ソログープ『小悪魔』をようやく読了。
引っ越し目前で「ラストまであと少し」というところに来て、
読み切って移動する気満々だったが、叶わず。
なし崩しにズルズルダラダラ。
ともあれ、中身は名誉欲に取り憑かれた学校教諭の狂奔と周囲の人々の思惑。
視学官(教育行政官)の地位を狙うペレドーノフは、
またいとこワルワーラを焚きつけて
ヴォルチャンスカヤ公爵夫人に取り入ろうと目論む。
ペレドーノフの事実上の妻でもあるワルワーラは
「早く手を打たねば他の女と結婚する」と脅されて、
寡婦グルーシナに公爵夫人を装った手紙を書いてくれるよう頼み、
偽造された書簡を手に入れたが……。
日本語で「小悪魔」というのは主にコケティッシュな女性の比喩だけれども、
この作品にはナボコフ『カメラ・オブスクーラ』の
美少女マグダのようなキャラクターが登場するわけではない。
訳者あとがきにも特に注釈はなかったが、
もしかしたら、
ペレドーノフの幻覚に現れる捉えどころがないようでいて不格好な妖怪めいた
ネドトゥイコムカを指すのかもしれない。
それは彼の周りを駆け回っては嗤うのだが、
魔除けのまじないを唱えれば目の前から消えるという。
「かくれんぼ」その他の
残酷さとイノセンスが共存する佳品の作者による長編だが、
テイストはまったく違い、
俗物たちのエゴイズムがぶつかり合う、
読んでいてほとんど誰にも共感できない、
特に主人公に好感を持つことが出来ない奇妙な物語。
しかし、ギムナジウムの生徒で女の子に間違えられてしまう
美少年サーシャ(終盤で女装もする)が可愛いし、
その時代のかの地方の市井の人々の生活が垣間見えて興味深い。
また「光と影」でも読み返して心のデトックスを図りたい、
なんて思ってしまった(笑)。