NHK 100分de名著 カミュ『ペスト』の巻、再放送を録画視聴。
カミュは『異邦人』しか読んでいないので、
伝染病の蔓延と闘う人々の話……という知識しか持たずに視聴。
本放送は2018年で、
その際は東日本大震災時の日本人の反応を念頭に制作されたもののようだったが、
新型コロナウィルスが猛威を振るう現在の状況とかなり似た結構の物語ゆえ、
このタイミングで再放送された模様。
確かに、当初の事態の過小評価と惨事への慣れ――など、
背筋が寒くなるほどの共通点が見出せる。
作品の舞台が実在した商業都市であり、
ペスト禍のためにロックダウンされてしまうところなどは、
経済中心主義への当てこすりだったのだろう――と、講師の中条省平先生。
おやおや、なるほど……(経済優先×人命軽視)……。
伝染病は天罰なのか?
→では、神に祈れば沈静化するのか?
→しなくては困る、安心したいから。
→その心根とは、つまるところ、人間の「責任放棄」に他ならない。
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主要登場人物である医師と旅行者の激論。
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状況を見極めよう、真実を理解しよう→敗北に抗うのだ!
ということで、彼らの間に友情が芽生えるという展開が美しい。
一人一人が自分にできることを全うするという誠実さ、モラルによって、
連帯の可能性が生まれ、
行動を通して人と人が結びついていく様が描かれる。
ところで、疫病とは外圧ではなく内なる悪の象徴で、
カミュが体験した戦争の比喩であり、
我らという集団に対する不条理との闘いを表しているのだった。
オチも悲しいけれど美しいですね、
ハッピーエンドとバッドエンドの間の「ビターエンド」といった塩梅で。
そうそう、結末も番組内で明かされてしまったが、
それでも充分面白そうなので、そのうち読んでみよう。
肉体は滅びても認識と記憶は記録すれば残る、だから書く――という決意に感銘。