BSプレミアム、ダークサイドミステリー
『鬼 人はなぜ鬼になるのか？〜日本人の闇・1500年物語〜』録画視聴。
斉明天皇の葬列を山上から見守っていたという鬼とは、
何かしらの予兆の具現だったか。
古代においては「おに」「かみ」「もの」は分化しておらず、
人間に益をもたらすか害を及ぼすかによって呼び分けられていた。
仏教伝来と共に中国式の邪鬼の姿が流入し、
奈良時代の記録には人に害をなす鬼が登場した。
「よくわからないものを鬼と呼んできた。
人間にコントロールできない何ものかを」
「神同様、鬼も精霊のようなものと捉えてよい。人間の力を超越した存在」
「平安時代に貴族の青年が深夜、
異形のものと遭遇したとのエピソードが多発したのは、
鬼になぞらえた、貴族とは異なる下層の人間たちを目撃していたというのが
真相だったのではなかろうか」
確かに、街灯のない時代の真夜中に動き回るものを目撃したら、
妖怪変化と捉えるしかなかったのではないか。
しかし、成敗したという源頼光と部下たちしか姿を見ていなかったのだから、
それが本当に人外だったかどうかはわからない。
あるいは最澄に敗れて排除された対抗勢力だったのでは……。
鬼が跋扈するのは社会情勢が不安定なときであり、
鬼とは都の民が排除したがった、
為政者・上流階級による支配の枠から外れた
「まつろわぬ人々」を指したものか。
あるいは、
夫の浮気を疑う女性の心のモヤモヤが
鬼として結実した（『蜻蛉日記』）だとか、
主従が親子関係の上位にあった時代に理不尽な目に遭わされた挙げ句、
鬼と化した安達ヶ原の婆であるとか、
鬼になるのは圧倒的に女性が多かったわけだが、
それは「女は立場をわきまえろ」という圧力が強く、
最後の抵抗として「人間を超越する」しかなかったからでは……。
能の世界では鬼を単に悪として描かず、
排除されたものの悲哀を表現することが多いという。
そして、現在も鬼は地方の信仰の中に生きている。
農民のために一日で水路を造ってくれた鬼を神として祀り続ける
「この世のあり様が変わると鬼の姿も変化する。鬼は世につれ世は鬼につれ」
「鬼の心を秘めて人間の顔をしている現代人の方がよほど恐ろしい……」
