深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

DVD鑑賞記『怪談』

先日、静か~にヒタヒタと怖いって感じの映画を見たいと呟いたら、

ご紹介いただいたので、1965年の映画『怪談』DVDを購入、鑑賞しました。

 

 

小泉八雲の作を元にしたオムニバス作品。

「黒髪」「雪女」「耳無し芳一の話」「茶碗の中」の四編で180分強。

とてつもない豪華キャスト。

 

 

黒髪

 原案は『影(Shadowings)』収録の「和解(The Reconciliation)」

 だということに気づかなかった(汗)。

 その原拠は『今昔物語集』の「亡妻霊値旧夫語」。

 京の貧しい武士は出世のため妻を見限って遠方へ向かい、良家の娘と結婚。

 重婚ですが(笑)。

 裕福になったものの、新しい妻は気位が高く冷淡で、

 武士は度々、置き去りにした優しい最初の妻を思い出す。

 京に戻った武士は荒れ果てたかつての我が家へ。

 妻は不実をなじるどころか温かく迎えてくれたのだが……。

 映画は視覚的に恐怖を煽るべく、原作よりショッキングな結末に。

 どことなく楳図かずお漫画ちっくでもある。

 元ネタを失念していたので、

 途中もしかして新・妻が六条御息所みたいになって元の夫婦を苦しめるのかと

 ワクワクしてしまったが違った(←おいおい)。

 新珠三千代サマ美しい。

 

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雪女

 原案は『怪談(Kwaidan)』収録「雪おんな(Yuki-Onna)」。

 茂作と共に薪を取りに出た巳之吉は吹雪のため森の中の小屋へ。

 そこへ白装束の美女が現れ、茂作に息を吹きかけ凍死させてしまった。

 美女は今夜の出来事を人に話せばおまえも殺すと言い残して消えた。

 その後、巳之吉は江戸へ向かうという、お雪と名乗る可憐な女性を見初め、

 夫婦になり、子宝にも恵まれたが――。

 原作との違いは生まれた子供の数くらい。

 途中、唐突にR15レベル(?)のシーンが出てきたので驚いた(笑)。

 それはさておき、口の堅さ=誠実さの表れということなのか。

 ともかく、背景の月と星々をで表現する演出が怖い……。

 

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耳無し芳一の話

 原案は『怪談(Kwaidan)』収録

 「耳なし芳一の話(The Story of Mimi-Nashi-Hōichï)」。

 その原拠は一夕散人『臥遊奇談』中の「琵琶秘曲泣幽霊」。

 盲目の琵琶法師・芳一を襲った災難。

 何も悪いことはしていないのに、理不尽な……。

 それにしても琵琶の音色――と言うべきか、撥で弦を叩く音――が恐怖感を煽る。

 現代であれば般若心経を書く場面はCGなどを使うのだろうが、

 この時代は恐らく実際に俳優さんの身体に文字を書き込んだに違いない……

 と思うとムズムズするし、一層怖い。

 ところで、芳一が食べていたスイカ、美味しそうだったなぁ(音も)。

 

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茶碗の中

 原案は『骨董(Kottō)』収録「茶碗の中(In a Cup of Tea)」。

 原拠は『新著聞集』中の「茶店の水碗に若年の面を現す」。

 中川佐渡守の家臣の関内が茶碗に水を汲むと、見知らぬ美男の顔が映り、

 自分を嘲笑したかに見えた。

 関内はしばしの逡巡の後、結局、水を飲み干した。

 すると、当夜、宿直中に式部平内と名乗る若侍が現れた。

 それこそ昼間、茶碗の中に顔を覗かせた人物だった。

 彼を斬りつけて帰宅した関内に訪問者。

 式部平内の家臣と称する三人衆に太刀を浴びせる関内だったが……。

 ここでプツッと途切れてしまう元ネタにオチを加えたホラー。

 DVD特典によれば、

 全話のナレーションを担当した滝沢修がこのパートにだけ出演し、

 最後に強烈な演技を……。

 うーん、でも、私だったら

 ラストシーンにもう一度、式部平内を持ってくるかな。

 

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全編通して怖いというより優美な芸術作品なのだが、

巨額の製作費がプロダクションを倒産に追い込んでしまったというエピソードが

リアルに恐ろしい……。

とはいえ、特典映像も見応えがあり、大変よい買い物となりました。

淳水堂さん、ご紹介ありがとうございました!

 

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