深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

NHKスペシャル『三島由紀夫 50年目の“青年論”』

NHKスペシャル三島由紀夫 50年目の“青年論”』を鑑賞。

www.nhk.jp

 

没後50年だからか、テレビでよく特集されるなぁ……と思いつつ

振り返ってみたら、去年NHKで関連番組を2本見ていた。

 

2019年6月23日にBSで放映された『三島由紀夫×川端康成』は

DVDになっていた。

www.nhk-ep.com

三島由紀夫×川端康成 運命の物語 [DVD]

三島由紀夫×川端康成 運命の物語 [DVD]

  • 発売日: 2020/10/23
  • メディア: DVD
 

 

同じくBSにて2019年10月8日放映

『アナザーストーリーズ 三島由紀夫 最後の叫び』。

fukagawa-natsumi.hatenablog.com

 

今回のNHKスペシャルは両番組で指摘した点を踏まえつつ、

三島由紀夫のコンプレックスに焦点を当てていた(と思う)。

 

現代の若い読者も作品から読み取り、共感する、

三島が抱えていたコンプレックスとは何だったか。

 

幼少期は病弱、成長してからも、たまたま出征前に体調を崩し、

戦地へは赴かず、寝込んだまま終戦を迎えたという三島。

強さへの憧れが増し、肉体改造を目論み、これが成功して周囲に褒められ、

あるいは羨ましがられて喜んだとの証言が。

だが、それでも内面は満ち足りず、作家としては候補と目され

何かにつけ取り沙汰されたノーベル文学賞にこだわるように。

ところが、栄冠は川端康成の手に。

表向きは「めでたい」と川端を祝福しながら

実は臍を噛んでいたとのエピソードには上記『運命の物語』でも触れられていた。

この後、言動が過激化した由。

戦争に行きそびれて生き永らえたことへの恥の感覚も手伝ってか、

文豪として死ぬか、あるいは英雄として死ぬか……といった極端な想念に

取り憑かれ出したのではないかと見る向きも。

一方で、晩年はバーなどで若者と盛んに交流していた彼は、

無軌道なエネルギーを分けてもらいたかったのだろうか。

東大全共闘との対話においては、

思想は真っ向から対立するものの、互いに深く共感し合ったという。

元メンバー曰く、

「正直で、若者と真っ直ぐ向き合おうとしていた」「熱情を信じる」――。

イデオロギー的には対立していても、

自らの信条を全うしようとする姿勢は共通していた、ということか。

 

これは劇場で鑑賞したい気持ちも強かったが、

コロナ禍の影響でスケジュール調整が叶わず断念したのだった。

gaga.ne.jp

 

結局、三島の死は謎に包まれたままだが、

そのパッションは50年を経過しても残り続け、

現代の(特に生きづらさを抱えた)若年層の心をも動かし続けている――

というまとめ方だった。

なるほど。

(才能に恵まれながら愚直で不器用だったところがポイント高いのか……)

 

余談になるけれど、『澁澤龍彦 ドラコニアの地平』に、

昭和に活躍した日本の文学者で、

平成(~ついでに言えば令和の現在)においても、

ずっと新しい読者を獲得し続けているのは

三島由紀夫澁澤龍彦くらいではないか――という話が出てきた、はず。

(出典=当該ページを即座に探し当てられないのだが……)

澁澤龍彥 ドラコニアの地平

澁澤龍彥 ドラコニアの地平

  • 発売日: 2017/10/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

古びないことは強い。

 

で、今、読んでいる本の次に手に取りたいのは、これ。

金閣を焼かなければならぬ

金閣を焼かなければならぬ

  • 作者:内海健
  • 発売日: 2020/06/20
  • メディア: 単行本
 

 

と言いつつ、肝心の『金閣寺』はまだ買ってもいない(苦笑)。

 

何故だろう、全然熱心な読者ではないし、

すべての作品に満遍なく興味があるのでもなく、

人柄に魅力を感じるわけでもないのに、

何となく引き寄せられてしまうのは……。

 

金閣寺 (新潮文庫)

金閣寺 (新潮文庫)