深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

シリーズ深読み読書会「悪魔が来りて笛を吹く」

NHK BS シリーズ深読み読書会「悪魔が来りて笛を吹く」を録画視聴。

(開口一番)いやぁ、鈴木杏ちゃん、キレイになったなぁ!!

イメージが2012年の『ヘルタースケルター』で固まっていたので、

妖艶な美女っぷりに驚いた(す、すいません……)!

 

【注】これは主演の沢尻エリカ様だ。

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それはさておき。

横溝正史の都会派ミステリ、

戦後、旧華族の屋敷・椿邸に降りかかった惨劇を描いた

『悪魔が来りて笛を吹く』を深堀り。

 

この本は十年前に一度読んで手放してしまったので、

内容はうろ覚えだった(恥)。

ある単語のイントネーションの問題のことばかりが印象に残っている。

 

 

帝銀事件を大胆にフィーチャーしたかと思いきや、

本当のモチーフは高木子爵失踪・自死事件だったのでは……という深読み。

子爵の件と太宰治の死が同じ1948年だったことに着目。

テーマは斜陽、没落貴族の悲劇だ!――と。

 

真の探偵役は縺れた謎の糸を解こうとして亡くなった椿子爵であり、

金田一耕助は彼の亡霊に導かれるように足跡を追って、

目撃の追体験をするという筋立てになっており、

背後関係を探るためとはいえ、

暢気に現場を離れて休暇を満喫するかのような金田一の姿は、

愛すべき分身とも呼ぶべきキャラクターを旅に出させてあげたかった、

そして、机上で弥次喜多気分(?)を味わいたかった作者の親心だったのでは

……という“読み”に、ちょっとほっこり(笑)。

 

陰鬱な物語だが、最後に希望が感じられる、
残った善良な人々に幸あれ――といった趣は、

まさしく太宰の『斜陽』あるいはチェーホフ作品のようではないかと言われて、

因襲に縛られた古い「家」観、ひいては家父長制からの脱却を目指す、

戦後の女性たちへのエールだったのか、そうか……と、納得。

 

但し、旧来の「家」「家父長制」が斃れた分、

現代の新しい「敵」は姿が見えにくくなってしまっている、との指摘にも頷く。

まあ、そこから先は今&未来を生きる人たちにとっての課題、かな。

 

買い直して再読しようかしらん。

 

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