深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

映画『真実』

是枝裕和×カトリーヌ・ドヌーヴ『真実』を鑑賞、もちろん字幕版で。
日本人監督の作品だということを忘れてしまうくらい、
どっぷりフランス映画だった、バカみたいな言い方だけど(笑)。

https://gaga.ne.jp/shinjitsu/

 

 

晩秋のパリ、国民的大女優ファビエンヌ・ダンジュヴィルが自伝を上梓し、話題に。
出版祝いにアメリカから駆け付けた脚本家の娘リュミールと、
その夫で(一応)俳優のハンク、二人の幼い娘シャルロット。
だが、本を読んだリュミールは事実の歪曲や割愛に苛立つ……。

無邪気で傍若無人、でも、

愛らしくて憎めない演技一代天才バカ女(失礼!)の生きざま。
しかし、娘も負けてはいない。
独立した一人の大人として母と向き合い、ちょっとした駆け引きまでやってのける。

 

よくある日本映画(?)だと、一波乱を経て当事者が和解し、
愛情を確認し合って手を取り、涙を流して一件落着……

みたいなオチになりがちだけど、監督はそんな陳腐なストーリーを描かない。
東洋で重んじられがちな長幼の序なんぞ蹴飛ばしてしまって、湿っぽくならず、

エスプリが利いている。

 

「真実」はどこにあるのか……なんて、探ろうとするだけ野暮なのかもね。

 

ところで、余談だが、

劇中劇はケン・リュウ「母の記憶に」(未読だけど……)の映画版。
病を得、延命を図るため、地球を離れていなければならない母は、
七年に一度、夫と娘の待つ家に帰るが、彼女自身は若いままで、

家族が先にどんどん年を取っていき、
いつしか母と娘の肉体年齢が逆転してしまう――という、

女の身にはSFというよりホラーな物語。
その、老いた娘を

ファビエンヌが悪戦苦闘しながら演じる筋立てになっているのだった。

 

母の記憶に (ケン・リュウ短篇傑作集3)

母の記憶に (ケン・リュウ短篇傑作集3)