深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

ブックレビュー『月的愛人』『犬神博士』

久しぶりにヨロヨロと書棚の一画に手が伸びて、丸尾先生の本を二冊連続で読了。

 

新装版『月的愛人 -Lunatic Lovers-』(青林工藝舎:2009年初版第2刷)と

『犬神博士』(秋田書店:2011年15版)。

 

最初に読了した当時、ブクログに綴ったことを転記してみる。

もっとも、まったく大したことは書いていなかったが(笑)。

 

『月的愛人』

 1980年代末~1990年代前半に『ガロ』その他の雑誌に発表された短編集。
 連載打ち切りになったという「犬神博士」のアーキタイプ(タイトル同じ)も
 未完ながら面白い。
 完結した「犬神博士」が、切られたところからそのまま続いたのではなく、
 別の物語になっていったことも興味深い。
 小泉八雲耳なし芳一のはなし」や

 江戸川乱歩「屋根裏の散歩者」の本歌取りも見事。
 何より絵が美しく、つい、ボーッと眺めてウットリしてしまう。

月的愛人―ルナティックラヴァーズ

月的愛人―ルナティックラヴァーズ

 

 

『犬神博士』

 夢野久作の同名小説とは無関係な、オカルト短編連作マンガ。
 式神を使って呪いを成就しようとする者たちの報復合戦。
 タイトルの「犬神」は、
 式神を使役する者が呪力を授かるために祀る犬の首。
 基本、丸尾先生の作品に
 ストーリー性は求めていませんが(多くのファンがそうだと思う)
 これは意外にもきちんとしたドラマになっていて驚き(笑)。
 寡黙な犬神博士=犬飼さん、超カッコイイ!
 けど、ちょっと物足りない。
 欲を言えば、もう少し続きが読みたいんだよなぁ。

犬神博士

犬神博士

 

 

一つの世界がクッキリ出来上がっていて美しいのなら、

後からいろいろ付け足す必要はないのかもしれない……ということで、

『犬神博士』これにて完――で、いいのだろうけど、

どうしても欲を出して「もっと読みたい」と思ってしまう。

殊に、二話で途絶した旧「犬神博士」!

ホテル《水月園》を経営する古賀家の面々と、

賢いシェパードのバルバロッサ(赤髯皇帝)、そして、

主人公オサムの亡き祖父……等々、味のあるキャラクターの活躍を。

(このおじいちゃんが新『犬神博士』犬飼さんのプロトタイプっぽい)

縦ロールのおばあちゃん、素敵だし(笑)。