深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

ブックレビュー『阿片常用者の告白』

トマス・ド・クインシー『阿片常用者の告白』読了。

 

 

先日の『夜の来訪者』同様、レスコフ真珠の首飾り』にて

既刊案内を目にし、そういえば読んでいなかったなぁ……と思って購入。

2017年第3刷。

 

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英国の批評家の自伝的散文集。

当時、町の薬局で誰でも買うことが出来た

アヘンチンキ(アヘン末をエタノールに浸出させたもの)に

耽溺した日々について。

 

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成分であるモルヒネの影響で特異な夢や幻視に見舞われた記述もあるが、

それらを期待して読んでみたものの、

「何故わたしは阿片に手を出したか」という事情と、

一抹の後ろめたさから来る言い訳(笑)の記述が大半だった。

 

第一部/読者へ~序の告白

 窮乏の折、長い空腹に耐えた結果、

 いざ知人宅に招かれてきちんとした食事を提供されても、

 身体が満足に食べ物を受け付けなくなってしまい、

 アルコールで気を紛らし、

 それが後にアヘンにスライドしていった――と著者は言いたいらしい。

 

第二部

 ●阿片の快楽

  1804年の秋、突然の歯痛に苦しみ、

  薬種商で阿片チンキを購入した著者は、

  服用すると巷間言われているように気分が沈むのではなく、

  むしろ快活になることや、

  当時コヴェント・ガーデン劇場に立っていたジュゼピーナ・グラシーニの

  歌声に酔い痴れたことを語る。

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 ●阿片の苦痛の序

  苦しみに耐えるより幸福を求めたいとの考えから、

  アヘンに溺れた著者だったが、

  1813年以降(1817年の中頃まで)は山間の別荘ダヴ・コテッジで

  妻マーガレットと平穏に暮らした。

  しかし……。

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 ●阿片の苦痛

  アヘンに頼る生活の中で見た夢について。

  建築物の夢、湖水の夢、はたまた音楽の夢。

  しかし、結局、誘惑に打ち勝ってアヘンとは手を切ったと述べる。

 

付録

 計画されていた本編第三部が実現しなかった代わりに書かれた「おまけ」。

 喫煙者が断煙に至るまで

 日々少しずつタバコの本数を減らしていくかのように、

 阿片チンキの服用量をコントロールしようとした記録。

 だが、著者自ら、

 意志薄弱の故にところどころ量が逆戻りしていること(!)を認めている。

 

解説

 訳者が底本として改訂増補版でなく

 雑誌『ロンドン・マガジン』初出テクストを選んだ理由・事情、その他。

 増補版は読み物としては面白いけれども、話が脱線しがちだからだという。

 

著者は妻への愛情とは別枠で、

終生忘れ難い恩人である異性の友人を想い続けた、

義理堅いロマンティストだった模様。

 

ともあれ、19世紀ロンドンの様々な情景は味わい深い。

 

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