深川夏眠の備忘録

自称アマチュア小説家の雑記。

再放送『池松壮亮×金田一耕助』視聴。

fukagawa-natsumi.hatenablog.com

 

fukagawa-natsumi.hatenablog.com

 

fukagawa-natsumi.hatenablog.com

 

……という具合に、今年初め『シリーズ横溝正史短編集Ⅱ』全3回の放映に

舞い上がった私でしたが、見そこねた2016年の最初の3話が再放送されたので、

録画して視聴したのでした。

 

www2.nhk.or.jp

 

30分×3編の濃厚な1時間半……ちょっと疲れた(笑)。

しかし、実にイイ感じの過剰演出が楽しい!

 

ja.wikipedia.org

 

「殺人鬼」

 噂の連続殺人鬼に怯える美しい女性・亀井加奈子。

 駅から同行した推理作家の八代竜介は

 彼女と共に不気味な人物を目撃し、以後、事件に巻き込まれる。

 金と欲の損得勘定が裏で縺れた陰惨な物語の謎を、

 世にもチャーミングな名探偵が解く。

 

 

殺人鬼 「金田一耕助」シリーズ (角川文庫)
 

 

「黒蘭姫」

 盗癖のある美しい女性をうまくあしらっていた百貨店――だったはずが、

 予想外の殺人事件が発生……。

 このドラマでは金田一と等々力警部の絡みがなかったのが少し寂しかった。

 

百日紅の下にて」

 戦友の遺言を執行するため、ある屋敷跡を訪れた金田一

 そこでかつては優雅な暮らしを送っていた主の佐伯に伝えたことは……。

 百日紅の下で対話しているので、時間の経過に従って花びらが散り、

 金田一と佐伯の髪に降り積もるのがリアル過ぎて(!)大笑い。

 夫婦の夜の営みの間接表現が「布団と布団の掴み合い(?)」なのもウケた。

 

今回は全部、原作未読でした。

上に掲載した『殺人鬼』に全話収録されているのかな、買うかな。

百日紅の下にて」はずっと前に実家で読むチャンスがあったのだけど……。

 

さて、先に観てしまった『金田一耕助 踊る!』の方が

アクロバティックで異様だったので、意外にシレッと普通に楽しめましたよ、

この第一弾は。

残念なのは――以前のテレビが故障して、4月に現テレビに買い替えまして。

バタバタしていてHD録画の『金田一耕助 踊る!』を回収しそこねたこと。

ぐぬぬ

まとめてDVDとして発売されませんかねぇ……。

 

ブックレビュー『べろべろの、母ちゃんは……』

前々から気にかけていた出版芸術社《ふしぎ文学館》シリーズ。

遂に手に取ったのは昭和の大官能作家(!)宇能鴻一郎

初期短編集(1963~1970年)。

純文学からポルノに転向する途上の怪奇幻想系作品全10編。

芥川賞受賞作家とは、

この本を読むに当たってWikipediaを覗くまで知らなかった……。

 

ja.wikipedia.org

 

収録作から浮かび上がるのは、女性に対する屈折した感情――のようなもの。

メインキャラクターたちは性愛への憧れを強く抱きつつも希望を叶えられず、

悶々としながら闇の彼方へ退場する。

基調はマザコン×マゾヒズムか。

肉体的にも精神的にもタフな女性に踏みつけられたい……とでもいった風な。

 

■地獄の愛(1969年)

 女子医大生・美樹の憧れの“おじさま”梶原の秘密。

 戦時中、見習い軍医として南方へ赴いた彼は

 奇怪な体験によって普通の女性を愛せなくなっていた。

 核心に入る前の美樹の性行為の描写などが邪魔。

 

■柘榴(1966年)

 母を病で失い、父と弟との三人暮らしになった淳司は、

 徐々に身体の各部が麻痺して感覚を失っていく中で、

 整復道場に通ってマッサージを受けている。

 担当の若い女性・清子に惹かれるが、

 淳司はつい自らを卑下して心にもないことを言ってしまい、清子を悲しませる。

 女性の魅力を、その人が放つ「匂い」から嗅ぎ取る習慣がつき、

 夢想の中で局部と柘榴の爆ぜ目を同一視する話だが、

 前半の母とのエピソード=柘榴のイメージに辿り着くまで=が長過ぎる印象。

 

■花魁小桜の足(1969年)

 長崎くんちの喧噪を愉しみ、美食に溺れた語り手は胃が苦しくなって、

 按摩師を手配してもらい、事なきを得た。

 その地元の按摩師が語った江戸時代の花魁・小桜の物語。

 名もなき"散策子"が旅情とグルメについて語る序盤は

 泉鏡花作品のようでワクワクしたが、伏線が回収されないというか、

 そもそも張られておらず、

 "散策子"と按摩師の対話に復さず尻切れトンボで終了するのがもったいない。

 

■菜人記(1963年)

 寂れた漁村で虐げられて暮らす、通称・蓑虫太郎の悲劇。

 一貫して残酷な、救いのない話で、さもありなんというラスト。

 

■わが初恋の阿部お定(1970年)

 初恋の女性が阿部定だったという語り手の被虐嗜好について。

 長じて仕事でインドへ行った彼は、

 娼婦と交渉を持って自分好みの演技をしてもらう気でいたが、

 互いの勘違いが裏目に出てトンだ展開に。

 

■狩猟小屋夜ばなし(1969年)

 インドでハンティングを楽しむ日本人たちが、暇潰しに小屋で一つ話を語る。

 ガイドの男性の美貌のインド人女性との恋と、その無惨な結末や、

 医師の性癖、貿易商の幼少時のエピソード。

 

■美女降霊(1970年)

 舞踊家の妻を失った一ノ瀬は

 霊媒師を頼って巫女の身体に妻の霊を降ろしてもらおうとする。

 事故で亡くなった愛妻リリが最期に何を想っていたかを聞き出したかったのだ。

 口寄せは一応成功し、リリは無事に成仏できそうな気配だったが、

 関連があるような、ないような、よその霊まで巫女に降りてきて阿鼻叫喚(笑)。

 

■べろべろの、母ちゃんは……(1969年)

 母が美しい足で桶の中身を踏んで作る蒟蒻に魅了された恵市。

 その肌触りに取り憑かれた彼は長じて結婚したものの……。

 

■お菓子の家の魔女(1970年)

 奇妙な招待状を受け取った河村はクリスマスイヴの夜に家を抜け出し、

 秘密のイベントへ。

 SMショーらしきものの連続の後に見た夢は……。

 河村は亡母への潜在的な畏怖と崇敬と愛憎を再認し、

 妻の未来像に想いを馳せる。

 

■リソペディオンの呪い(1970年)

 lithopedion(石児)

 =妊娠中に死亡した胎児が母体に吸収されず、

  異物反応の一部として石灰化したもの。

 大分某所の巨大鍾乳洞の曰く因縁。

 石灰乳が凝って地蔵のような形を成し、

 石汁地蔵と呼ばれるようになった地蔵を口実に人々を脅す行者を

 邪険にした村長が見舞われた不幸。

 妻の体内にリソペディオンが生じ、三十年も経って排出されたが、

 それは石汁地蔵を破壊した村長への報いでは……との噂が流れた。

 前後して誕生した村長の孫・釜足は発育不全に。

 釜足は人付き合いを避け、鍾乳洞に入り浸って母の幻とばかり対話。

 彼は新しい石汁地蔵を発見し、金槌で破壊して村を出た――。

 

面白かったが、期待していた風合いとは少し違っていた。
多分、文体の好みの問題だろう。

 

べろべろの、母ちゃんは… (ふしぎ文学館)

べろべろの、母ちゃんは… (ふしぎ文学館)

 

 

表紙は山田裕子「コレクション2005」。

桃色の尻、尻、尻……(困惑💧)。

 

カクヨム新イベント:人魚図鑑🧜🌊

カクヨムで10回目の自主企画スタート。

今回のお題は「人魚」。

人魚を主要モチーフとするオリジナル小説を集めて

鱗まみれの本棚を作りたい……といった趣向。

 

kakuyomu.jp

 

f:id:fukagawa_natsumi:20200916110615j:plain

これはイラブチャー

 

条件に当てはまる作品をお持ちの方、

期限内に書き下ろせた方のご参加をお待ちしております。

アカウントをお持ちでない方も、ご閲読は可能ですので、

是非、覗いてみてください。

 

DVD鑑賞記『ミッドサマー』

2月に劇場で観たかった『ミッドサマー』、

いつ行こうかまごまごしている間に新型コロナ禍、

あっさり挫折した『ミッドサマー』のDVDが発売されたので、購入、鑑賞。

 

ミッドサマー [DVD]

ミッドサマー [DVD]

  • 発売日: 2020/09/09
  • メディア: DVD
 
ミッドサマー 通常版 [Blu-ray]

ミッドサマー 通常版 [Blu-ray]

  • 発売日: 2020/09/09
  • メディア: Blu-ray
 

 

アリ・アスター監督、フローレンス・ピュー主演、

アメリカ・スウェーデン合作ホラー映画。

 

双極性障害の妹を心配しつつ、自身も精神状態が不安定で服薬中の女子学生ダニー。

ある晩、妹が自殺を図って両親も巻き添えに。

恋人のクリスチャンはダニーに寄り添いながらも彼女を重荷に感じており、

友人三人と共にスウェーデンへの旅行を計画。

しかし、ダニーがそれを知ってしまい、気まずくなった結果、

彼女を同行させることに。

一同はクリスチャンの仲間の一人である留学生ペレの故郷へ。

ヘルシングランドのコミューンでは夏至祭の準備が進んでいた――。

 

ja.wikipedia.org

 

公開当時、観てきた人たちのコメントを

ネタバレしていない範囲で覗いてみたら、

ホラーだけど荘厳、最後は心が洗われる気がした……等々、

なかなか心を擽られましてな。

出来れば亡霊とか怨霊とか悪魔崇拝系秘密結社の類は出て来ないでほしいと

願いつつ、DVD発売日を待っていたのでした。

 

感想。

西欧キリスト教圏の人たちより、

日本の多数派である無宗教にして何となく自然崇拝やそこから派生した多神教

刷り込まれている我々の方が違和感なく

スルッと受け入れられるのではないか……と思える内容。

ダニーとの不協和音が高まっていく恋人の名がクリスチャンというところも象徴的。

一般常識を超越した治外法権

閉鎖的空間(しかし、舞台は広々とした開放的な平原、しかも白夜)で

繰り広げられる秘儀。

ネタバレしちゃうといけないので詳しくは書けないけれど、

要するに「ユズリハ」と「焼畑農業」の物語(←雑💧)であり、

死と再生と豊饒のイメージが横溢している。

 

ja.wikipedia.org

 

生贄となる遺体(というか、ほぼ残骸)の一つが

花瓶状態になっているシーンがあって、

それはもちろん後から草木を口に突っ込まれているのだけれど、

死体から植物が芽生え、花が咲いた様子を表現していて、

日本人なら「保食神(うけもちのかみ)」と同じだな~

と思う瞬間なのだった。

 

ja.wikipedia.org

 

ヒロイン・ダニーは、たまたま選ばれてしまった人として描かれるが、

考えようによっては、

元々そこにいるはずだったのに何故か違う場所で生まれ育ち、

長らく違和感に悩んできた貴種だったのではないか――とも思えた。

 

ja.wikipedia.org

 

終盤、村人たちがわちゃわちゃしている中、

ダニーは一瞬、亡き母の幻を見て「ママ」と声を発するが母はすぐ消える。

そこで我に返りきらなかったわけだね、彼女は。

 

最後は浄火。

(序盤、ダニーの実家の火災はこれを暗示していたのか……)

 

残虐描写を含むホラー映画なのだが、ヤバい瞬間はパッと写してスッと消すとか、

アップにしないとか……なので、目を背けたくなる瞬間はなく(※個人の感想です)

幾何学的な大道具と人物の配置をドローン撮影で上から見せるなど、

魅惑的な映像の連続。

 

しかし、面白かったけど怖くなかったし(※個人の感想です)

それより何より

老ビヨルン・アンドレセン翁は、よくあの役を引き受けたもんだ……と、妙な感心。

 

ja.wikipedia.org

 

あ、また『ベニスに死す』を観たくなったぞ。

 

ベニスに死す [DVD]

ベニスに死す [DVD]

  • 発売日: 2010/04/21
  • メディア: DVD
 

 

ブックレビュー『幻想小説とは何か』

平凡社ライブラリー幻想小説とは何か:三島由紀夫怪異小品集』読了。

 

 

三島由紀夫晩年の文学論を中心に、幻想小説をあしらったアンソロジー

ちくま文庫『文豪怪談傑作選 三島由紀夫集~雛の宿』

と重複するコンテンツが多いので、既読の人には物足りないだろうが、

対談・書評・書簡篇「澁澤龍彦とともに」のために

買う価値はある……かもしれない。

 

 

構成は以下のとおり。
Ⅰ 幻想と怪奇に魅せられて(小説篇)
 「仲間」「朝顔」「卵」「緑色の夜」「鵲」「花山院」

 「黒島の王の物語の一場面」「伝説」「檜扇」
Ⅱ 王朝夢幻、鏡花の縁(戯曲篇)
 「屍人と宝」「あやめ」「狐会菊有明
澁澤龍彦とともに(対談・書評・書簡篇)
 「鏡花の魅力」「タルホの世界」「澁澤龍彦氏のこと」「現代偏奇館」

 「デカダンスの聖書」「澁澤龍彦訳『マルキ・ド・サド選集』序」

 「人間理性と悪」「恐しいほど明晰な伝記」「サド侯爵夫人について」
 「澁澤龍彦宛書簡集」
Ⅳ 怪奇幻想文学入門(評論篇)
 「本のことなど」「雨月物語について」「柳田國男遠野物語』」

 「無題」(1964年,塔晶夫中井英夫『虚無への供物』広告文)
 「稲垣足穂頌」「解説『日本の文学4 尾崎紅葉泉鏡花』」

 「解説『日本の文学34 内田百閒・牧野信一稲垣足穂』」「二種類のお手本」

 「小説とは何か」

 

fukagawa-natsumi.hatenablog.com

 

fukagawa-natsumi.hatenablog.com

 

既読のパートにも新しい発見があったので、今後の読書の寄る辺としたい。


ところで、お手元にこの本をお持ちの方は

中川学さんの美しい表紙をとくとご覧あれ。

シブサワもおるでよ(笑)。

 

f:id:fukagawa_natsumi:20200911095006j:plain

幻想小説とは何か』書影・右上拡大

 

【引用 p.279】二種類のお手本(1959年:中央公論新社

 > 鷗外は大長篇というものを一生のうち書きませんでした。
 > 非常に知的な明晰な人はあまり大作を書けないのではないかと

 > 疑われるふしがあります。
 > ポール・ヴァレリーには数巻も続くような大作はありませんし、

 > もし世界が彼の頭脳のなかで、

 > あまりにも明晰に簡素な形に圧縮されているならば、

 > 紙数をつくすことは無駄であり、言葉そのものが無駄であります。

 

( ˘ω˘ ) .。oO(ボルヘスもそうですよね~)

( ˘ω˘ ) .。oO(長い=努力している、エライみたいな風潮って何やねんな……)

 

そうそう、「小説とは何か」で三島が激賞していたバタイユ『聖なる神』

読みました。

 

 

映画版はまだですが……(ぐぬぬ)。

 

ジョルジュ・バタイユ ママン [DVD]

ジョルジュ・バタイユ ママン [DVD]

  • 発売日: 2007/03/02
  • メディア: DVD
 

 

で、今回のまとめ。

【引用 p.253】

 > しかし創るという行為が面白さを減殺しない工夫というものはないものですかね。

 

最新掌編「エニドリオン」公開!

水族館を扱った作品を……というカクヨムの自主企画に応じて、
異様なナイトアクアリウム探訪の物語を書き下ろしました。
2020年の掌編(多分)第10弾「エニドリオン」。

 

kakuyomu.jp

 

タイトル ενυδρείον はギリシア語で水族館のこと。

 

f:id:fukagawa_natsumi:20200909235739p:plain

ショートショート「エニドリオン」イメージ画像

 

遙か昔むか~し(笑)水族館を舞台にした
少年少女の可愛らしい恋愛未満のお話みたいなものを書いたこともあったのですが、
その原稿はヴァーチャル空間の藻屑と消えたので(データ消失)
完全に0からの新規執筆となりました……ら、
何やら奇ッ怪な幻想ホラーの出来上がり。
これが今の私の通常モード、ということで(うひゃひゃ)。

 

問題は、短い話はなるべく短く済ませたいのに
どんどん長くなる傾向にあること。
今回も2000字程度の見積もりだったのに倍以上になってしまった……ぐぬぬ

 

ともあれ、縦書き版は
Romancer『月と吸血鬼の遁走曲(フーガ)』でお読みいただけます。

 

さて、元の作業(自作小説の戯曲化)に戻りますか……って、
今年このセリフ何回目なのさ(涙)。

 

読みかけ『幻想小説とは何か:三島由紀夫怪異小品集』

昨日の続き。

幻想小説とは何か:三島由紀夫怪異小品集』

 

 

澁澤龍彦とともに(対談・書評・書簡篇)まで読了。

印象的な箇所を挙げると……

 

劇団NLT公演『サド侯爵夫人』プログラムに寄せた解題

「『サド侯爵夫人』について」(1965年)で、この戯曲が

澁澤龍彦によるマルキ・ド・サドの伝記『サド侯爵の生涯』に

インスパイアされた旨を明かしている。

『サド侯爵の生涯』は未読だが、

侯爵と夫人の関係性について、なるほど……と頷いてしまった。

『サド侯爵夫人』のオチは、とても好き。

 

澁澤龍彦宛書簡集(底本=2004年,新潮社『決定版 三島由紀夫全集 第38巻』)

より、二件引用。

文面はもちろん、三島が澁澤に宛てたもの。

 

 《昭和35年5月16日(葉書)》

  今度の事件の結果、もし貴下が前科者におなりになれば、

  小生は前科者の友人を持つわけで、これ以上の光栄はありません。

 

事件とは例のサド裁判のこと。

 

ja.wikipedia.org

 

ちなみに、

2008年の澁澤龍彦生誕80年回顧展(神奈川近代文学館)『ここちよいサロン』

にて、このハガキの現物を実見しました(ウホホ)。

 

www.museum.or.jp

 

 《昭和43年1月20日(封書)》

  ルネ・マグリットレオノール・フィニ、モンス・デシデリオなどの、

  何度でもくりかえし見たい絵を座右に置くことができるだけでも、

  大きな幸福です。

  貴兄は御自分の秘密の財産を公共のものにされたのです。

  それにしても、右三者の画家に見られる西洋的写実の極致、

  西欧という「物」の実在感こそ、

  日本のいわゆる前衛画家に全く欠如しているもので、これがないから、

  多くの日本の幻想派には、すぐ飽きてしまうのだと思います。

  文学にも似たような感じがあります。

 

モンス・デジデリオ画集 (E.T.Classics)

モンス・デジデリオ画集 (E.T.Classics)

  • 発売日: 2009/08/01
  • メディア: ハードカバー
 

 

「物」の実在感=澁澤が述べていた「幾何学的精神」【※】ではないだろうか。

 

【※】出典:澁澤龍彦『都心ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト』(学研M文庫)

 1.明確な線や輪郭で、細部をくっきりと描かなければ幻想にはならない

 2.あいまいな、もやもやした雰囲気の中を、

   ただ男や女がうろうろと歩きまわるだけの話をいくら書いたって、

   そんなものは幻想でも何でもありやしない。

 

 

 

ちなみに、これらは幻想文学新人賞選評の一部。

私はこうした箴言を、

幻想世界を構築するには明瞭な叙景や心理描写が肝要である――の意と捉えている。

 

ところで、話を肝心の三島に戻すと、Ⅳ 怪奇幻想文学入門(評論篇)冒頭の

「本のことなど」(底本=2003年,新潮社『決定版 三島由紀夫全集 第26巻』)

という学生に向けた読書の勧めにおいて、

三島は昭和に入ってからの日本の近代詩を褒め、

よい詩集の一つとして、

昭和40(1965)年刊行の詩画集『大手拓次 蛇の花嫁』(童星閣)を挙げている。

おお(喜)。

 

booklog.jp