深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

カクヨム新イベント:冬の情景❄

カクヨムで13回目の自主企画スタートです。
題して『冬の情景❄』。

 

kakuyomu.jp

 

今回も、ごくごくシンプルに、

作中で 冬 雪 クリスマス などが重要なモチーフになっている

完結した小説を集めたい、という趣旨。

ヴァーチャル雪見はいかがですか、という本棚企画です。

 

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《冬の情景❄》イメージ画像

 

アカウントをお持ちの方で、該当する作品がある、

または、締め切り日までに書き下ろせた方は奮ってご参加ください。

カクヨムに登録されていない方でも閲覧は可能です。

よろしくお願いします。

 

#私がやってる創作をざっくり言う→小説書いています。

 

誕生日だったので……(お題「自分にご褒美」)

今週のお題「自分にご褒美」

 

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プチ自慢。

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すき焼き by 山形牛(from 母)🐄✨

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ポットとカップとケーキ皿がバラバラというガサツっぷり💧

 

調子に乗って食べ過ぎましたが反省はしません(笑)。

 

最近書いていますか? その6。

書きかけの戯曲を進めながら、ふと思いついたネタを先に――

と言ってから早や一ヶ月半……。

 

fukagawa-natsumi.hatenablog.com

 

ある形式で綴る短編小説、

内容は「さえずり」(『フラゴナールの娘』同時収録)の番外編――

とは確かに言ったとおりなのだが、

最初に思いついたよりずっと長くなってしまってまだ完成していない有り様。

今年はショートショートを月に一本は発表しようなどと

目論んでいたにもかかわらず、11月は何も仕上がらなかった……onz💧

しかも、戯曲が未完なので、

年内に出したかった私家版も来年に持ち越しぞな。

 

という中間報告です(おいおい)。

 

このまま年末の慌ただしい雰囲気に呑まれるのが嫌ですなぁ。

 

睡眠と読書と原稿執筆以外のことには時間を割きたくないぞよ(本音)。

 

ブックレビュー『金閣を焼かなければならぬ』

1950年7月2日未明に起きた金閣寺放火事件の犯人・林養賢と、

事件を元に『金閣寺』を執筆して高く評価された三島由紀夫について、

精神科医内海健が取材と資料の読み込みを元に書き下ろした

ノンフィクションにして作家・三島論という、

精神病理学と文学論を縒り合わせた一冊『金閣を焼かなければならぬ』読了。

林の内面と三島が透視した風景を抉り、白日の下に晒したかのような――。

 

ja.wikipedia.org

 

事件当時、逮捕された学僧・林養賢は動機を「美への嫉妬」と称し、

この発言が三島由紀夫の『金閣寺』執筆を促したということは、

一つの情報として漠然と承知していたが、読み進めるうちに目から鱗

 

金閣を焼かなければならぬ

金閣を焼かなければならぬ

  • 作者:内海健
  • 発売日: 2020/06/20
  • メディア: 単行本
 

 

林養賢は統合失調症となったために自らの職場に火を点けるほどの

惑乱に陥ったと、ずっと誤解していた。

元々、性格的に独特な偏りのある人物ではあったが、医師の診断上、

発病したのは1951年2月頃で、裁判で懲役七年が確定した直後だったという。

北山鹿苑寺で僧侶としての務めに従事しつつ大学に通わせてもらっていながら、

さしたる理由もなく学業を放擲した彼は、

後ろめたさから「皆に嫌われ、悪口を言われている」と思い込み、

師である住職・村上慈海が自分の企みを見抜いている、

秘密を知っていると直感。

では、その秘密とは何かと自らに問いかけたところ、

金閣を焼こうと思っている」との想念に立ち至ったのではなかろうか……と、

著者は推察する。

狂気のポテンシャルが様々な偶然の重なりによって臨界点を超え、

動機や理由に回収できない地点にまで辿り着いたのでは、と。

 

ja.wikipedia.org

 

少し飛躍し過ぎの感もあるが、バート・レイトン監督の

2004年にアメリカで起きた事件を元に作られたクライム・サスペンス青春映画

アメリカン・アニマルズ』を連想した。

退屈な日常に風穴を開けたいと思った男子大学生が犯罪を計画し、

実行しようとするドタバタ劇。

特別な人間になりたい、他人には出来ない何事かを成し遂げたい――

と思った時点で、

自分が天才でないことを認めるべきだと達観するに至る

青春の蹉跌を描いている。

ただ「何か大それたことをやらかしたい」という衝動が先走り、

理由は後付けになっているところが金閣寺放火事件と共通する気がした。

もっとも、こちらの映画の登場人物およびモデルとなった当事者たちは

精神的な病に陥りはしなかったが。

 

アメリカン・アニマルズ [DVD]

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  • 発売日: 2019/10/25
  • メディア: DVD
 
アメリカン・アニマルズ [Blu-ray]

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  • 発売日: 2019/10/25
  • メディア: Blu-ray
 

 

話を元に戻すと――。

金閣を焼かなければならぬ』のもう一人の主人公、

三島由紀夫(本名=平岡公威)は恵まれた環境に生まれ、

世間並みの苦労を知らずに育ち、しかも早くから類稀な文才を発揮したため、

文芸によって独自の空間を作り上げ、その中に自身を封じ込めて、

リアルな生活上の実感から紡ぎ出された小説とは異質な美の世界を

構築するに至った。

世の中の様々な事象は実体験の前に頭の中で組み立てられ、

完結してしまっていた。

そこから脱出するための開口部として、晩年の肉体改造や、

最終的には割腹による自決という行為を必要としたのだろうか

――といった話になってくる。

 

後で読もうと思っていた『金閣寺』のオチを先に知ってしまったけれど(笑)

それはそれとして、じっくり楽しめそうな気がする。

 

金閣寺 (新潮文庫)

金閣寺 (新潮文庫)

 

 

映画版もいつか鑑賞する機会があるだろうか……。

 

炎上 [DVD]

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  • 発売日: 2012/11/16
  • メディア: DVD
 
金閣寺 [DVD]

金閣寺 [DVD]

  • 発売日: 2019/02/13
  • メディア: DVD
 

 

ブックレビュー『オルガスマシン』

竹書房文庫のイスラエルSFアンソロジー『シオンズ・フィクション』の帯に

予告が出ていたので、うっすら興味を持っていたところ、

twitterで情報が流れてきたので予約して購入したSF小説

イアン・ワトスン『オルガスマシン』を読了。

 

ja.wikipedia.org

 

原著は古く、1976年刊行、但し、本国イギリスでの出版は叶わず、

フランス語版とポルトガル語版が先に出たという。

その後、紆余曲折を経て刊行された日本語版の文庫化。

 

オルガスマシン (竹書房文庫)

オルガスマシン (竹書房文庫)

 
オルガスマシン

オルガスマシン

 

 

男にしか通常の人権が認められていない社会に、

様々な要望を満たすべく性の道具として生み出された

デザイナーベビー(♀)の物語。

誰かの《愛人》となって、

それなりに愉快に暮らせると高をくくっていた彼女ら

「カスタムメイド・ガール」たちが、男は女に愛情を持たず、

ただ消費するだけという現実を知って絶望し、結託し、反乱を起こす。

 

抑圧された女性が解放されるというプロットの小説が

現代においてクローズアップされる意義はよくわかるのだが、

期待したほど高尚でも下劣でもなかったので拍子抜け。

これが過激な内容だろうかと首を傾げた。

設定は異様だけれども、恐らく――その方面には全然詳しくないのだが――

日本の官能小説や成人向けコミックの方が遙かに頭がおかしくて(←コラ!)

フェティッシュで、ひねくれているのではなかろうかと思うし、

状況の異様さが生々しく描かれている点では

マーガレット・アトウッド『侍女の物語』こそ、余程

読んでいて気分が悪くなる、といったところ。

 

侍女の物語

侍女の物語

 

 

あとがき等によれば、作者は日本で暮らしていた頃、

三重県ミキモト真珠島へ行き、真珠の養殖の様子を目にして、

島の研究所で人為的に新たな生命が生み出される物語を着想したとか。

 

www.mikimoto-pearl-museum.co.jp

 

登場人物の誰にも感情移入できなかったので、

ドキドキワクワク感も得られなかった。

訳文が小説として“こなれていない”印象を受けるせいか。

もしかして、同じ内容でコミカライズされたら、

そっちの方が出来がよく見える、なんてことはないだろうか……。

 

ただ、作者の妻ジュディ・ワトスンのイラストはヘタウマでカワイイので☆3つ。

 

読んでいてヤプーズ「バーバラ・セクサロイド」を思い出したが、

人造人間と言っても、あれはニュアンスが違うからなぁ。

 

www.weblio.jp

 

youtu.be

NHKスペシャル『三島由紀夫 50年目の“青年論”』

NHKスペシャル三島由紀夫 50年目の“青年論”』を鑑賞。

www.nhk.jp

 

没後50年だからか、テレビでよく特集されるなぁ……と思いつつ

振り返ってみたら、去年NHKで関連番組を2本見ていた。

 

2019年6月23日にBSで放映された『三島由紀夫×川端康成』は

DVDになっていた。

www.nhk-ep.com

三島由紀夫×川端康成 運命の物語 [DVD]

三島由紀夫×川端康成 運命の物語 [DVD]

  • 発売日: 2020/10/23
  • メディア: DVD
 

 

同じくBSにて2019年10月8日放映

『アナザーストーリーズ 三島由紀夫 最後の叫び』。

fukagawa-natsumi.hatenablog.com

 

今回のNHKスペシャルは両番組で指摘した点を踏まえつつ、

三島由紀夫のコンプレックスに焦点を当てていた(と思う)。

 

現代の若い読者も作品から読み取り、共感する、

三島が抱えていたコンプレックスとは何だったか。

 

幼少期は病弱、成長してからも、たまたま出征前に体調を崩し、

戦地へは赴かず、寝込んだまま終戦を迎えたという三島。

強さへの憧れが増し、肉体改造を目論み、これが成功して周囲に褒められ、

あるいは羨ましがられて喜んだとの証言が。

だが、それでも内面は満ち足りず、作家としては候補と目され

何かにつけ取り沙汰されたノーベル文学賞にこだわるように。

ところが、栄冠は川端康成の手に。

表向きは「めでたい」と川端を祝福しながら

実は臍を噛んでいたとのエピソードには上記『運命の物語』でも触れられていた。

この後、言動が過激化した由。

戦争に行きそびれて生き永らえたことへの恥の感覚も手伝ってか、

文豪として死ぬか、あるいは英雄として死ぬか……といった極端な想念に

取り憑かれ出したのではないかと見る向きも。

一方で、晩年はバーなどで若者と盛んに交流していた彼は、

無軌道なエネルギーを分けてもらいたかったのだろうか。

東大全共闘との対話においては、

思想は真っ向から対立するものの、互いに深く共感し合ったという。

元メンバー曰く、

「正直で、若者と真っ直ぐ向き合おうとしていた」「熱情を信じる」――。

イデオロギー的には対立していても、

自らの信条を全うしようとする姿勢は共通していた、ということか。

 

これは劇場で鑑賞したい気持ちも強かったが、

コロナ禍の影響でスケジュール調整が叶わず断念したのだった。

gaga.ne.jp

 

結局、三島の死は謎に包まれたままだが、

そのパッションは50年を経過しても残り続け、

現代の(特に生きづらさを抱えた)若年層の心をも動かし続けている――

というまとめ方だった。

なるほど。

(才能に恵まれながら愚直で不器用だったところがポイント高いのか……)

 

余談になるけれど、『澁澤龍彦 ドラコニアの地平』に、

昭和に活躍した日本の文学者で、

平成(~ついでに言えば令和の現在)においても、

ずっと新しい読者を獲得し続けているのは

三島由紀夫澁澤龍彦くらいではないか――という話が出てきた、はず。

(出典=当該ページを即座に探し当てられないのだが……)

澁澤龍彥 ドラコニアの地平

澁澤龍彥 ドラコニアの地平

  • 発売日: 2017/10/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

古びないことは強い。

 

で、今、読んでいる本の次に手に取りたいのは、これ。

金閣を焼かなければならぬ

金閣を焼かなければならぬ

  • 作者:内海健
  • 発売日: 2020/06/20
  • メディア: 単行本
 

 

と言いつつ、肝心の『金閣寺』はまだ買ってもいない(苦笑)。

 

何故だろう、全然熱心な読者ではないし、

すべての作品に満遍なく興味があるのでもなく、

人柄に魅力を感じるわけでもないのに、

何となく引き寄せられてしまうのは……。

 

金閣寺 (新潮文庫)

金閣寺 (新潮文庫)

 

 

ブックレビュー『族長の秋』

『予告された殺人の記録』と同時購入しながら三年以上も寝かせてしまった

ガルシア=マルケス『族長の秋』をようやく読了。

秋だから(笑)。

 

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

 

 

[p.9~p.64]

 ハゲタカが群がり、独裁者の死を察した市民が大統領府に押し掛けた。

 大統領の死を喜んだ多数の者には厳罰を、

 悲しんだ数少ない者には褒賞を与えることにした大統領。

 

[p.65~p.119]

 大統領の死の噂が広まり始めた頃、彼は民衆の前にひょっこり姿を現した。

 彼は美人コンテストの優勝者マヌエラ・サンチェスに一目惚れし、

 百年に一度の来訪者である彗星をプレゼントしようと豪語。

 翌週は日蝕が起きたものの、大統領はその闇の中でマヌエラを見失った。


[p.121~171]

 大統領は誰が自分に刺客を差し向けたか考えるうち、天啓のように閃きを得、

 聖守護天使を祝う夕食会にその人物を馳走として一同に供した。

 

[p.173~224]

 甲斐甲斐しい看病も虚しく、母ベンディシオン・アルバラドは無残に病死。

 大統領は勝手に列聖の布告を発し、修道士・修道尼らを追放。

 その際、修練女レティシア・ナサレノを見初め、正妻に。

 

[p.225~289]

 愛妻レティシア・ナサレノの妊娠・出産。

 しかし、レティシアは多くの人の不興を買って、愛児もろとも惨殺された。

 首謀者らを処刑する手筈を整える中、大統領はハンサムな伊達男、

 ナチョことホセ・イグナシオ・サエンス=デ=ラ=バラと出会った。

 大統領に引き立てられたナチョは期待以上の活躍ぶりで非道の限りを尽くした。

 

[p.291~365]

 外債の利子と相殺する形で、大統領は領海をアメリカに譲り渡し、

 カリブ海は分解されて運び去られ、アリゾナを潤した。

 軍の蜂起によってナチョは処刑された。

 だが、疫病で民衆の多くが命を落とし、国は荒廃の一途を辿り……。

 

クーデターで三軍の最高司令官に推挙され、

新大統領となった男は英国艦隊を後ろ盾としていたが、

それを可能ならしめたのは領事を相手に夜毎ドミノ勝負に勤しんだためだった

――という、中南米の(架空の国の)独裁者、名前のない大統領の人生の黄昏。

側近たちが自分を尊敬も信頼もしておらず、

ただ権力の犬に過ぎないことを察しながらも黙々と道化を演じ続けた男の、

暴虐と表裏一体の不安と孤独

(お決まりの強迫的な就眠儀式がよくそれを反映している)、

老境に至ってもずっと幼児のような内面、

シングルマザーだった母への愛情と尊敬と甘えが、

複数の人々の入り組んだ語りで描出されている。

一つの章が一段落で綴られた極めて息の長い文章で、

視点が様々に切り替わるので、初めは少々読みにくかったが、すぐに慣れた。

未成熟なまま取っ散らかって内部から腐っていく小国の衰亡記に

相応しい語り口ではなかろうか。

 

一国の頂点に据えられたと言っても、特別な能力があるわけでなく、

むしろ凡庸な人物だからこそ、

特権階級の連中にいいようにあしらわれるべく

神輿として担ぎ上げられたのではないかと思わされる情けない大統領。

政権の運営には占いや母の何気ない言葉を必要とするし、

身体的なコンプレックスは強いし……といったところで、

現実の現代社会にも生き残っている独裁者の内情なぞ、

案外こんなものかもしれないと考えたが、マザコンで非識字者

(ちなみに、影武者をより自分に似せるため、

 リテラシーを抹消するよう迫ったが成功しなかった)、

一目惚れして強引に娶った若い妻(元修道女見習い)から

読み書きを教わったエピソードなど、

不快な人物だというのに、どこか微笑ましく、可愛げを感じてしまった。

 

一つだけ不満を述べるなら、改訂版になってカットされたと思しい

翻訳者による解説も載せておいてほしかったな。

 

うーむ、『百年の孤独』も読まねばね……。

 

百年の孤独

百年の孤独

 
百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)