々の方が違和感なく
スルッと受け入れられるのではないか……と思える内容。
ダニーとの不協和音が高まっていく恋人の名がクリスチャンというところも象徴的。
一般常識を超越した治外法権の
閉鎖的空間(しかし、舞台は広々とした開放的な平原、しかも白夜)で
繰り広げられる秘儀。
ネタバレしちゃうといけないので詳しくは書けないけれど、
死と再生と豊饒のイメージが横溢している。
生贄となる遺体(というか、ほぼ残骸)の一つが
花瓶状態になっているシーンがあって、
それはもちろん後から草木を口に突っ込まれているのだけれど、
死体から植物が芽生え、花が咲いた様子を表現していて、
日本人なら「保食神(うけもちのかみ)」と同じだな~
と思う瞬間なのだった。
ヒロイン・ダニーは、たまたま選ばれてしまった人として描かれるが、
考えようによっては、
元々そこにいるはずだったのに何故か違う場所で生まれ育ち、
長らく違和感に悩んできた貴種だったのではないか――とも思えた。
終盤、村人たちがわちゃわちゃしている中、
ダニーは一瞬、亡き母の幻を見て「ママ」と声を発するが母はすぐ消える。
そこで我に返りきらなかったわけだね、彼女は。
最後は浄火。
(序盤、ダニーの実家の火災はこれを暗示していたのか……)
残虐描写を含むホラー映画なのだが、ヤバい瞬間はパッと写してスッと消すとか、
アップにしないとか……なので、目を背けたくなる瞬間はなく(※個人の感想です)
幾何学的な大道具と人物の配置をドローン撮影で上から見せるなど、
魅惑的な映像の連続。
しかし、面白かったけど怖くなかったし(※個人の感想です)
それより何より
老ビヨルン・アンドレセン翁は、よくあの役を引き受けたもんだ……と、妙な感心。
あ、また『ベニスに死す』を観たくなったぞ。